〈別名〉裏見草(うらみぐさ)
〈花言葉〉「活力」「芯の強さ」「治癒」「恋の溜息」
*★*―――――*★*―――――*★*―――――*★*―――――*★*
マメ科 多年生つる植物
原産地 日本、中国
草丈 数メートル
花期 7~9月
花色 紅紫色
学名 Pueraria lobata
Pueraria : クズ属
lobata : 浅裂した
Pueraria(プエラリア)は、19世紀のスイスの
植物学者「Puerari さん」の名前にちなみます。
根を用いて食品の葛粉や漢方薬が作られます。
万葉の昔から秋の七草の一つに数えらております。
特徴
葉は三出複葉、小葉は草質で幅広く、とても大きい。
葉の裏面は白い毛を密生して白色を帯びております。
地面を這うつるは他のものに巻きついて10メートル以上にも伸び、
全体に褐色の細かい毛が生えております。
根もとは木質化し、地下では肥大した長芋状の塊根となり、
長さは1.5メートル、径は20センチにも達します。
・花は8-9月の秋に咲き、穂状花序が立ち上がり、
濃紺紫色の甘い芳香を発する花を咲かせます。
花後に剛毛に被われた枝豆に似ている扁平な果実を結ぶ。
花色には変異がみられ、白いものをシロバナクズ、
淡桃色のものをトキイロクズと呼ばれております。
・まわりの木々をつるでおおってしまう程の
生命力。ひと夏で10mぐらい生長します。
・花は下の方から咲いていきます。
・つるの繊維部分は「葛布(くずふ)」の原料。
(静岡県掛川市特産)
・根には多量のでんぷんを含んでいて、
「葛根(かっこん、解熱の漢方薬)」になります。
葛粉(くずこ)もとれる。 → 葛餅(くずもち)
名前の由来
・和名は、かつて大和国(現:奈良県)の国栖(くず)が
葛粉の産地であったことに由来します。
・別名 「裏見草(うらみぐさ)」。とは・・・
葉が風にひるがえると裏の白さが
目立つことから。平安時代には「裏見」を
「恨み」に掛けた和歌も多く詠まれた。
分布と生育環境
温帯および暖帯に分布し、北海道から九州までの日本各地のほか、
中国からフィリピン、インドネシア、ニューギニアに分布します。
荒れ地に多く、人手の入った薮によく繁茂します。
近似種
沖縄には同属のタイワンクズ (P. montana (Lour.) Merr.) があります。
全体にクズに似るが葉の形や花の姿などに若干の差があり、
なお、沖縄ではほぼ同様な姿で
ナタマメ属 (Canavalia) のタカナタマメ (C. cathartica Thouars) も
路傍によく出現します。
生態系
様々な昆虫のつく植物でもあります。
たとえば黒と白のはっきりした模様のオジロアシナガゾウムシ、
まん丸の形が可愛いマルカメムシはよくクズで見かけます。
また、クズの葉に細かい虫食いがある場合、
クズノチビタマムシであることが多い。
利害
よく繁茂する蔓草としての利害と、食品その他の利用があります。
雑草としては、これほどやっかいなものはありません。
蔓性で草地を這い回り、あちこちで根を下ろし、
地上部の蔓を刈り取っても、地下に栄養を蓄えた太い根が残り、
すぐに蔓が再生しますで、駆除するのはほとんど不可能に近い。
世界の侵略的外来種ワースト100 (IUCN, 2000)
選定種の一つになっております。
他方で、その蔓は有用でもあります。
かつての農村では、田畑周辺の薮に育つクズのつるを作業に用いました。
そのため、クズは定期的に切り取られ、それほど繁茂しませんでした。
しかし、刈り取りを行わない場合、クズの生長はすさまじいものがあり、
ちょっとした低木林ならば、その上を覆い尽くします。
木から新しい枝が上に伸びると、それに巻き付いてねじ曲げて
しまうこともあります。そのため、人工林に於いては、
若木の生長を妨げる有害植物と見なされております。
クズは根茎により増殖するため根絶やしにすることが困難です。
抜本的に除去する方法として、除草剤のイマザピルを使う手法があります。
除草剤は、薬剤を染みこませた楊枝状の製品であり、
