切れ切れ爺さんの徒然撮影&日記

主に寺院や神社等を中心に、文化財の撮影と紹介。
時に世の中の不条理への思いを発言していく。

権力と腐敗の実態④・・・両者共々腐敗しきった同じ穴のムジナ

2018-08-16 23:58:51 | 社会


その映画は実にショッキングなシーンから始まる。ワイド画面いっぱいに手術を受ける患者の腹部が写し出され、「では始めます」の声と同時に、メスが横一直線に腹部を切り裂く。それが鉗子によって広げられ、胃や腸などの内臓が現れる。
このシーンは作り物ではなく、実際の手術の映像が使われている。この映画の他の手術シーンでも、ほとんどが本物の手術映像が使われている。この映画を見たときの鮮烈な印象はいまだに忘れることができない。





山崎豊子の小説に「白い巨塔」がある。彼女の最高傑作とも評されている。半ば実話を基にした部分も多々あって、週刊誌に連載中から話題になっていた。小説が完結した時点で単行本として発売された。そして映画やテレビドラマとしても放映されることになる。
上記の文章は映画化された「白い巨塔」だ。社会派の山本薩夫監督、主演田宮二郎。全編を通して白黒画面がずっと緊張感で張り詰めたようなシーンが続く。「白い巨塔」とは言うまでもなく、大学医学部のことを指している。

さて今回は東京医科大学の不正問題。
次から次へと出てくる驚きの、というか業界では周知の不正問題だ。



(1)文科省上級官僚による贈収賄事件、

なんとまぁ呆れるような事件だ。文科省の局長である、佐野太容疑者が、文科省の事業支援対象に東京医科大学が選ばれるようにとの条件で、佐野太容疑者の息子を裏口入学させたと言う。関わっていたのはその局長、東京医科大学の学長と理事長。そしてその間を取り持ったブローカーみたいな連中だ。
その局長は逮捕。取り持ちも逮捕。ところがなぜか不思議なことに、東京医大の学長たちは在宅起訴。なんでこんなことになるのか。なんで逮捕して拘留しないのか。警察によると高齢と言う理由らしいが、じゃあ今までいろんな事件で、60代と70代の容疑者が全員拘留されなかったのか。そんなことはない。全く釈然としない警察の対応。
しかし今「裏口入学」とは何たることなのか。こんな言葉久しぶりに聞いた。まだやっていたんだ。ところがこの裏口入学と言うのは、かなり広範囲で行われているらしい。
文科省の局長は上級の国家公務員であり、当然のことながら「国民の公僕であり、国民全体の奉仕者」のはずだ。それが局長と言う地位を利用して、できの悪い息子の裏口入学依頼とはあきれ果てる。局長と言う国家をバックとした「権力」を持っているからこそ、こういうことをするんだろう。



すでに安倍政権になってから、官僚たちの腐敗は底なし沼のように、黒い闇だらけの状態となってしまっている。そういった意味では今更驚くべきことでは無い。財務省の体たらくに次いで、この文科省でも以前の天下り問題に続いて、今回の腐敗しきった実態が明るみに出たと言うことだ。収賄罪が成立するんだろう。佐野の逮捕は当然のことだが、東京医大の学者たちも逮捕拘留しろと言いたい。



(2)東京医大学長、理事長と言う社会的名声と、大学内権力のトップの腐敗。

数ある大学の中でも、医科大学、あるいは医学部、と言うのは、その大半が高偏差値で入学するのはたやすいことではない。さらに卒業して医師国家試験に合格し、医師になったら、社会的名声を得て周囲からは、羨望と尊敬の眼差しで見られ、常に国民の中でも高い地位にあると信じられている人々だ。
更に大学内に残り、医学部教授としての地位につき、そこから医学部長、そして学長といった地位にまで上り詰めれば、それこそ社会的地位の高さゆえに、大きな権力を有していると言うふうに、誰の目からも見られることになる。事実、今回逮捕された東京医大学長は、かなり研究実績のある、また学生やインターンたちにも面倒見が良いことで知られ、人格的にも尊敬されているような人物だったと報道されていた。
裏にはいろんな事情があるんだろうが、少なくとも贈収賄事件に直接関わった事は事実であり、犯罪行為そのものである。どんなに尊敬されていようが、犯罪者と言うことで、やはり学長と言う大学内の最高権力の地位に就いたと言うこと自体が、その権力を使って、何でもできるとの勘違いだったんだろう。警察はともかく早く逮捕拘留すべきだ。



