王者の意地
せめてもの願い・・・9回裏が始まるときに心の中で思っていたのは、もう一度松中が見たい、ということ。打順は程遠い。最低でも5人塁に出さなくてはならない。そこにたどり着くためには、越えなくてはならないハードルがいくつもある。だが、このまま終わりにはしたくなかった。もう一度だけチャンスを与えたかった。そのチャンスをものにできれば、明日明後日へとつながる。もしそのチャンスをものにできなくても、もう一度松中を見られたら、あきらめもつく。心置きなく東京に戻れる。松中と心中なら思い残すことは何もない。そんな気がしていた。
9回裏のマウンドには小林雅英が上がった。今季パリーグのセーブ王。第1ステージからこれで5試合連続登板。俊介-薮田-小林のリレーは、1週間前と同じ光景だ。ただ今までと違うのは、これが優勝を決めるマウンドであったこと。そのことが、これから起こるドラマの要因の一つでもあった。
ホークスの先頭バッターはカブレラ。カブレラはこのプレーオフ、2本のホームランを放つなど、打てないホークス打線の中にあって川と二人、気を吐いていた。だから周りがよく見えていた。プレイボールがかかっても、バッターボックスで正対しない。バントをするようなジェスチャーを見せながら揺さぶりをかけ、1球、2球と見送る。2球ともボール。ストライクが入らない。小林は緊張していた。優勝を決めるこの場面、平常心ではいられない。カブレラは小林の心情を見透かしていたのだ。挑発するように、なおもカブレラは構えない。3球目でようやくストライク、4球目大きくはずれるボール、5球目ストライク。ツーストライクと逆に追い込まれたが、今のカブレラには1球あれば十分だった。6球目、ようやく構える。そして難なくセンター前に弾き返した。ノーアウト一塁。4回以来のノーアウトのランナー。突破口は開いた。後が続くのを祈った。あと6人。
続くバッターは、代打バティスタ。開幕から3番を任されてきたバティスタも、この日はスタメン落ち。その悔しさを晴らす絶好の機会だった。だが気負ったのか、結果はセカンドフライに。ワンアウト。早くも追い込まれた。ダブルプレーを取られれば、すべてが終わってしまう。あと5人。
代打攻勢二番手は、大道。南海時代からホークス一筋のベテラン。強くなったホークスも弱かったホークスも知る数少ない選手。一打席で答えを出す職人技は、誰にも真似できない。その彼が見せる、チームが追い込まれた中での打席。3球目、止めたバットにボールが当たった。ボテボテのゴロが三塁線に転がる。小林は素手で取って一塁へ送球。必死の大道はファーストベースにスライディング!あせった小林の悪送球もあり、一塁はセーフ、カブレラは三塁に達した。
気迫あふれるプレーだった。その熱さが見る者に伝わってくる。決して恰好良くはない。だがこの試合、今までのホークスにはなかった姿だ。いつしかそのひたむきさを忘れていた。きれいに行き過ぎていた。今チームに必要なものを、ベテランの大道が見せてくれた。それが若い選手たちに伝わっていく。強いチームとはそういうものだ。若手とベテランが互いにないものを出し合いながら、一つにまとまっていく。今のプレーは、大道だからこそチームに浸透する。観客に伝わる。球場はこの試合初めての盛り上がりを見せた。ワンアウト一三塁。あと4人。
大村は第1,2戦に続き、この試合でも先発から外されていた。前の打席三振に抑えられたが、力の入ったスイングを見せていた。この打席でも、2球のファウル、いい振りをしている。そしてツーツーからの5球目、一二塁間を抜けるヒット。当たりは良くないがとんだコースが良かった。気持ちの入ったスイングならこんなことも起こるのだ。カブレラが還って1点。一つ返した。第1戦の的場以来、久しぶりのタイムリー。なおもランナー一二塁。あと3人。いける!