根株に打ち込むことにより効果を発揮します。
2008年に宮崎大学により、クズ属植物からバイオマスエタノールを抽出する
技術が開発されました。
海外における拡散
北アメリカでは1876年にフィラデルフィアの独立百年祭博覧会の際に
日本から運ばれて飼料作物および庭園装飾用として展示されたのが
きっかけとして、東屋やポーチの飾りとして使われるようになりました。
さらに緑化・土壌流失防止用として政府によって推奨され、
20世紀前半は持てはやされたが、原産地の中国や日本以上に
北アメリカの南部は生育に適していたためか、
あるいは天敵の欠如から想像以上の繁茂・拡散をとげました。
そのため有害植物及びに侵略的外来種として指定されましたが、
駆除ははかどっておらず、
現在ではクズの成育する面積は3万km2と推定されております。
近年ではアメリカ南部の象徴的存在にまでなっております。
クズの英語名は日本語から
kudzu(「クズー」あるいは「カァズー」と発音される)と
呼ばれております。
この強健な成長ぶりから中国奥地の乾燥地の緑化のために
種子が運ばれたことがありますが、うまく行かなかったようです。
有用植物としてのクズ
食用
古来から大きく肥大した塊根に含まれる澱粉をとり、
「葛粉」として利用されてきました。。
秋から冬にかけて掘り起こしたものを砕いて洗い、精製します。
漢方薬
クズの根を干したものを生薬名葛根(かっこん)と呼びます。。
日本薬局方に収録されている生薬でもあります。
発汗作用・鎮痛作用があるとされ、漢方方剤の葛根湯、
参蘇飲(じんそいん)などの原料になっております。
これを題材にした落語に『葛根湯医者』があります。
つる(蔓)
クズのつるは長いことから、切り取ったつるが乾燥して固くなる前に
編むことで、かごなどの生活用品を作ることができます。
また、つるを煮てから発酵させ、
取りだした繊維で編んだ布は葛布(くずふ)と呼ばれます。
平安時代ごろから作られていたとされます。
江戸時代には『和漢三才図会』でも紹介されました。
かつては衣服・壁紙などに幅広く使われましたが、
現在では生活雑貨や土産物として、数少ない専門店によって
小規模ながら生産が続けられております。
遠州、現在の静岡県掛川市の特産品になっております。
飼料
現在はあまり利用されることはありませんが、
かつては飼料としても重宝されておりました。
ウマノオコワ、ウマノボタモチといった地方名がありますが、
馬だけではなく牛、ヤギ、ウサギなど多くの草食動物が喜んで食べます。
食品としての“葛”
食品の葛粉(くずこ)はクズの根から取れるデンプンを
精製することによって作られ、葛切りや葛餅などの原料となっております。
貝原益軒の菜譜や大蔵永常の製葛録に記されている通り、
もともとは救荒食糧として認知されておりました。
葛粉は良質のデンプンであり、効率よく栄養を摂取するには
最適の食材です。
伝説から
室町時代、山中で猪が葛根をしきりに掘り出そうとしているのを見た人が
「食べ物ではないか」と思ったという伝説があり、
それに従えば食糧として認知された始まりは室町時代であると推測されます。
一方、飛鳥時代の庶民の住居跡から葛根や葛餅様食品が出土しているため、
かなり古来から食された可能性があります。
葛粉は、葛根を潰してデンプンを取り出し、
水にさらす作業を何度も繰り返してアクと不純物を取り除く。
最後に塊を自然乾燥させて完成となる。
したがって、良質の葛粉を作るためには、
水は清く冷たく空気は乾燥していなければならない。
良質の水と冬の寒さが厳しい奈良県の吉野葛、石川県の宝達葛、
静岡県の掛川葛、三重県の伊勢葛、福井県の若狭葛、
福岡県の秋月葛などはこの条件を満たしているといえます。
葛粉を湯で溶かしたものを葛湯(くずゆ)と言い、
熱を加えて溶かしたものは固まると透明もしくは半透明になることから
和菓子材料や料理のとろみ付けに古くから用いられております。
薬効
葛根
葛粉は薬効を持ち、体を温め血行をよくする為、
