ヒマジンの独白録(美術、読書、写真、ときには錯覚)

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『香料諸島綺談』を読むー初めに、時代背景ー

2020年02月07日 09時21分14秒 | 読書
本日はインドネシア文学に関する話題です。インドネシアの作家は私たちにはあまりなじみはありませんが、読んでみると欧米や日本の近代小説とは違った面白さを発見することもあります。

『香料諸島綺談』の作者はY・Bマングンウイジャヤと言いジャワ出身の人です。元々は建築家として出発した彼の作家デビューは52歳と遅咲きであった。
この本のタイトルにもなっている「香料諸島」について調べてみました。
香料諸島の名の由来は西洋で香辛料としてもてはやされたナツメグやクローブの産地がインドネシア諸島の一角にあったからです。英語での呼び名スパイス・アイランズ( Spice islands)の邦訳です。
この地の貴重なそれらの香辛料を発見した西洋人はその入手に邁進しました。何せただ同然で手に入れた香辛料が莫大な利益をもたらすので、ヨーロッパの国々は競ってそれを手に入れようとします。当時の先進国であったオランダ、スペイン(と併合されたポルトガル)などです。
時代はちょうど「大航海時代」と呼ばれた頃です。外洋を半年以上も無寄港で航海できる大型の帆船を作れる造船技術と、航海術の進歩に伴い、ヨーロッパの先進諸国は世界を股にかけ貿易を展開しました。それらのヨーロッパ諸国が目を付けたのが、インドネシアに自生した香料植物でした。ある種の植物の実や種を乾燥させた物をヨーロッパに持ち帰るとそれは高値で売ることが出来ました。それらは香辛料として肉料理の味付けや臭み抜きとして重宝されたのです。香辛料の入手のために各国は自前の軍事力を備えた会社を設立しました。その会社は「東インド会社」と呼ばれました。オランダはインドネシア諸島を植民地にして「オランダ領東インド」としたのです。そこでの植民地経営にあたったのが「東インド会社」でした。ちなみにこの会社は世界最初の「株式会社」と言われています。

『香料島綺談』はそのような歴史背景を持つ諸島の住民が語る物語という形式をとっている。全5章からなり数年から十数年の間の時代区分に分けられ、住民からの聞き書きをまとめたという体裁で著述されている。

次回からは物語の内容に触れることにして、今回はこれでお終いとします。

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