かすかに光が見えてきた。しかしそんなとき、事件は起きた。長く尾を引きそうな事件だった。だが指揮官の冷静さが、我々を窮地から救った。恥ずべきなのは我々の方だった。世界一のその人物に、我々はまたも救われることになった。
ランキング参加中。クリックしていただけると、奇跡が起きます。
↓↓↓
せめてもの願い・・・9回裏が始まるときに心の中で思っていたのは、もう一度松中が見たい、ということ。打順は程遠い。最低でも5人塁に出さなくてはならない。そこにたどり着くためには、越えなくてはならないハードルがいくつもある。だが、このまま終わりにはしたくなかった。もう一度だけチャンスを与えたかった。そのチャンスをものにできれば、明日明後日へとつながる。もしそのチャンスをものにできなくても、もう一度松中を見られたら、あきらめもつく。心置きなく東京に戻れる。松中と心中なら思い残すことは何もない。そんな気がしていた。
9回裏のマウンドには小林雅英が上がった。今季パリーグのセーブ王。第1ステージからこれで5試合連続登板。俊介-薮田-小林のリレーは、1週間前と同じ光景だ。ただ今までと違うのは、これが優勝を決めるマウンドであったこと。そのことが、これから起こるドラマの要因の一つでもあった。
ホークスの先頭バッターはカブレラ。カブレラはこのプレーオフ、2本のホームランを放つなど、打てないホークス打線の中にあって川と二人、気を吐いていた。だから周りがよく見えていた。プレイボールがかかっても、バッターボックスで正対しない。バントをするようなジェスチャーを見せながら揺さぶりをかけ、1球、2球と見送る。2球ともボール。ストライクが入らない。小林は緊張していた。優勝を決めるこの場面、平常心ではいられない。カブレラは小林の心情を見透かしていたのだ。挑発するように、なおもカブレラは構えない。3球目でようやくストライク、4球目大きくはずれるボール、5球目ストライク。ツーストライクと逆に追い込まれたが、今のカブレラには1球あれば十分だった。6球目、ようやく構える。そして難なくセンター前に弾き返した。ノーアウト一塁。4回以来のノーアウトのランナー。突破口は開いた。後が続くのを祈った。あと6人。
続くバッターは、代打バティスタ。開幕から3番を任されてきたバティスタも、この日はスタメン落ち。その悔しさを晴らす絶好の機会だった。だが気負ったのか、結果はセカンドフライに。ワンアウト。早くも追い込まれた。ダブルプレーを取られれば、すべてが終わってしまう。あと5人。
代打攻勢二番手は、大道。南海時代からホークス一筋のベテラン。強くなったホークスも弱かったホークスも知る数少ない選手。一打席で答えを出す職人技は、誰にも真似できない。その彼が見せる、チームが追い込まれた中での打席。3球目、止めたバットにボールが当たった。ボテボテのゴロが三塁線に転がる。小林は素手で取って一塁へ送球。必死の大道はファーストベースにスライディング!あせった小林の悪送球もあり、一塁はセーフ、カブレラは三塁に達した。
気迫あふれるプレーだった。その熱さが見る者に伝わってくる。決して恰好良くはない。だがこの試合、今までのホークスにはなかった姿だ。いつしかそのひたむきさを忘れていた。きれいに行き過ぎていた。今チームに必要なものを、ベテランの大道が見せてくれた。それが若い選手たちに伝わっていく。強いチームとはそういうものだ。若手とベテランが互いにないものを出し合いながら、一つにまとまっていく。今のプレーは、大道だからこそチームに浸透する。観客に伝わる。球場はこの試合初めての盛り上がりを見せた。ワンアウト一三塁。あと4人。
大村は第1,2戦に続き、この試合でも先発から外されていた。前の打席三振に抑えられたが、力の入ったスイングを見せていた。この打席でも、2球のファウル、いい振りをしている。そしてツーツーからの5球目、一二塁間を抜けるヒット。当たりは良くないがとんだコースが良かった。気持ちの入ったスイングならこんなことも起こるのだ。カブレラが還って1点。一つ返した。第1戦の的場以来、久しぶりのタイムリー。なおもランナー一二塁。あと3人。いける!
かすかに光が見えてきた。しかしそんなとき、事件は起きた。長く尾を引きそうな事件だった。だが指揮官の冷静さが、我々を窮地から救った。恥ずべきなのは我々の方だった。世界一のその人物に、我々はまたも救われることになった。
ランキング参加中。クリックしていただけると、奇跡が起きます。
↓↓↓
そういえば、1死1塁で大道がボテボテのゴロを打った瞬間はドキッとしたなぁ~。
でも、あの時の大道が見せたヘッドスライディングは「熱いなぁ~、この男」ってカンジが、ひしひしと伝わりましたね♪
国王さんにそう言っていただけると、書き甲斐があります。ちょっとクドイ書き方になってしまっていますが。。でもあのとき自分が何を考えていたのかを振り返っていると、自然に言葉が出てきます。(涙も出てきます。。)
確かに大道の内野ゴロにはドキッとしました。ああ終わっちゃう~~って思ってしまいました。大道世代の僕としては、彼の頑張りは励みになります。
自分は、カブレラの後バティスタがアウトになった時に、決まりかなぁ・・・。と思いましたが、大道が必死の走塁で流れを呼び込みましたね。
本当は、最後まで読み終えてからコメントしようと思っていたんですが、我慢できませんでした。
もうすぐクライマックスですが、頑張ってください。でも、終わってしまうのも少し残念です。(勝手な意見でスイマセン)
大道のスライディングは流れを変えてくれましたね。下手くそなスライディングでしたけど。。でも、何とかしなくてはという気持ちが伝わってきました。
そう言っていただけるとうれしいです。こんなブログでよければ、もう少しお付き合いください。