しかぜきょうこの1日1枚+

スペイン在住フラメンコ研究家/通訳コーディネーターによるフラメンコCD紹介

第64回  Los Tablaos

2006-03-21 22:05:09 | バイレ
クルトゥーラ・ホンダというのは
今はなきフォノムシク社よりでた
フラメンコのアンソロジー。
もう今は廃盤だと思うけど
盤によっては
まだみつかる可能性もあるかな、
って感じです。
発売されたのは、お、1997年。
うーんもう10年前ですね。
嘘みたい。
このシリーズもスシやパンセコ、フアン・ビジャールなどの
ヒットを飛ばしたスターたちやディエギートやフェルナンダなど
なかなか充実したものでありまして私的には二重丸。
そんでもって私の師匠でもあります、ホセ・マヌエル・ガンボアの
詳細な解説がついているので三重丸ですね。

これはその中の1枚、16番で、
「アトラス・コン・ソニケテ ロス・タブラオス」というタイトル。
リズムとともに後ろに、ってゆーとこでしょうか、訳すと。
収録されているのはでもタブラオの生録音ばっかとかいうわけではなく
タブラオで長らく活躍した名伴奏家・名伴唱家たちのアンソロジーって感じです。

とってもダンディなマローテのぶっとい音のすごみ!
若き日のクーロ・フェルナンデスの踊りにぴったりな歌の数々。
踊り歌とかといってバカにしてるとしたら大間違い。
しっかりしたコンパスに裏打ちされた歌はムイ・フラメンコ!
どうしてどうして捨てたもんじゃありません。

日本で舞踊をやってる人や、舞踊伴唱やっる人は必携の1枚ですね。
今でも踊りの伴唱でよく歌われるものとかいっぱいでてくるよ。



第63回 チリゴタ・デ・セルー

2006-03-19 20:43:53 | そのほか
つーわけでヘレスで唯一買ったCDをご紹介。
タイトルは「ロス・ケ・コセン・パ・ラ・カジェ」
チリゴタ・デ・セルーの06年の新譜です。

カディスというとフラメンコ・ファンにとっては
アレグリアスやタンギージョ、
そしてソレア・デ・カディス、タンゴ・デ・カディス
なんてとこが思い起こされるんではないでしょーか。
なんでフラメンコな町と思うことでしょう。
たしかにフラメンコな町でありますが、
それよりなによりカルナバルな町なんです。
有名なタンギージョの「昔の銅貨」がカルナバルで歌われたタンギージョだってこと、
ご存知ですよね。

カディスのカルナバルはもちろん仮装もありますが
メインとなるのは“歌”なんですね。
それも毎年オリジナルな曲を発表するグループの数々、
コーロとよばれる大合唱団、
それより少ない人数のコンパルサ、チリゴタ
少人数のクアルテット
とよっつのカテゴリーがありまして
これらがカルナバルを前にしたコンクールで競い
後、町でもうたうわけですね。
で、コンクールにでない(が実はすごい人気の)グループもあったり
ロマンセーロっていったけかな、紙芝居みたいなので語りをきかせる人がいたり
で、カルナバルのカディスは目にも耳にもうれしい町なんです。
ついでにいえば名物のうにもうまい。。。ので口にもうれしい。

でこのアルバム。
セルーは毎年コンクールで上位入賞しているチリゴタのグループを率いる人で
本名ホセ・ルイス・ガルシア・コシオ。
風刺のきいたおちゃらけな歌詞はサイコー!
(この歌詞がすんなり全部ききとれる日本人はおそらくいないだろーけど
集中しないとスペイン人でもききとれない。。。といわれる)

今年はゲイなお針子さんですが
去年はニートな30男
一昨年は尻しかれ夫(ロ・ケ・ディガ・ミ・ムヘーは優勝!)
大昔には伝説のよっぱらいもあったし、
と毎年、もちろんその仮装/仮想状況をいかした歌詞をおくりだし
笑える笑える。
今年の歌詞の中には「うちのイグアナは歌って踊る/イグアナ・デル・レブエロ」とか
フラメンコ好きならよけい笑えるだじゃれがあったり、
替え歌にセビジャーナスがあったり。

いや~とっても楽しいんですが、こればっかは歌詞わかんないと楽しさ半減かもですが。





第62回 ドゥケンデ

2006-03-18 04:18:14 | カンテ
ヘレスにいる間に
ドゥケンデの新譜
「ミ・フォルマ・デ・ビビル」
(僕の生き方)が
でていました。

ヘレスの町中にもCD屋さんがないわけじゃないけれど、
とてもそこを探しまわる暇はなかったんで
(といいつつ1枚買ってきた。。。チリゴタだけど)
昨日セビージャの町中で買うてきました。

とっても楽しみにしていたんだけど~~~

でおわかりですよね。
う=ん、なんかいまいち、ぴんとこないの。
一応5回ほど聴いてみたんだけどね~。
ドゥケちゃんの声の肌触りとかもっていきかたとか好きなんだけどね。
う~ん、前作がわたしのツボにはまりすぎてしまったからかなあ。
(サマルコは名作!)

