神戸大演劇部自由劇場は、9月7日から公式YouTubeチャンネルで「ジゲキオンライン演劇祭」を行う。7日から13日まで、新作の演劇やラジオドラマを計5本、順次公開する。コロナ禍による課外活動制限の中、自由劇場は全作オリジナル初演に挑戦する。〈大垣萌〉
例年は演劇の公演を毎年5回行なっている自由劇場。今年は、春からのコロナ禍で課外活動が制限され、舞台で演劇を行うことができなくなった。逆境下でも作品を出したいという思いからオンラインでも演劇ができないかと取り組みを始めた。オンラインでの新歓イベントや七夕祭でのzoom演劇「15光年」での経験が、夏の公演として「ジゲキオンライン祭」に受け継がれている。
(『氷の微笑』のzoomでの練習風景。提供=自由劇場)
オンライン演劇祭では、5つの演目がYouTube上で公開される。
原則として、役者はそれぞれ自分の家からzoomで参加しストーリーを展開。それを収録する。観客は、役者の数だけ並ぶ画面を見ながら、ストーリーを味わう仕組みだ。
9月7日公開の『Trigger』はオンライン飲み会が舞台だ。主人公が飲み会を楽しんでいると、突然怪しい人物が乱入し、場をかき回していく。
9月8日の『シュレディンガーのパパ』は、2浪中の浪人生「ペコ」が主人公。今日も今日とて雑談配信中のペコの画面が突然アナログテレビ風の砂嵐に。
9月9日配信の『セミ生(せみせい)』は、演者が音声のみで登場するオーディオドラマ形式だ。一週間で命を終えてしまうセミの7日間を、コミカルに描いた作品。
9月10日から13日公開の連続上演『遠恋(えんれん)』は、zoomミーティングから始まる、新感覚の心霊系ラブコメディ。死んだ女性が、生前の学生時代に恋した男性を訪れる。
9月13日に公開する『氷の微笑(びしょう)』の舞台は神戸大。工学部情報知能工学科1年生の「マユミ」は、大学で起きたネットワーク障害を独自に調査するうち、大学サーバー内にウイルスが仕込まれていたことに気づく。6月末のネットワーク障害を題材にしたタイムリーな作品だ。
「オンライン演劇に取り組むことで、舞台演劇では当たり前だったことに気がついた」というのは、ラジオドラマ『セミ生』の脚本と演出を担当している市田さん。電話取材で聞くと、「舞台演劇は座席に座っているので、最初から最後まで見てもらえる前提だが、YouTubeでは、途中で他の動画に移ったりする可能性がある」そのため、「序盤から面白いと思ってもらえるように、見せ場を最初からつくる、というような工夫をした」という。
演出では、舞台で演ずるのとは違った苦労があったという。リモートで演じようとすると、タイムラグがあり、セリフを被せることができないため会議のようになってしまう。また、自由劇場の売りである派手なパフォーマンスができず、観客の視点が動かない。「動きの無さで面白くなくならないようにするのが大変だった」という。
『氷の微笑』の脚本と演出を担当し、自身も出演している会間石(えま・すとーん)さんは、画面に映る背景は、自分で作った。「役者が写る画面は、全身が写る時もあれば、胸より上が写るときもあり、なるべく動きをつけるようにした」という。
ネットワーク障害を題材にした理由について、「(6月に)オンライン授業で教務サーバーが落ちたことが大事件になった。コロナの自粛期間で気分が沈んだことも話にできたら、記録としても面白い演劇になるのではないか、と思った」という。
「氷の微笑」では一つの画面だけ、カメラを動かすために対面での制作となった。フェイスシールドをつけ、感染予防対策をしっかり行ったという。
(フェイスシールドをつけた収録風景。提供=自由劇場)
今まで自由劇場で、これほど演劇できない期間が長くなることはなかった。「リモート演劇」でもいいから、演劇をしたいという部員の強い気持ちが、ジゲキオンライン祭という、初の試みにつながった。
「オンライン演劇というジャンルは既成の作家の台本がないため、自分たちで脚本を作成しなければならなかった」という市田さん、今回のオンライン演劇祭はほとんどが初演だったので苦労したと語る。
会間さんは、オンライン上での演劇づくりは今後に生かしていきたいと思える経験になったと同時に、「オンラインじゃなく、生の、舞台演劇をしたいという気持ちも強くなった。」とも。
挑戦的なジゲキオンライン祭は9月7日から、神戸大学自由劇場公式YouTubeチャンネルで配信される。
《ジゲキオンライン演劇祭》
●開催日=2020年9月7日(月)から9月13日(日)にかけて順次公開。
●プログラム=
9月7日(月)公開
『Trigger』〈リモート演劇〉
脚本/演出:干支藍世
9月8日(火)公開
『シュレディンガーのパパ』〈リモート演劇〉
脚本/演出:秤 日喜琉
9月9日(水)公開
『セミ生』〈ラジオドラマ〉
脚本/演出:市田
9月10日(木)-9月13日(日)公開
『遠恋』〈リモート演劇〉
脚本:秦野アキラ、演出:雅楽川千歳
9月13日(日)公開
『氷の微笑』〈リモート演劇〉
脚本/演出:会間 石
●配信URL=
https://www.youtube.com/channel/UCjWSEluUXI_soGdsd64bocQ
(神戸大学自由劇場公式YouTubeチャンネル)
●問い合わせ先=
