どうしても福岡に行きたかったもうひとつの理由。
(10月16日の記事にある、福岡へ向かう新幹線の中でずっと考えていたのは、これから書く内容のことでした。もちろんそのときには、結末までは予測できなかったのですが。東京に戻ったら、自分の人生の再出発のために、ここで思ったことをブログの最初の記事として書くつもりでいました。ところが、あの試合を見て、感動し、その感動をたくさんの人と分かち合いたくなり、試合後すぐにあの記事を書きました。そのおかげで多くの方に見ていただき、見ず知らずの方からお褒めの言葉をいただいたり、また逆に、皆さんのブログを読ませていただいて、共感する日々を送っていました。あれから2週間がたち、多くの方に見ていただくようになった今、このことを書くのはどうかとも思ったのですが、どうしても自分の気持ちに踏ん切りをつけたくて、こうして書いています。あのときに自分が感じたことを、いつまでも忘れないようにしておきたいのです。とても個人的な内容になります。ですから、読む必要のない方は飛ばしてください。ただこれを読めば、10月16日と17日の、少し情緒不安定的な文章の意味がご理解いただけるかと思います。)
ここを訪れるのは、実に18年ぶり。その間福岡に帰って来ても、ここに来るのはあえて避けてきた。思い出したくない過去。それでいて、拭い去ることができない記憶。ここに近づいたとき、いまだに体が拒否反応を示すのには正直驚いた。少し変わったところもあるが、目の前の校舎も周りの木々も眼下の風景も、あの頃のまま。
自分の黄金期にこの場所を選んだのが、そもそもの間違いだった。すべては自分の浅はかな考えのせい。ほんの一瞬の気まぐれ。それを取り消すことができなくて、悩んで、苦しんだ。あのときの苦しみの方が、今よりもはるかに大きかった。と言うよりも、今ではその苦しみに慣れてしまって、どのくらい苦しかったのかさえ思い出せなくなった。3年という年月が、苦しいとは感じさせなくなっていた。・・・それが、今でも周囲に溶け込めない理由。高校時代に一人も友人をつくらなかったことが、それからの自分の人生に大きな影響を与えてきた。
人間形成の一番大切な時期に、人とのコミュニケーションを絶ってきた。いつも一人だった。いつも一人でいたために、社会におけるルールを何も学んでこなかった。礼儀をわきまえないのも常識に欠けるのも、この頃に、人との交わりを避けてきたことが最大の原因。
一人でいることに抵抗はなかった。確かに最初はつらかった。だが3年の間に、一人でいることに慣れてしまった。ずっと一人で生きていこうと思っていた。実際、一人で生きていけた。いや、一人で生きているつもりになっていた。陰で誰かが支えてくれていることを、そのときには気づかずにいた。そんな大切なことに気づかないまま、結局10年間、相手に求められなければ、誰とも話をしなかった。
あれから18年が過ぎた今、社会に出て、普通に人と話をするようにはなった。仕事に支障を来たすことはない。自分の能力も、周りには認めてもらえている。だが、それ以上の関係には、いつも発展しない。すべては自分に原因がある。もう一歩先まで踏み込むことができない。自分で壁を作ってしまい、相手の懐に入ろうとしない。自分をさらけ出すことができない。それを相手には不審に思われる。でも今の自分には、それ以上のことができない。そういう習慣が身に付いてしまっていて振り払えない。あの忌わしい過去から、いつまでも脱却することができない。
その時どきは、それでも別に構わないという気でいた。だがいつしか、これからもずっとこのままでいるのかと考えるようになったとき、また苦しくなった。苦しさが次第に積み重なるようになってきた。自分の力だけでは処理できないようになった。そして、崩れた。変わらなくてはいけないと思うようになった。でも、どうすれば変われるかが分からなかった。
ここに来れば何かが変わるような気がした。自分の人生をもう一度やり直すなら、ここを避けて通ることはできないと思った。今までずっと避けてきた。でもここに真正面から向かい合えなければ、いつまでも今の状況が変わらない気がした。だから、無理をしてでも、どうしてもここに来てみたかった。そして・・・あの2試合に立ち会えた。
ここを去ったのが18のとき。ここでの3年間がその後の18年を支配してきた。今までの人生の半分。人生の半分を陽の当たらないところで過ごしてきた。
そして、これからの18年。あの2日間の体験が、これからの18年をつくってくれるかどうかは、分からない。あれから2週間が過ぎた。変わったなと思えるところは、今のところまだ何もない。ただ、変われるような予感だけはある。何かに行き詰まったとき、あのときの感動を思い出せば、何でもできるような気がする。少なくとも、そう信じている。あのときに流した涙は嘘ではなかったと、信じている。