からくりからくさ

2005-05-05 10:26:14 | 読書徒然
梨木香歩著
織物好きの4人の女の子と「りかさん」というなんとも風変わりな人間
の言葉を持った人形を取り囲んだお話。
梨木作品の特徴とも言える、植物への造詣の深さと今回は「織物」に
まつわる知識がふんだんに盛り込まれ、またしても別世界に引き込まれる。
彼女達は自ら織機で反物を織る。その為、絹糸を繭からつむいだり、
庭の植物を煮出して染糸したり。時には節約のためその庭の草をも食べる。
お味噌汁の具なんかにして。
生活のなかに自然と植物を活用する事が根付いている。というか切っても
切れない生活の一部として。
今の私にはとても考えられないことだ・・・。

この区画整備された地帯において「人工的でない植物」なんて原則として
生えていない。アスファルトで踏み固められた大地。
たまにその割れ目から緑が顔を覗かしていることもあるが。
それも後から景観のために作為的に植えつけられた植物たちの
おこぼれの様な物。
どことなく乾いていて元気が無い。

雨が降れば、とめどなく伸びてくる草木花。
その水をふんだんに飲み干そうとして。
太陽の光が差し込めば、求めるようにまっすぐに背を正して。
そういう植物の溢れ出す生命力というのをこの身でほとんど感ぜず
育ってきてしまった。(一応都会育ち。)
なので、かつて電車に揺られて奥秩父の森の中に入った時、
人気ではなくて植物の気配を感じて鳥肌が立ったの憶えている。
あきらかに、空気が違うのだ。植物がやたらとざわめき
「生きている」という鼓動が発せられているのだ。
この本を読んでいて、そんな光景がまた思い出された。



彼女たちを見守る「りかさん」も市松人形、なので着物をお召しになる。
柄も桜、桔梗、すすき、萩、菊、松、竹、梅、牡丹、菖蒲・・・
などなど艶やかな色彩の反物を着こなす。もちろん生地から手作りの手縫い。
日々かわるがわる着せ替えられて。

私も「りかさん」ならぬ「リカちゃん」なら持っていたけど。
女の子の人形への愛着というのはそれはすごいもの。
人によるかもしれないけど、それはそれは肌身離さず持って歩くくらい
姉妹のような存在。
夜になると動き出すかもしれない?と思っていたし。
これだけはどこの時代も変わらない遊びなのかな。