しかぜきょうこの1日1枚+

スペイン在住フラメンコ研究家/通訳コーディネーターによるフラメンコCD紹介

第93回 カルボネリージョ

2006-09-23 22:08:37 | カンテ
CD3枚にカルボネリージョの全録音が収録されているとゆー
これまたファン垂涎のアルバムでございます。

今年生誕百周年ということでビエナルでもオマージュ公演が行われたカルボネリージョは
1906年セビージャに生まれ、37年に結核のため早世した歌い手。
こどものときからうたいはじめ、ファンダンゴの黄金時代に活躍したが、
若死にしたため残っている録音も29年のニーニョ・リカルド伴奏のものから32年のサビーカス伴奏のものまで、
短い間に録音されたものだ。

これはもう、聴いてほしい!としかいえないよさ。
SP からの復刻ということもあり,一部針がとんだりしたり、ききづらいものがないでもないが
その素晴らしさは時をこえてせまってくる。
なんといってもファンダンゴが有名だし、今もいろんな人が彼を手本としてうたっているが、
ソレアもすっごくいいのであります。

ビエナル限定版とのことのようなので入手しにくいかもですが
コアなファンにはぜひ!であります

番外編2 ビエナル06 ロス・ガルバネス

2006-09-17 20:24:40 | そのほか
もーほんとにどーにもこーにもやられてしまいましただよ、ガルバネスには。
はい。イスラエル・ガルバンとパストーラ・ガルバン。ガルバン兄妹。
14日はセントラル劇場でイスラの「アレーナ」再演。
二年前に観てほんま、身体がふるえるくらいの思いを味わった作品ですが
今回さらにパワーアップ。ほんとにイスラは天才。
15日はそのイスラの振付作品「ラ・フランセサ」パストーラの独り舞台。
これもまたすごかった。最初はうーん、どーかなーって感じも実はあったのだが
いやいやほんまよーござんした。イスラの振付けといってもイスラの真似ではなく
めっちゃフラメンカな女である、パストーラの踊りにちゃんとなっていたのがすごい。
男の子のような衣裳がかえって女性らしさを強調し、
女性のこびは女性の強さの裏返しであり
キッチュさがかえってその品格をみせてくれるといった、複雑さ。
何通りにもよめる本のような、そんな作品でございました。
終演後のパストーラ。顔つきが前とはちがっていると思ったのは気のせいではないと思う。
絶対もう一度みたい舞台! とくに真紅のバタ・デ・コーラでのボレロ! 
今夜はイスラの「タブラ・ラサ」でございます。これも楽しみ~

第92回 「ナランヒートに捧げる」 

2006-09-15 18:44:54 | カンテ
ビエナルでは公演ばかりでなくCDや本のプレゼンテーションも行われる。
初日に紹介されたのがこれ。
オメナへ・ナランヒート・デ・トリアーナは
クリスティーナ・ヘーレン財団フラメンコ芸術学校でナランヒートに師事した
若手歌い手たちによるナランヒートへのオマージュ。

ビルヒニア・ガメス、ハビエル・リベラ、マヌエル・ロンボ、ナサレ・カラ、アナ・デ・ラ・プエブラ、
ロサ・デ・ラ・マリア、ラファエル・メディナ、ラウラ・ビタル、ビセンテ・ヘロ、ロシオ・バサン、
ソニア・ミランダ、インマクラーダ・マルティン、ヘロモ・セグラ
という13人が歌う13曲。ギターはナランヒートの息子であるペドロ・サンチェス。

すでにソロアルバムをリリースしていたり、舞踊団などのバックで大舞台もこなしているプロもいるし
それほど悪くないのもありますが、やっぱ師匠は偉大とゆーことをつくづく感じさせるつーか。
やっぱ“教わっている”限り、師匠をこえることはできないつーか。
声のだしかたとかテクニカルなものもみえちゃったりしたりして、伝わんないのだよね。
なお、ここでみながやってる声のだしかたは喉を痛めないとゆー意味では理にかなってるんだけど
なんかやっぱ人工的な感じかも、だ。

個人的には1曲目ビルヒニア・ガメスがうたっているタンゴ・グアヒーラ(とゆーのか、これ?)の曲がなつかしい。
私的にはナランホとゆーとタンゴとペティなんだわ、なぜか。
あ、バンベラもね(でもここでラウラ・ビタルがうたっているのはなんだかなあ、である)
(しかしみんなどーしてこー声をはりあげるんだろーねー。オレ!をひきだすのは微妙な声のつかいかただろーに。が、技術としてそこで声のボリュームをしぼればいーとゆーわけでもない。そこらへんでセンティドとかの問題もでてくるのだろー)
ソレアもシギリージャもなんかぜんぜんこなれとらんしなあ。。。

