切れ切れ爺さんの徒然撮影&日記

主に寺院や神社等を中心に、文化財の撮影と紹介。
時に世の中の不条理への思いを発言していく。

《NHKスペシャル「アウシュビッツ 死者たちの告白」・・・ゾンダーコマンドとは》 (1)

2020-12-28 23:28:00 | 社会



 昨夜ブログを書いてアップした後、NHKテレビを見たときにちょうど表題のドキュメンタリーが始まるところだった。8月に放映された作品の再放送。前編後編に分かれ終わったのは深夜を過ぎていて最後まで見てしまった。


  「アウシュビッツ」とは?

 もちろんアウシュビッツについては様々な本を読んだりテレビのドキュメンタリーを見たり、映画でも見ていてずっと以前から知っている。ましてや中学校社会科の教員をした者として知らないはずがない。中でも世界が戦慄した記録がフランクルによる著作の「夜と霧」だ。その後この作品は映画化されて同じ題名で世界中で公開され、私自身も見た。事前に知っていたとはいえども、そこには衝撃的な映像がずっと続く。感性豊かな人ならばとても見る事はできないだろう。私など冷徹な部分があるのでどんな映像でも見てしまう。

 さてアウシュビッツとは何か。もちろんこれは第二次世界大戦中、ドイツ軍が総統であるヒトラーの命令によって作られた施設であり、ここではヒトラーが言うところの劣等民族である、と決めつけられたユダヤ人を根こそぎ各地に設けられた収容所に送り、そこに閉じ込めた施設だ。そのうち最大級の施設がこのアウシュビッツ。ここでは男も女も老人も子供も関係なく、ただ単にユダヤ人であることを理由に捕らえられ収容所に監禁され、1部の者は戦争遂行に必要な物品製造に携わり、また別の1部の者は何らかの理由で収容所内で利用されることになる。

 しかしドイツ国内及びドイツが占領したポーランドに大勢いたユダヤ人が、貨物列車に乗せられてぎゅうぎゅう詰めの状態でひっきりなしに送られてくる。当然収容所は満杯となり、ここでドイツ軍が命令を下したのはユダヤ人全員を皆殺しにすると言う事だ。こうしてユダヤ人たちは誰彼関係なく大量虐殺の犠牲者となる。

 虐殺専用の細長い建物が建設され、そこにいちどに数百名が押し込められる。もちろんその前に全員裸にされシャワーを浴びせると言う名目のもとに入れるのだ。しかしすでにユダヤ人たちのほとんどが、この中で殺されると言うことをわかっていたと思われる。建物に押し込められたユダヤ人たちは、天井から突然シャワーではなく、霧のようなものが吹きかけられた。その正体はチクロンと言う猛毒の薬品だ。これを約20分近く浴びせ続けられユダヤ人たちは、あまりもの苦しさに断末魔の叫び声をあげながら次々に死んでいった。アウシュビッツに限らず各地の収容所におけるユダヤ人虐殺の人数は約600万人とも言われる凄まじい数字だ。折り重なるように死んでいったユダヤ人の死体は外へ引きずり出される。そして女性の毛髪は切り取られ、ベッドや枕、ソファー等の材料になったと言われる。また男女にかかわらず金歯の金の部分が回収され溶かされインゴットになったと言う。またメガネや指輪など貴重品あるいは溶かせば武器の材料になるようなものは全て回収され集められた。

 死体は細長く掘られた地面の穴にに数十人をまとめて埋める。いずれの死体も収容された段階から食べ物はほとんど与えられず極端に痩せ細り、1つの穴に大量の死体が入るようになっている。

 こうした大量虐殺はドイツが占領していた地域にソ連軍が反撃し、突入してくるまで続いた。そしてようやくソ連後によって収容所が解放されることになる。虐殺寸前で助かった者も多いと言われる。