(3)「裏口入学」は突然出てきたものとは思えない。

大学の経営面から見ると、文科省の事業支援対策事業の資金と言うのは、どこも喉から手が出るほど欲しいものだ。そのためには研究実績などを挙げて、その事業の対象後に選ばれなければならない。
今回の贈収賄事件はその対象後に選んでもらうように、裏口入学とバーター取引をしたと言うことだ。本人たちにとってみればともに、win winの関係となるんだろう。だが対象校に選んで欲しいと言う理由で、いきなり裏口入学と言うのも、腑に落ちない。
このことが発覚すれば、大学の名声は一気に落ちる。当然のことながら文科省局長の地位も失うことになる。裏口入学で入学した局長の息子も、放校と言うことになるだろう。そういうリスクがありながら、これだけの理由で裏口入学を許してしまうものなのだろうか。
何が言いたいかと言えば、この「裏口入学」はずっと以前から、恒常的に毎年行われていたのではないかと言う疑いがあると言うことだ。
マスメディアもいろいろ追求する中で、その実態が明らかになってきた。裏口入学の具体的な実態については不明な部分も多いが、それ以上に話題になっているのが、女子受験生に対して、一律に減点して合格者の男女比率を7対3位にして、男子優遇措置をとっていた、と言う実態が明るみに出されたことだ。
大学側尤もらしいその理由を並べているが、これはもはや明白な違法行為だ。なんといっても国の最高法規である、「日本国憲法」の、人権平等の原則に真っ向から反する許されない行為だ。
これもメディアなどによって明らかになりつつあるが、医科大学や医学部の受験生の成績は、全体的に女子受験生の方が高いと言う。そういう志の高い人たち、そして懸命に勉強してきた女学生たちを差別し、その努力をないがしろにする極めて卑劣な行為だ。しかもこのような実態は東京医科大学に限らず、他でもなされていると言うような報道もある。
その背景にある現場の医師たちの労働実態については、極めて過酷な部分があると言う話もあって、そういった側面から、女子学生は云々、と言う理由付けがなされているようだ。全体的な傾向が仮にそうであるにしても、これから合格し医師を目指し頑張っていく女学生に対して、最初から門前払いをすると言う事の不当性が、権力者にとってはわからないんだろう。権力があるから何でもかんでも、自分たちの好き勝手思い通りにやってると言う証明に他ならない。

(4)「差別は許されない」「国民は全員平等である」「基本的人権は尊重されなければならない」

国の中には様々な社会的集団があり、最も基礎的な集団である家庭を始め、中規模集団である地域社会や学校、会社。大きめの集団である市町村などなどなど。これらでは多様な活動がなされており、その全てがきっちり歯車が噛み合って、スムーズに活動できているわけでは無い。様々な矛盾や課題が数多く散らばっており、あちこちでそれが目を吹き対立構造や不正問題につながっていく。
しかしだからといって、違法行為を許してはならない。国民の誰もがそのために、常に心の中に意識しておくべきことが、上の(4)の表題に掲げたことだ。



こういったものがないがしろにされる社会と言うのは、国の衰退をもたらすことになる。この日本と言う国は、立法府の政権や国会からして、そのような基本原則が陵辱されているとしか言いようがない。国会議員たちの、さまざまな人権無視の差別発言。国民を馬鹿にしたような嘘を平然とついて、後は逃げてごまかす。政権主導から今度は官僚の世界も、嘘とごまかしの腐敗の吹き溜まりになりつつある。
こんな様子を見て、国民たちは一部の人々こそ抗議の声を上げるものの、大半の国民は、「まぁあんなもんか。どうせ言ったって治らない」と言う諦めにも似た感情に陥るんだろう。メディアのニュースも、そういったことを深く追求しようとはせず、ただ単に「こんなことありました」で済ませてしまう。そしてテレビなどの画面から圧倒的に溢れるのが、お笑いと言う表現でオブラートに包まれた、人権無視、差別発言、言葉の暴力。こういったことが芸人たちから毎日毎日吐き出され、国民もいつしかそれを笑って受け入れてしまっている。こんな事態見てると「あー世も末だ」などと思ってしまう。

結局一部の権力者たちが、その権力を持ったときに人間は変わってしまうんだろう。権力を意識したときに同時に、人間的な腐敗が始まる。
それは家の中でも、地域社会の中でも、会社の中でも、市町村や都道府県の中でも、そして官庁でも、国会や政権の中でも構造は同じだ。
権力の独創や独裁を抑えるために、監査委員会みたいなものがあるものの、何の役にも立っていないのがこの国だ。
権力者は腐敗しきって、違法行為のやりたい放題。今回の東京医科大学と文科省官僚の贈収賄事件で、いっそうそのことが根深く、どうしようもないほど腐りきっていることがよーくわかった。
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