ま、皆若いので今後に期待つーことで。


番外編1 ビエナル06「開幕ガラ」

2006-09-14 18:33:31 | そのほか
とうとうはじまりました06年ビエナル。
初日は22時開演の「アンダルシア フラメンコと人類」
マリオ・マジャが構成、演出、監督したこの作品は
アンダルシアの州歌をアンダルシア八県を代表するフラメンコの曲種で歌ったこのアルバム
http://blog.goo.ne.jp/kiokito/e/dba6f454b8cc82eaeb4082467e07f695
をベースにした作品。
カプージョやフェルナンド・デ・ラ・モレーナ、カルメン・リナーレス、マリナ・エレディアといった
アルバムと同じメンバーもあれば、違うパターンもあり。
また各場面を短い曲(純フラメンコでなく、たとえばディエゴ・カラスコのフラメンコ・バロコの導入のギターとか)でつなぎ
各曲ではグリロ(ブレリア)、ベレン・マジャ(カンテス・ミネーロス、タンゴ),ラファエラ・カラスコ(ソレア、ファンダンゴ・デ・ルセナ)、ロシオ・モリーナ(マラゲーニャ、タランタ)や群舞もはいるという、いかにも開幕ガラらしい作品。
ベレンのタンゴでの昔風な振りや、ラファエラの美しい動き、グリロの切れ味、才能を感じさせるロシオと、踊りもようござんした。でも実は一番好きだったのはバイオリンとギターで歌う民族音楽のベルディアーレスだったりするのだな。
それとアンダルシア万歳的最後もちょっと抵抗あるとゆーのが正直なところ。いやわたしも万歳っていいたいくらい好きだけど
ナショナリズム全開は政治集会みたいなんだもん。。。

第91回 チャト・デ・ラ・イスラ

2006-09-12 18:16:15 | カンテ
この夏亡くなったのはなにもフェルナンダだけではありません。
あるときは流しのフラメンコ。
あるときは宝くじうり。
またあるときはただのよっぱらい。
しかしてその正体は、、、、交通事故で亡くなったファルーコの息子よりもうまいとまでいわれた幻の踊り手、チャンギート。
彼も、
そしてトゥロネーロも http://blog.goo.ne.jp/kiokito/e/37d02d61af405f2b69fcac0a2a278392
そしてまたこの人も。。。。
エル・チャト・デ・ラ・イスラ
イスラはカマロンの生まれ故郷でもあるカディス県サン・フェルナンダのことで、彼もまたここの出身。
チャトとは鼻ぺちゃのことで、はい。彼はたしかに鼻ぺちゃでございます。

このアルバムは69年発表のパコ・デ・ルシアとラモン・デ・アルへシラス伴奏のと、71年発表のラモン伴奏のもの2枚を1枚にカップリングしたおとくな1枚。
なお1999年にユニバーサルから発売された50枚の全集のなかの1枚であります。これ、ほかのシリーズもおなじね。
あのまっかな、なにがなんだかよーわからんジャケットよりも数倍よいです。でも中身いっしょよ。

この人は昔のカディスの香りを伝える一人だったんじゃないかと思います。26年生まれ。
こどものときからカディスの市電やベンタ・デ・バルガスで歌って小銭を稼ぎ,後、マドリへ出てタブラオで活躍。
というのは、ランカピーノやカマロンのバイオにも通じるものがありますね。
タブラオといえば、私も彼をカフェ・デ・チニータスの舞台でみたことがあります。
いろんなアルバムで知っているベテラン・アルティスタが今も出演しているというタブラオの奥深さ、というべきか
何年たってもタブラオで歌い続けていかなくてはいけないというフラメンコの仕事のたいへんさ、というべきか。
うーん。

このCDをきいてもすぐわかると思うんですが、彼はカラコール大好きのカラコレーロ。
そーいやベニ・デ・カディスもそーだったしな。
カディスはカラコール。なんだな。やっぱ。
抜群のコンパス。フラメンコ感覚。よいですよ。
パルマとか,昔風なのもよいっす。きもちいい。
パコとラモンの伴奏もさすが、歌を愛する人の伴奏だし。
パコの古風な(もうかれこれ40年近く前だし)中にもきらっと光る感じは今にいたるまでの伴奏のスタンダードだね。
ラモンはより正統派。でもガッツある感じでこれも好き。
歌もいーよー。まっすぐで。

ここ数年は引退。舞台でもみかけませんでした。
住んでいたマドリード郊外の町で日課の散歩の途中に倒れなくなったということだけど、
彼の魂はカディスにとんでいったにちがいない