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ちまちま中間手続62

2025-04-17 21:07:00 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続62

拒絶理由 新規性・進歩性
 引用文献1には、シリカ源、アルミナ源、アルカリ源、酒石酸及び水からなる反応混合物を反応させることにより、ペンタシル型アルミノシリケートゼオライトを製造する際に、該反応混合物中に、炭化水素を添加するゼオライトの製造方法が記載されている(特許請求の範囲参照)。また、引用文献1記載の発明では水熱反応が行われている(実施例参照)。引用文献1記載の発明において、水熱反応工程、酒石酸又は炭化水素を添加する工程が、それぞれ本願請求項1の「加熱工程」、「注入工程」に相当する。
 したがって、本願請求項1に係る発明と引用文献1記載の発明は、方法の発明として同一のものと認められる。
 なお、本願請求項1には各工程の順序に限定はないことから、注入工程の後に加熱工程を行う発明も本願請求項1に係る発明に包摂されると認定した。
 同様に、本願請求項1に係る発明は、ホージャサイト型ゼオライトの懸濁液中に酸を添加する引用文献2、及びメソポーラス物質に有機物を接触させて該メソポーラス物質を改変する引用文献3に記載された発明に他ならない(引用文献2の特許請求の範囲、実施例、引用文献3の特許請求の範囲、【0001】、実施例参照)。

意見書
 引用文献1には、シリカ源、アルミナ源、アルカリ源、酒石酸および水からなる反応混合物を反応させることにより、ペンタシル型アルミノシリケートゼオライトを製造する方法が記載されている。引用文献1の方法は、全化学種が混合され、次いで、オートクレーブ等において加熱工程に付される、「バッチ法」である。
 これに対して、本願請求項1の方法は、補正により明確にされたように、反応媒質の合成工程i)、加熱工程ii)および化学剤注入工程iii)をこの順で連続して行う、「半開放系」の方法である。
 本願請求項1の方法では、工程i)において、「全てではないが大部分の」化学種を含む反応媒質を生じさせ、次いで、工程ii)において、この反応媒質を加熱し、そして、工程iii)において、重縮合性化学種の生成を可能にする化学剤を注入している。このように、本願請求項1の方法では、加熱工程の前に、反応化学種の全部が混合されるわけではなく、加熱工程後に、連続的に徐々に化学剤を添加することによって、ゼオライトまたは中間多孔質固体が成長することを可能にした。
 本願請求項1の方法により、工程i)およびii)によって得られた均一な液体反応媒質に、添加量を調整しながら化学剤を添加することにより、ゼオライトまたは中間多孔質固体の成長を非常に良好に制御することができる。固体前駆体の量は、全体的な固体成長の間に制御される。
 引用文献1に記載されているのは、その第3頁右上欄19~20行「オートクレーブのなかに入れて結晶化させる」、第5頁左上欄1~2行「ステンレス製オートクレーブに入れ密封した」等に記載されるように、バッチ法のみであり、ここでは、全反応剤がオートクレーブに密封された後、これを加熱することにより反応を進行させている。加熱工程の後に化学剤を注入することは記載されていない。
 引用文献2には、ホージャサイト型ゼオライトの懸濁液中に酸を添加する方法が記載されている。引用文献3には、メソポーラス物質に有機物を接触させて該メソポーラス物質を改変する方法が記載されている。
 しかしながら、引用文献2および3に記載されているのは、既存の固体(ホージャサイト型ゼオライト、メソポーラス物質)を処理する方法(固体を改変する方法)のみである。固体成長を制御するために化学剤がその流量が制御されつつ注入されることは記載されていない(固体合成も固体成長も記載がない)。
 したがって、本願請求項1は、引用文献1~3と同一ではなく、また、これら文献に基づいて容易になし得るものでもなく、本願請求項1は新規性および進歩性を有する。
 本願新請求項2~9は、新請求項1の従属項であるので、当然、これらも新規性および進歩性を有している。

特許査定

拒絶理由で言ってない相違点を見出して引用文献を対比して登録に導けた。構成上の相違点ではなく、どちらかと言えば、観念上の相違点に基づくものであり、この点は面白いことになったと思っている。
コメント
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