Twitter/神戸大学演劇部自由劇場 @JIGEKI
公式ホームページ
https://jigeki.amebaownd.com/
了
例年は演劇の公演を毎年5回行なっている自由劇場。今年は、春からのコロナ禍で課外活動が制限され、舞台で演劇を行うことができなくなった。逆境下でも作品を出したいという思いからオンラインでも演劇ができないかと取り組みを始めた。オンラインでの新歓イベントや七夕祭でのzoom演劇「15光年」での経験が、夏の公演として「ジゲキオンライン祭」に受け継がれている。
(『氷の微笑』のzoomでの練習風景。提供=自由劇場)
オンライン演劇祭では、5つの演目がYouTube上で公開される。
原則として、役者はそれぞれ自分の家からzoomで参加しストーリーを展開。それを収録する。観客は、役者の数だけ並ぶ画面を見ながら、ストーリーを味わう仕組みだ。
9月7日公開の『Trigger』はオンライン飲み会が舞台だ。主人公が飲み会を楽しんでいると、突然怪しい人物が乱入し、場をかき回していく。
9月8日の『シュレディンガーのパパ』は、2浪中の浪人生「ペコ」が主人公。今日も今日とて雑談配信中のペコの画面が突然アナログテレビ風の砂嵐に。
9月9日配信の『セミ生(せみせい)』は、演者が音声のみで登場するオーディオドラマ形式だ。一週間で命を終えてしまうセミの7日間を、コミカルに描いた作品。
9月10日から13日公開の連続上演『遠恋(えんれん)』は、zoomミーティングから始まる、新感覚の心霊系ラブコメディ。死んだ女性が、生前の学生時代に恋した男性を訪れる。
9月13日に公開する『氷の微笑(びしょう)』の舞台は神戸大。工学部情報知能工学科1年生の「マユミ」は、大学で起きたネットワーク障害を独自に調査するうち、大学サーバー内にウイルスが仕込まれていたことに気づく。6月末のネットワーク障害を題材にしたタイムリーな作品だ。
「オンライン演劇に取り組むことで、舞台演劇では当たり前だったことに気がついた」というのは、ラジオドラマ『セミ生』の脚本と演出を担当している市田さん。電話取材で聞くと、「舞台演劇は座席に座っているので、最初から最後まで見てもらえる前提だが、YouTubeでは、途中で他の動画に移ったりする可能性がある」そのため、「序盤から面白いと思ってもらえるように、見せ場を最初からつくる、というような工夫をした」という。
演出では、舞台で演ずるのとは違った苦労があったという。リモートで演じようとすると、タイムラグがあり、セリフを被せることができないため会議のようになってしまう。また、自由劇場の売りである派手なパフォーマンスができず、観客の視点が動かない。「動きの無さで面白くなくならないようにするのが大変だった」という。
『氷の微笑』の脚本と演出を担当し、自身も出演している会間石(えま・すとーん)さんは、画面に映る背景は、自分で作った。「役者が写る画面は、全身が写る時もあれば、胸より上が写るときもあり、なるべく動きをつけるようにした」という。
ネットワーク障害を題材にした理由について、「(6月に)オンライン授業で教務サーバーが落ちたことが大事件になった。コロナの自粛期間で気分が沈んだことも話にできたら、記録としても面白い演劇になるのではないか、と思った」という。
「氷の微笑」では一つの画面だけ、カメラを動かすために対面での制作となった。フェイスシールドをつけ、感染予防対策をしっかり行ったという。
(フェイスシールドをつけた収録風景。提供=自由劇場)
今まで自由劇場で、これほど演劇できない期間が長くなることはなかった。「リモート演劇」でもいいから、演劇をしたいという部員の強い気持ちが、ジゲキオンライン祭という、初の試みにつながった。
「オンライン演劇というジャンルは既成の作家の台本がないため、自分たちで脚本を作成しなければならなかった」という市田さん、今回のオンライン演劇祭はほとんどが初演だったので苦労したと語る。
会間さんは、オンライン上での演劇づくりは今後に生かしていきたいと思える経験になったと同時に、「オンラインじゃなく、生の、舞台演劇をしたいという気持ちも強くなった。」とも。
挑戦的なジゲキオンライン祭は9月7日から、神戸大学自由劇場公式YouTubeチャンネルで配信される。
《ジゲキオンライン演劇祭》
●開催日=2020年9月7日(月)から9月13日(日)にかけて順次公開。
●プログラム=
9月7日(月)公開
『Trigger』〈リモート演劇〉
脚本/演出:干支藍世
9月8日(火)公開
『シュレディンガーのパパ』〈リモート演劇〉
脚本/演出:秤 日喜琉
9月9日(水)公開
『セミ生』〈ラジオドラマ〉
脚本/演出:市田
9月10日(木)-9月13日(日)公開
『遠恋』〈リモート演劇〉
脚本:秦野アキラ、演出:雅楽川千歳
9月13日(日)公開
『氷の微笑』〈リモート演劇〉
脚本/演出:会間 石
●配信URL=
https://www.youtube.com/channel/UCjWSEluUXI_soGdsd64bocQ
(神戸大学自由劇場公式YouTubeチャンネル)
●問い合わせ先=
Twitter/神戸大学演劇部自由劇場 @JIGEKI
公式ホームページ
https://jigeki.amebaownd.com/
了