今日はいよいよ生活発表会。
こども芸術大学の劇遊びは、あらかじめ決まった台本で台詞を
覚えるといった劇ではありません。
子どもたちと物語をいろんな方法で遊びながら、言葉や動きが
自然に生まれてくることでつくられていく劇遊びです。
子どもたちが考えて、「みんなでできるから!」という理由で、
「おむすびころりん」をすることになりました。
「今から、おむすびころりんをします!」
年長さんの始まりの言葉でスタートです。
「にぎ にぎ にぎ はい どーぞ!」
おじいさん、いつものように、おばあさんにおにぎりを
にぎってもらって畑と田んぼにでかけます。
田植えをしていると、おじいさんの腰をいたわって、
シップを貼ってくれる子が!
「気持ちええなあ!!!」
すると、春にはかえる、秋にはトンボが飛んできました。
毎週取り組んでいる、リズム遊びの披露です。
ぼちぼちお昼。おじいさん、おにぎりをパクリ!
すると、ねずみの穴におにぎりが!
ねずみの穴に、どんどんおにぎりが転がっていきます。
楽しくなって、おじいさんも入ってみると、
そこにはねずみたちがたくさん。
「おじいさん、おにぎりをありがとう!」
ねずみたちは、おにぎりのお礼におもてなしをしました。
お餅をついたり、さかなの踊りも披露します。
このおさかなさんは、「かくれくまのみ」でした。
人魚姫も出てきてくれました!
花火の踊りは、子どもがピアノも弾いてくれました。
おじいさんは、つづらをいただいて、優しいねこに
道案内をしてもらって家に帰ります。
優しいねこの役は、子どもたちが考えました。
持ってかえって、おばあさんと開けてびっくり、
小判がざくざく! 綺麗な反物もあります!
と、その時です!
物陰からとなりのおじいさんが見ていました。
さっそく、おばあさんに頼んでおにぎりをにぎってもらい、
自分もつづらや小判をいただきに行こうとします。
こちらのおじいさん、ねずみがおにぎりのお礼を言うまもなく、
「おい、お前たち、わしのおにぎりくったか? よし、おれをもてなしてくれ!」
と、かなり横柄な態度。
それでもねずみたちは、お酒を出したり、
リズム遊びでしているコマを披露してくれました。
年長ねずみさんは相撲で勝負を挑みます。
はじめは余裕の発言だったおじいさん、しかし・・・・
ねずみたちに、まさかの連敗!
会場のみんなでねずみを応援しました。
さらに、小判の踊りにますます欲が深くなり、
おみやげを催促しました。
すると、ねずみたちが奥からつづらをだしてきます。
でも、おじいさんは小判もつづらも全部独り占めしたくて、
「にゃー!!!」
とねこの泣きまねでねずみたちを驚かせます!
その時です! 急に真っ暗になり、ねずみたちも
小判もつづらも消えてしまいました。
そして なんと、おじいさんは、もぐらになってしまい、
暗い地中の穴の中に閉じ込められてしまったのです。
子どもたちと読んだ おむすびころりんの絵本は
ここで終わりです。
しかし、子どもたちはその先を考えました。
なぜおじいさんはモグラになってしまったのか?
「ニャーと鳴いたから」「小判をとろうとした」など、理由を教えてあげようと
思ったねずみたちが、次々にモグラの隣にきて、言葉を言います。
そんなモグラ(になったおじいさん)を救うために目薬をさしてくれるねずみたち。
くらい地中でも目が見えるように、眼鏡もかけてあげるねずみもいます。
このままではかわいそうだと、ねずみたちのアイディアで、穴をほって
おばあさんの待つ家に戻してあげました。
これで めでたしめでたし・・・と思いきや、
「あらー、このモグラ何なのかしら?」
突然の不審なモグラの登場に、おばあさんは不可解さを隠し切れません。
まして、このモグラがおじいさんだとは分からない様子。
そこで、ねずみたちが、さらに提案!
人間に戻る魔法を 「えいーっ!!!!!!!」
さあっ、どうだ?
おおっ!かなり人間ぽくなったけど・・・やっぱりまだダメみたい。
体は人間に戻ったけど、何かが人間に戻っていない・・・どうしよう・・・。
その時、あるねずみさんが教えてくれます。
「おばあさん、おにぎりをにぎって、おじいさん(モグラ)に食べさせてあげて!」
「気持ちを取り戻すと思うから!」
この言葉を聞いて、おばあさん、会場のみんなと思いを込めて、大きなおにぎりを
「にぎ にぎ にぎ はい どーぞ!」
モグラ(になったおじいさん)が、おにぎりを見つめます。
一口ぱくり。 もう一口ぱくり。 すると・・・・・
「あーっつ! あーっつ! こっ、これは!」
「思い出したーっ! おばあさんの おにぎりの味じゃー!」
「おばあさん!!!!」
「おじいさん! わたしのことが分かるんですね!」
めでたくおじいさんは、おばあさんを思い出し、
戻ることができました。
おじいさんは、ねずみたちに、許してほしいと言い、
一緒に遊ぶことを提案しました。
子どもたちやお母さん、来場者のみなさんも一緒に、
「ひらいた ひらいら」の大きな輪で遊びました。
おしまい-------------------------------------------
というのが、今年の生活発表会でした。
最後には子どもたちは飛び上がって、おじいさんとおばあさんの再会を
よろこびました!
(ほんとうに、心配してドキドキしながら見ていたんですね)
生活発表会をどのように行うのか?
お母さんや子どもたちといろいろ話を積み重ねてきました。
「大人がさせてしまう」ことは簡単です。
でも、子どもの中から自発的に湧き出てくるもの、
やってみたいと子どもたちが思うこと、考え、アイディア・・・
そうしたことを、自分たちで見つけ出し、決断して、
自分たちでつくった課題に立ち向かっていく力・・・。
それをしっかり受け止めていくことで生活発表会は動き出しました。
物語を決めるときも、年長の子どもたちが検討し、複数あった候補も
理由を話し合って自分たちで絞り込みました。
どんなおもてなしをするのか?どんな小道具を作るのか?
さかなの場面に使うお面の絵を描いたり、
反物づくり、
これは、田植えの場面で使う稲。
会場には大きなポスター的看板も描きました。
劇がつくられていくプロセスでは、年少、年中、年長、そして大人が
一緒にコラボレーションする中で、子どもたちはいつも主導的な役割を担いました。
劇の始まりと終わり、そして随所に司会をしてくれたのも、
年長児が自分たちで提案して行いました。
監督として幕裏を奔走し指示を出してくれていた子もいます。
そして、おじいさんがモグラから人間に戻るときにも、
思い出、おばあさんの気持ちや愛情、これまでの記憶がたくさん詰まった
おにぎりを食べさせるという考えも、子どもから生まれたものでした。
「気持ちを取り戻すと思うから・・・・・」
子どもたちは、人間に何が一番大切なのかを知っているかのようでした。
生活発表会は、子どもの育ちの力を引き出すとても大切な活動です。
でも、終わってみて一番感じたことは、
それ以上に、子どもから気づかされたことの方が多かったのだということなのだと思います。
劇遊びから、小道具、当日の係りなど、多くのお母さんたちが協力して劇が
出来上がりました。また、舞台上や裏方だけでなく、観客もまた一緒に劇を
つくっているということも、お母さんたちが声をかけあって意識しあっていました。
お疲れ様でした。そしてありがとうございました。
子どもたちの大きな成長を感じることができたとともに、
子どもたちの可能性に触れることのできた生活発表会でした。
(笠原広一)