数年前、BarceronaにいるArcadiが僕の仕事を手伝ってくれていて、論文を書く際、彼が担当した部分を執筆してくれるようSteveから頼んでもらったのだが、いつも「今週末にやる」という返事が来るだけで、いっこうに仕事に取りかかってくれない。スペインと言えば、みんなsiestaと呼ばれる昼寝をする国である。「いつになったらsiestaから起きるんだ!」とSteveは怒っていたが、考えようによってはすばらしいお国柄である。彼らはよく"Manana."と言うらしい。スペイン語の発音は日本人にとって比較的馴染み易いと言われているように「マニャーナ」と真ん中にアクセントをつけて言えばよく、「そんなことは明日にでもやればいい」といういかにもスペインらしい言葉である。"Do not put off till tomorrow what you can do today."という名文句もあるが、日本経済の発展を支えてきた団塊の世代に育てられてきた僕には、"Manana."の方が重く感じられる。スペイン語に堪能なLaylaに聞いてみたら、"Manana"は「明日」という意味かと思っていたが、必ずしもそうではなく「後で」という意味で使うことが多いという。ここでは正しく表記していないが、「ニャー」と発音することからも分かるように真ん中の"a"にはtildeが付く。それでも"Manana."はりっぱな英語である。仕事の先延ばしを宣言する時だけでなく、"See you tomorrow."というような感じで、別れの挨拶にも使える僕のお気に入りの表現である。