風邪引き(葛根湯)や胃腸不良の時の民間治療薬として
古くから珍重されてきました。
近年は健康志向の高まりも手伝って、
自然食品や健康食品としてますます注目をあびております。
また、更年期障害や骨粗鬆症、糖尿病、乳癌、
子宮癌や男性の前立腺癌の治療もしくは
改善に効果があるとされるイソフラボンが含まれている事も
追い風になっております。
本葛
混じり気のない葛粉100%のものを本葛(ほんくず)と呼び、
なめらかで口当たりが良いが、本来多少の苦味を伴います。
この苦味が薄いと薬効が落ちるとも言われております。
本葛は生産量が少なく高価であるため流通量が少なく、
葛粉と称して一般に売られているものの多くは
馬鈴薯澱粉が混ざっております。
現在「本葛」として市販されている物でさえジャガイモ、
サツマイモ(甘藷澱粉)、コーンスターチ(トウモロコシの澱粉)や
などのデンプンを混入した物が多い。
業界では、業務用並葛とは、甘藷澱粉100%の物を言います。
西日本、特に産地の多い近畿や九州では本葛粉が比較的手に入りやすい。
生産の現状
国内産本葛の大生産地は鹿児島です。
クズの根を掘り出す人の高齢化と天然資源の減少によって、
現在、国内で出回る本葛にしめる中国製の割合が高まっておます。
中国製については、中国から寒根葛(葛)の根を輸入し
国内で製造した物を国産本葛と表示しているケースや
国産本葛と中国産葛を混ぜ合わせて国産本葛としている事が
多々見受けられます。
中国産の寒根葛(葛)の根のポストハーベストまたは残留農薬の
危険性が問題になっております。
※ 台湾産のクズはタイワンクズ (Pueraria montana) であり、
日本産の葛根ヤマトクズとは同種ではありません。
中国産のクズについても、シナノクズ (P. lobata var. chinensis) として
区別する 薬用面からは同じとみなしてよい
(ただし、中国では、畑での葛根の栽培が盛んな為、天然物とは区別が必要)
現在、本葛について明確な表示基準がないため、消費者にとっては、
大変わかりにくくなっております。
たとえば、本葛とは本来、寒根葛の根から取ったデンプン100%の
ものを言いますが、他のデンプンを混ぜ本葛が50-70%入れば本葛と
表示しているケースが多いようです。
また原料原産地名の表示義務がないため、原料を外国から輸入しても
日本で生産すれば国産としたり、国産が半分以上は入っていれば国産と表示
したりすることがあります。
多分にもれず、本葛も低価格競争に入りサツマイモのデンプン(甘藷デンプン)、
ジャガイモのデンプン、とうもろこしのデンプン(コーンスターチ)など
との混合が目立ちます。
また、増粘多糖類等の食品添加物の混入も多くなってきており、
なかには、本葛がまったく入らなくても葛粉として販売されているケースも
目にします。
(例:内容表示 名称 葛粉 原材料名 甘藷澱粉)
文化
酒井抱一『月に秋草図屏風』(部分)。
葛(クズ)が主役となって画面いっぱいに描かれております。
万葉集から・・・
・「ま葛原 なびく秋風 吹くごとに
阿太(あた)の大野の 萩が花散る」
万葉集 作者不詳
「梨棗(なつめ) 黍(きび)に
粟(あは)つぎ 延(は)ふ葛の
後も逢はむと 葵花咲く」
万葉集 作者不詳
「葛の風 吹き返したる 裏葉かな」
高浜虚子
家紋
クズ固有の小さな葉を意匠的に図案化した家紋が数多く存在します。
秋の象徴
クズは古来より秋の七草のひとつに数えられるとともに、
秋の季語として多くの俳句に詠われております。
参考文献
浅井康宏 『緑の侵入者たち 帰化植物の話』 朝日新聞社
*★*―――――*★*―――――*★*―――――*★*―――――*★*
植物を調べておりますと文化から医療・食料までと広がります。
上記はウィキペディアからの掲載がほとんどですが、個人的に
調べる必要を感じております。
ウィキにも同様に参考文献の無い事なども含め再編集と記されている
ものも多く存在いたしますが、一つの足がかりになりますね。