こばさん

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10.15の奇跡(第6章)

2005-12-17 12:11:08 | 10.15の奇跡
唯一の汚点



王監督が就任して、今年で11年になる。この11年、いろいろなことがあった。勝てなかった就任当初、ファンの暴動、城島への鉄拳、99年の初優勝、ON対決、タイガースとの日本シリーズ、そして昨年のプレーオフ・・・こんなに強いチームになるとは思わなかった。10年前の弱かったホークスが、まるで冗談だったかのようだ。監督に就任したとき、エリートの王さんが負け癖のついたチームを生まれ変わらせてくれるとは、実は思ってはいなかった。

この11年で、真に「福岡のチーム」となった。おらが街の球団は誇りだ。福岡だからこそ強くなったのだと自負する。次第に強くなっていく姿は、自分自身とも照らし合わせる。だからこそ応援にも熱が入る。我々が地元球団を失う悔しさを味わうことは、もう二度とない。

ワンアウト一二塁。大道の代走となった鳥越が二塁に、タイムリーを打った大村が一塁に。そして打順は、川。このプレーオフ、ホークスのラッキーボーイ的存在だ。その初球、叩きつけた。ワンバウンドして大きく跳ねた打球は、サード今江の頭上を越える。レフト前ヒット。そのときである。ジャンプした今江と二塁走者の鳥越が接触。鳥越は三塁に止まったが、走塁妨害がとられた。ホームイン。1点追加。2対4。

それに対してバレンタインが抗議。間を置かずすぐにそれが認められた。球審が説明する。「走塁妨害だがホームまでは進塁できないと判断」。鳥越は三塁へ戻された。得点は認められない。球場内におこるホークスファンのブーイング。せっかくつかんだ1点を無にされたことに対する怒りの声。ライトスタンドからはグラウンドにメガホンが投げ込まれた。収拾がつかない。試合が一時中断される。ホークスベンチの動きによっては、このまま長時間中断されることも予期された。

しかしそんな中、王監督は冷静だった。判定が覆ったにもかかわらず、あえて抗議しない。審判のもとへ歩み出たが、代打荒金を告げるのみ。もうすでに次のバッターへと気持ちを切り替えていた。このとき試合の流れは完全にホークスに来ていた。何をやってもうまく行きそうな雰囲気があった。ついにつかんだこの流れを、抗議して時間を使うことで断ち切りたくなかったのだ。早く試合を再開させたい、それが王監督の考えだった。

我々もそうすべきだった。物を投げて試合を中断させるのは、自分で自分の首を絞めるのと同じことだ。ようやく築いたものを破壊する行為だ。グラウンドに物を投げても何も解決しない。自分のチームの誇りを汚してしまっている。我々はこんなことをするファンではないはずだ。我々は違うというところを見せなくてはならないのに、恥ずかしい。投げ込まれたメガホンをサブローが片付けている。申し訳ない気持ちだ。我々はまた反省すべき点を見つけた。

そのような間があった中で、僕の興奮も少し冷めていた。押せ押せのムードでいたのが、落ち着いてしまっていた。流れが変わらないかと心配した。ともかく数分の中断の後、ワンアウト満塁で試合再開となった。あと2人。

心配は杞憂だった。一度つかんだ流れはそう簡単には変わらない。2球目を荒金がセンター返し。快心の当たり。今度は文句なく鳥越がホームイン。続いて大村も還る。3対4。ついに1点差。試合の行方は本当に分からなくなった。ランナー一二塁。そしてあと1人だ。絶対に回せ!

続く宮地はファーストゴロ。ファーストのフランコは無理にダブルプレーを狙おうとしない。一塁ベースカバーに入った小林にトスする。助かった。その間にランナーはそれぞれ二三塁に進んだ。ツーアウト二三塁。そして・・・

来た!松中だ!本当に回ってきた。本当に回ってくるとは思ってなかった。よくここまでつないだ。よくあきらめかった。よく意地を見せてくれた。

このときには、僕の顔はもう人には見せられなくなっていた。ぬぐってもぬぐっても涙があふれ出た。人のいる中でこんなに泣いたことは今までなかった。不可能を可能にすることを、こんなにも強く感じたことはなかった。歓声と悲鳴がわきあがる中、球場内のボルテージは最高潮に達した。その中で一人、あふれる涙を押さえきれないでいた。



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2 コメント

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Unknown (きー坊)
2005-12-17 14:13:48
ホークスファンは日本一と自負していた僕にとっても、あの場面は本当に恥ずかしい思いでした。

松中に打席が回ってきた時、こばさんも球場で泣いていたんですね。僕も涙を流しながら「のぶひこ~」と絶叫してましたよ。
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きー坊さんへ (こば)
2005-12-18 00:44:50
そうですね。あのときはファンとしてのあるべき姿を考えさせられました。本当にサブローには申し訳なかったです。

きー坊さんも泣いてましたか。それじゃあもう、この後なんか号泣でしょう。今書いているところなんですが、もう涙ボロボロで、ダメです。。
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