しかぜきょうこの1日1枚+

スペイン在住フラメンコ研究家/通訳コーディネーターによるフラメンコCD紹介

MUJEREZ

2009-07-21 02:51:40 | カンテ
久々の新譜紹介でございます。
昨年、ヘレスの若手カンタオールたちを紹介する「ヌエバ・フロンテーラ・デ・カンテ・デ・ヘレス2008」を制作/発売したBBKという北スペインバスクの銀行の制作による「ムヘーレス」。女性たちという意味のMUJERESとJEREZ がかけてある、しゃれたタイトルにまずは座布団1枚。「ヌエバ・フロンテーラ」は、ヘレスの外ではほとんど知られていないような若手カンタオールたちが中心でしたが、こちらはすでに一家をなした、というか、ばりばりに活躍しているプロたち3人。若手は。。。いないのかなあ。。。男はけっこういるのに、やっぱいまだに男性上位、なんでしょーか。。。
でも考えてみたらわりとコンスタントにCDをだしているマカニータはともかく、ドローレスってソロ、たしか1枚しかないし、フアナにいたっては皆無? なんか、いつもアントニオ・ピパの舞台にでているからそんな気はしなかったけど、うーん、考えてみればこのアルバムの意義は思ったよりも深い。。。のかも。生の舞台とちがって、CDはより遠くまで届くし、後世に残るわけだしね。うむ。フアナのムイ・フラメンカな声、しゃがれた、男のようにもきこえる、力強く熱のある声はよいですねえ。でも、実はけっこう気にいったのがドローレス・アグヘータのシギリージャだったりする。。。自分でも意外。けっこう音とか外したりはするんですが、でもなんつーかけっこう本物の味、的な感じがするわけですな。曲の途中で急に「父に捧げます」ってのはあんまりないけどねえ。。。んでそのわりと愛らしい声と歌うときのちょっと悪魔的でもいえる声との対比もわるくない。。。ブレリアののりはちょっと苦しいかな。でもパルマのボーとチチャロのおかげでアグヘータ系がサンティアゴ系によってて面白い、ともいえるかも。なんか生でも久しぶりにドローレス、きいてみたくなってきました。ちょっとがっかりだったのはマカニータ。この中では一番若手だけど、CDもたくさんでているし、リサイタルもたくさんこなしている、ある意味一番プロでベテランなわけだけど、レパートリーのかぶりをさけるためか、マラゲーニャ屋レバンテなんて歌っているわけなんですが、こいつがちょっと、、、なわけで。得意なはずのソレアも、勉強してる感じはするんだけど、割と一本調子で音も外すし。熱はあるし、声は彼女もちょっとしゃがれたフラメンカ声。そういえば3人ともそうですね。ヘレスっぽい声っていってもいいんだろうか。。。
ちなみに伴奏はモライート。名手でございます。文句なし。やっぱ伴奏はこの人っすな。あ、ドローレスの伴奏は息子ディエゴがやってます。これもシンプルで古風なかんじでわるくないよ。ってかほんと上手になりました。
曲の合間にちょっとした話し声がはいったりしているのがいい雰囲気でございます。歌詞もついているし、ヘレス狂はもちろん、カンテ練習生にもおすすめです。
しかしこのアルバム制作がバスクの銀行ってのが、すごいよね。これも実はビルバオでペーニャをやってるゴンサロ君の尽力あってのこと、なわけですが。はい。その意味でもアフィシオナード、買って損のない1枚でございます。

ギジェルモ・カーノ「シンコ・ベルソ・イ・ウン・コラソン」

2009-07-03 01:41:48 | カンテ
日本だとギジェルモ・カーノなんて初耳、っていう人の方が多いはずだ。この人を知っているというのは、かなりのフラメンコおたくか、最近スペインに滞在し、フェスティバルのおっかけでもやっていた人くらいじゃないだろうか。。。
1973年、ウエルバのボジュージョ・デ・パル・デ・コンダド生まれのこの人がフラメンコを歌いはじめたのは今世紀になってから、なんだそーなんである。正確には2002年。それまではセビジャーナスとかは歌っていたそーだが、フラメンコはぜーんぜん、だったそーな。その2002年に由緒あるムルシアはラ・ウニオンのカンテ・デ・ラス・ミーナスのコンクールの1部門で優勝しているのだからすごい。2003年もタランタ、カルタへネーラで各部門で優勝.2004年からは各地のフェスティバルで活躍。2006年にはビエナルにも初参加。07年にはCDデビュー、08年のビエナルではソロリサイタルを。。。と順風満帆。
この人の二枚目のアルバムはファンダンゴ集でございます。ウエルバだもんね。
きれいな声で朗々と歌うタイプの彼にファンダンゴはぴったり。アロスノのようなウエルバ系あり、ニーニョ・デ・グロリアなどのペルソナル(創唱者の名前がついているパーソナルなスタイル)系ありでけっこうバラエティにとんでいますな。新しい歌詞なので歴史的なものを勉強したい人にはむかないけど、ファンダンゴ好きにはおすすめかもです。