ヒマジンの独白録(美術、読書、写真、ときには錯覚)

田舎オジサンの書くブログです。様々な分野で目に付いた事柄を書いていこうと思っています。

病原菌の生存戦略を考える。

2020年02月06日 19時25分54秒 | コロナ
原初は或る地域でしか発生しなかった風土病が、地域を超えて広まった病気が幾つか、あります。
病原菌の最初のグローバルな移動は「大航海時代」後の「コロンブス交換」によってもたらされた。「コロンブス交換」とは旧大陸と新大陸との間で交わされた様々な分野での「交換」を言います。例えば、アメリカ大陸原産のジャガイモ、トウモロコシなどの作物がユーラシア大陸にもたらされ、栽培が広く行われていきました。また旧大陸の住民から新大陸の住民(先住民)にもたらされたモノがその地域の存亡に関わる影響を与えることもありました。スペイン人がアメリカ大陸に進出した時、鉄製の武器を使用し先住民の青銅製武器に打ち勝ったことが知られています。その時スペイン人は同時にある種の感染症を先住民の間に伝搬させました。ヨーロッパ人はその病原菌には免疫を持っているので発症しませんが、免疫を持たない先住民はそのような病原菌に接することは文字通り「命取り」になるわけです。
 さて、私たちは自分にとって不利益になる病原菌を自らの意思で受け入れることはありません。病原菌がヒトに感染するとき、一方的に病原菌がヒトの体内に侵入したと思ってしまい、感染されたヒトには瑕疵はないと思われています。言葉を変えれば「わたしは何も悪い事をしてないのに、かってに病原菌が入り込んだ」と思ってしまいます。ですが、病原菌の立場から見ると、感染されたヒトは病原菌の拡散作戦に敗北したのです。病原菌はそれ自身単独で生存することはできない生物です。彼らは生存に必要となる栄養を与えてくれる「宿主」を求めています。病原菌は快適な下宿先をいつでも探しているのです。病原菌の生存戦略は自分の兄弟の下宿先を可能な限り多く確保することです。病原菌は孤島で暮らすロビンソン・クルーソーに取り付いてもその作戦は間違ったものとなります。なぜならロビンソン・クルーソーが死んでしまうと病原菌自身も死ななければならないからです。
ヒトを宿主とする病原菌の生存条件はヒトに取り付くこと以外にはないのです。
今の世界の無数の病原菌は自らを生存に適するように自然淘汰されたたものだけが生き残っていると、考える事が出来ます。
病原菌がヒトを含む動物の体内に侵入しようとするとき、病原菌はまずは対象者から怪しまれてはなりません。お店の入り口で入店拒否をされるとまずいわけです。
ですから、無害なふりをして体内に忍び込みます。侵入に成功した病原菌はそのご、自己複製を行ってゆきます。その時、ヒトの体内の抵抗勢力は怪しいモノが侵入したことをヒトに知らせなければなりません。それを知らせる手段が発熱、咳、悪寒などです。ヒトはそれによって体内に起こりつつある異変に気付かされるのです。

 さて、現在の「新型コロナ・ウイルス」の拡散の基底には人間活動のグローバル化にあることは間違いない。自然発生的にグローバル化を推し進めていった結果が今回の出来事である。製造業でのサプライチェーンや海外観光客に依存している小規模なバス会社とツアー会社、個人営業の土産物屋などでは経営が持ちこたえられないところも数多く出るだろう。
目に見ない小さなウイルスはヒトには大きすぎる存在であった。

この記事は『銃・病原菌・鉄』(ジャレド・ダイアモンド)と『利己的な遺伝子』(リチャード・ドーキンス)の両者を参考にしたものです。

追記
かって、SF映画で「宇宙戦争」と言うものがあったことを思い出しました。この映画で宇宙から地球に侵入した異星人は人類を攻撃します。地球人が持っている技術では彼らの攻撃にはほとんど無力でした。あわや地球人は宇宙人の餌となるしかないのだろうかと思われた時、突如宇宙人は攻撃をしなくなりました。その原因は地球上にあった病原菌に対する抵抗力がなかったため、それにより宇宙人が自滅したのでした。
今回の新型コロナウイルスにはそのような都合の良い事は起こりそうにはありません。病原菌はいつでもヒトとの共生を望んでいる事を、肝に銘じなければならないでしょう。

さらに追記
感染症の病原菌は「感染力は強いけれども、致死率は高くないもの」と「感染力はそんなに強くないけれども、致死率が高いもの」に大別できます。そしてそれらの病原菌に取り付かれたヒトの免疫力が病原菌の拡散に大きく影響します。それはこうゆう事です。免疫力が強く健康な人はその病気に負けることが少なく、多少の発熱でも健康時とあまり変わらず、活動が出来ます。一方、病弱な人は病原菌に取り付かれると発熱などで、活動が制約されます。この場合、免疫力の高い人とそうでない人ではどちらが病原菌にとっては好ましいのでしょうか。それは免疫力の弱い病弱な人よりは免疫力の高い健康な人に取り付いた方が、拡散の可能性が高くなるので、好まれることになります。ですから健康な人ほど、それらの病原菌に対しては大きな注意を払われなければならないのです。不健康な病弱者の方が病原菌の拡散を防ぐ力を多く持つという不思議な事があり得るのです。
今回の新型コロナウイルスの致死率はサーズに比べると低いので、普段のインフルエンザ予防と同等程度の対策を徹底すれば、収束は可能になると考えられます。




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