食いしん坊ケアマネ の おたすけ長屋!

困ったら、悲しかったら、ツラかったら、
「長屋付き合い」を始めようよ!
現代版人情長屋に寄っといで!

我が家の名前を変えないで!

2009-08-09 | 出来事
今日はご入居者のご家族が集まる「家族懇談会」がありました。


有料老人ホームの職員にとって、春と秋にある二回の家族懇談会は特別の日です。朝から緊張して、何となく落ち着きません。

しかし、今は真夏。なぜこの時期に懇談会が開かれたかといえば、私の会社は、まもなく他の同業会社と合併するからです。
つまり今日は、ふだんの懇談会と違って、会社の方向性を説明する集まりなのでした。


ご入居者からもっとも反響と戸惑いが多かったのは、ホームの名前が変わる…という点です。
仮に今まで「椿山荘」だったとすると、合併後は「ホテル・ヒルトン」になる…というほどには変化するのです。
それに対して、多くのご入居者から、
「名前を変えないで!私は椿山荘という名前が好きなのよ!」
という悲痛な訴えがありました。
「いや、サービスは全く変わりませんし、ヒルトンという名前は大きいので、きっと会社全体が良い方向に向かい、それがお客様にもプラスになります」
と説明しても、なかなか了承されません。
「私は椿山荘だから入ったので、ヒルトンだったら入居していません」
と、おっしゃるのです。


今回の事例を通して、私は改めて「名前とは単なる記号ではなく、心の拠りどころである」ということを痛感しました。

もし阪神球団が「来期より阪神タイガースを阪神パンサーズに改名します」と発表したらどうなるでしょうか。恐らく日本全土から猛烈な反発が起こり、特に京阪神地区では大規模な暴動やゼネストまで発生し、自衛隊が出動しても押さえ切れないかもしれません。「タイガース」という名称は単なる球団名にとどまらず、膨大な人々の心の拠りどころであり人生の一部ですらある…ということは広く周知されていますから、仮に阪神球団が身売りしたとしても、新しいオーナーは決して「タイガース」の名称を変えないでしょう。
阪急や大洋漁業が球団を手放したときに、新オーナーたちが「ブレーブス」「ホエールズ」という趣きのある愛称を捨て去ったのとは対照的です。

ことほどさように、この世では抗議する側の力によって対応が変ってしまうものなのでした。


私たちは、常にご入居者に「我が家だと思ってください」とお話しています。会社も「我が家同然の心地よいサービスを提供致します」といって、営業をしています。
その言葉を信じて高額のお金を払って入居された方々が、
「私のうちの名前を変えないで!」
と訴えるのは、至極当然のことだと思います。
どんなにもっともらしい理由で説明されたとしても、ご自身とご自身の人生を軽んじられた思いになって、悲嘆にくれてしまうでしょう。
「しょせん、老人の気持ちは無視されてしまうのね…」と。


むろん、私にはそれに対して何をできる力も勇気もありません。

ただ、「小さな声」をしっかり心に刻みながら自分の仕事を続けたい…と念じております。





にほんブログ村 介護ブログへにほんブログ村


1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
お疲れさまでした。 (マックス)
2009-08-09 21:09:55
大変な一日でしたね…ともかくお疲れ様です。
返信する

コメントを投稿