なんつーのかなー。いわゆるスペインでいうテミータ風な曲が多いのよね。
テミータっていうのは、うーん、ヒット狙いがみえかくれする、
くちずさみやすそうなメロディの、軽めのフラメンコ。
かつては新しくきこえたそーゆー感じの曲が最近はちょっと時代遅れつーか
そーゆー風にきこえちゃうのはなぜなんでしょーね。
かえって古風な方が新鮮。飽和状態なんでしょーかね。
こないだのヘレス・フェスの、サラ・バラスの新作とってもよかったんだけど
ところどころのテミータはださくきこえちゃうんだよね。。。
んでもってドゥケちゃんは何でもお上手に歌っちゃうからなあ。

なんでわたしのお気にはやっぱソレアかなあ。アルバムタイトルにもなってる曲。
でもギターがちょっとうるさい。もちっと音少なくてもいーじゃん、とか思う。
それにちょっとやっぱ“つくってる”とこもすけてくるのは難ですな。

あーなんかやっぱ私最近プリスタ?嫌いなのに~プリスタって。

ギター、制作、音楽監督はチクエロ。
チクちゃん、こるんだよね。

パルマやハレオにヘレスのボーの名台詞(ウジェ~)や入れ方とか
ビセンテ・アミーゴのハレオのしかたとか、いろいろ参考にしてるのが
パルマ研究家としては興味深い、つーか、笑えます。

あーストレートなフラメンコ、聴かしてくれよ~
ストレートで、しかも昔をそのままなぞっている、のではなく、
しっかり現代的感覚があるとか、
テミータでももっとフラメンコ色が強いとか
新しい試みがあるとか
そーゆーなんらかの驚きがあるCDを私は待ってます。。。

第61回 トマシート「トロトロン」

2006-03-15 21:46:42 | カンテ
告白します。
ヘレスのフェスティバルでの
トマシートのコンサートの日に
下手よりの通路で踊りまくっていたのは
私たちです。
メンバーはセビージャ大学教授など博士が5名
院生2名。記者2名。。。
平均年齢はかなり高かった。。。が、
でもなんでみんな座っていられるわけ~???
このリズムに身体が動かないのか~???
とか年寄りたち、よっぱらいたち
(たまには自分を客観視してみる)
はいいつつ踊り狂ってたのでした。
記者1名踊りながらメモしてたぞ。(わたしじゃありません)
このコンサートは最近トマが続けているハードロック仕様
つまりエレキギター、エレキベース、ドラムス
だったんですが、もちろんパルマ隊も加わっていたし
コンパス完璧。

そのトマシートのデビュー盤がこれです。93年の発表。
独立系の会社からでた、すごく手作りチックな1枚ですが
ここにトマシートだけでなく、ナバヒータ・プラテアの原点あり、
というのが久々に聴いた感想。
このアルバムが好評?で96年にソニーはエピックから
「トマシート」ツーアルバムでたわけですが、これも
ここと同じ曲多し、です。
編曲とかおしゃれになってるけどね。

このデビューアルバムでほとんどの曲を作っているのが
アントニオ・デ・ロス・リオス。通称マドリーレ。
マドリ出身のギタリストで昔、ペリキンの妹と結婚してた人。
でブルースやロックなんかとブレリアをくっつけた犯人はこの人ですね。
それがつぼにはまってナバヒータなんかもでてきたつーわけです。

トマシートのとろとろん(とひらがなで書くとかわいい)は
イサベル・バジョンの作品「ムヘール・イ・ペレーレ(欲望のあいまいな対象)」の
劇中歌としてもでてきましたね~
「オーマレ」はその後、チョンチが歌ってシングルカットされてましたね。
ってどーでもいー?

ちなみにとますはめちゃくちゃバランス感覚いい、
性格もめちゃくちゃいいこですよ~

第60回 La Triana de "El Zurraque"

2006-03-15 20:55:47 | カンテ
怒濤のようなヘレス・フェスティバルも終わり
ようやくトリアーナのおうちに帰って参りました。

今年のヘレスのフェスティバルでは
いーもんをほんといっぱいみることできて
とっても幸せ!
ホアキン・グリロにはじまり、ベレン・マジャ、マヌエラ・カラスコ、
メルチェ・エスメラルダ、マノロ・マリン、ラファエル・カンパージョ、
ソン・デ・ラ・フロンテーラ、イサベル・バジョン、サラ・バラス、
ルイス・オルテガ、カルメン・コルテス、ファルーコス、グイト、
アイーダ・ゴメス、ブランカ・デル・レイ…って舞踊ばかりじゃなく
トマシート、ディエゴ・カラスコ、モライートというヘレス、
黄金コンパストリオをはじめ、フアン・ホセ・アマドール、フォスフォリート、
パブロ・マルティン、ディエゴ・アマドール、ダビ・ラゴス、アルフレド・ラゴス
などなど音楽方面もなかなか充実でしたよ。

つーのはともかく。

トリアーナ。

トリアーナといえば、ヘレス同様、フラメンコ揺籃の地として知られるところ。
今じゃヘレスほどにはフラメンコを感じることはできないようにも思うけど
それでも町を歩けば、ひと節うなっているおっさんがいたり
市場でマヌエラ・カラスコやマティルデ・コラル、ペパ・モンテス,スーシなんかにあったり
なんつーことはあるわけで、歩き方によってはじゅうぶんにフラメンコ、
感じることできるのではないかと。
夜だけの営業だけどマントンシージョなるフラメンコと闘牛の写真がいっぱいのバルもあるし
(ときどきすっごいフィエスタに遭遇できる。。。ど深夜だけど)
舞踊教室も多いし、ね。

で、トリアーナを聴きたいという人にはこれしかないでしょう、っていうのが
「トリアーナ・デ・エル・スラケ」
アレネーロ、エル・テタらトリアーナの歌を得意とする歌い手たちを集めたもの。
スラケとは、トリアーナの中でもチャピーナ広場のあたりのことをいうようだ。
で、このアルバムではトリアーナを代表する歌である
ソレア・デ・トリアーナがいっぱい聴けます。
今はあんまり歌う人もいないんだけどね。独特の節回し、わたしは好きです。
ペペ・デ・ラ・マトローナもよく歌っていたような。ナランヒートも録音してたっけか。
マトローナの好きだけど、本当は近所に住む、
ど近眼のおじいさんバリのが一番好きだったりする。。。