 このような大量虐殺の背景にはゲルマン民族の優位性と言うものを、19世紀末からドイツの医学者たちが研究しそれを「優生思想」と言うものにまとめた論文がある。ゲルマン民族は血統の上でもいわば雑種扱いされるものではなく、長い歴史の中で1つの血統を守ってきた結果、肉体的にも精神的にも優秀なものとして自ら認識するようになっていった。しかし第一次世界大戦でドイツは敗北している。その結果戦勝国からかなり厳しい経済的な制裁を受けることになる。ありえないほどの超インフレの中でドイツ国民は生活が困窮し、餓死する者も現れる。そんな中第一次世界大戦に一兵卒として参加したヒトラーは戦後捉えられ、牢獄の中で「わが闘争」を書き上げる。そこにはゲルマン民族の将来のあるべき方向性を示しつつ、自らが思い描く新たなドイツ帝国の建設を予想している。こうしてドイツは少しずつ復興していく。もちろん表向きは戦争の反省からワイマール条約を結び、当時世界最高の憲法と言われた、いわゆるワイマール憲法を制定し、民主国家としての地位を築く。しかしそのことが逆に戦争で虐げられたゲルマン民族と言う考え方が、ヒトラーの扇動によって先鋭化し、ドイツを再び侵略国家に導いていくことになる。そしてドイツ人であること、つまりゲルマン民族が優秀であることを証明するかのように、対比的に劣等民族と位置づけたユダヤ人を抹殺することによって、さらにゲルマンの誇りを高める役割を果たされる結果となっていく。リーダーの地位についたヒトラーは当然のごとく、妄信的に従う国民のヒーローになったわけだ。



  ドキュメンタリーの内容は

 ナチスドイツによるユダヤ人虐殺の件については、多くの著作多くの研究がなされ、様々な角度から今も研究もされている。また戦後75年以上経った今でもドイツおよびポーランドでは、アウシュビッツ収容所の実態解明を継続中だ。これだけの年数が経ったら全てが明らかになったのではないかと思われそうだが、いまだにわかっていないこともあるらしい。生き残った1部の人々の証言から、虐殺される前に多くのユダヤ人たちが遺書を書いて、壁の下に埋めたと言う話があるのだ。あるいはまた建物のレンガ造りの塀には上から特殊な硬い塗料が塗られており、これまではただの壁として扱われていた。しかしその壁の上塗り塗料を特殊な方法で少しずつ剥がしていくと、レンガに掘られた文字が浮かび上がってきた。名前と何らかの日付。一体これは何を意味するのか。そして床のレンガもはがし掘っていくと様々な缶や瓶の中に大量の遺書が見つかった。

 自分たちは殺されても将来誰かがこれを発見し、自分たち自身がこの世に存在したことをわかってほしいといった思いも込められていたんだろう。それら様々の遺書、あるいはレンガに掘られた名前などを調べ追求していく。その結果様々なことがわかってきた。生き残った人たちの証言の1部にはあったと言われていたが、実際に文書として残されていたものが見つかったのだ。そこには注目すべき言葉があった。

 「ゾンダーコマンド」と言う語句。意味としては「特殊な仕事」「特別な要件」といったものになる。一体何が特殊なのか。そしてレンガの名前は誰が何のために刻んだのか。それらが遺書の解析及び生き残った人々の証言から少しずつ明らかになってくる。その過程をドキュメンタリーは追っていく。生き延びてきた人々人々も年齢は80代後半から90歳代だ。しかしインタビューに答えるその目つきと口調は、極めて明瞭であり厳しいものがあった。逆に言えば彼ら彼女たちが体験してきた事は筆舌に耐え難く、何があっても許すことができないと言う、極めて強い感情が今もっても抑えることができないほどのものがある、と言うことを意味している。

 実は「ゾンダーコマンド」と言う存在については、私も見た映画の「ソフィーの選択」の中に1部登場していた。この映画はやはりナチスによるユダヤ人迫害及び虐殺を描いた、ある意味凄まじい映画である。私は1人の映画ファンとして二千本もの映画を見てきたが、その中でも最高作に匹敵するほどのものといえる。主演の女性をメリル・ストリープが演じていた。今でもストーリーはほぼ全部覚えている。おそらくこの映画を見た方もおられるかもしれない。

 では、「ゾンダーコマンド」とは一体何なのか。


  (画像は他HPより) 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 《コロナ感染者の急拡大、そ... | トップ | 《NHKスペシャル「アウシュビ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

社会」カテゴリの最新記事