ダビ・ラゴス、待望の初ソロCD。
1973年へレス生まれ。歌い手のアギラール・デ・ベヘールは従兄弟、叔父にアギラール・デ・ヘレス。兄にアルフレド・ラゴスというフラメンコ一家に育ち、こどもの頃から歌い始め10歳で初舞台。叔父に導かれプロとなり、95年にはドミンゴ・オルテガのグループで新宿「エル・フラメンコ」出演のため初来日。後、ドミンゴをはじめ、ベレン・マジャ、アドリアン、ルイシージョ、クリスティーナ・オヨスらの伴唱で活躍。オヨス舞踊団での活躍で注目され、2002年のビエナルでは舞踊伴唱だけでなくソロのリサイタルも行った。ホアキン・グリロ、イスラエル・ガルバン、パストーラ・ガルバン、アンドレス・マリン、マヌエラ・カラスコ…一流の舞踊家たちと数多く共演している実力派。
1曲目は熱血ブレリア。パケーラ・デ・ヘレスに捧げたもので、タイトルからして「ブレリアの女王」。
めちゃくちゃのりがいいしドライブ感がすごい!オリジナルのレトラもいい。言葉がはっきりきちんと聴こえてくるのもいい。
そう、彼はシンガーソングライターならぬカンタオールアウトールなのである。
2曲目はイスラエル・ガルバンの闘牛をテーマにした作品「アレーナ」のタンゴ。
最初の部分はミゲル・ポベーダの、後半はアルフレドの音楽だというが、ゆっくりとしたリズムでしっかりきかせてくれる。
続くはカンテ・デ・レバンテもオリジナルのレトラで、僕は好きに歌いたい、と訴える。
伴奏のギターが美しく彩ってしっとりきかせる一曲。そう、カンテのアルバムって伴奏とのバランスもポイントです。
高い音も深みを失うことなく見事にこなしているのはさすが。
再びのブレリア。1曲目と比べると今度はかなりゆっくりめ。でも落とすところや曲がるところがいやー、巧い、うまい。
最後の趣が変わるところも自然でいいし。
マラゲーニャも彼の美しい響きをもった声によく似合う。これもギターが最高。
彼といい、テレモートといい、今、マラゲーニャに注目!なのかも。
古いマラゲーニャをもちろんベースにしているのだけど、彼らしさ、というのがでているんだよね。お見事。
お手本通りというだけでない熱唱です
アレグリアスもカディスの町の風が香って来るような感じ。リガールという、つなげ方がめちゃうまい。
メリハリも利いていて、踊り手でなくても踊りだしたくなってくるような感じ。
7曲目。ミロンガ風にはじまってブレリアになる。これも彼の声質とよくあっている。歌い回しのうまさも特筆もの。
8曲目はゲストのフェルナンド・デ・ラ・モレーナのトリージャにはじまるソレア。二人で歌い継いでいくかたちはフィエスタの雰囲気。二人は声質も、キャリアも、年代も、何もかも違うわけだけど、ヘレスはヘレス。
フェルナンドもいいが、ダビの熱唱も決してフェルナンドに負けてない。
こういうのを聴くとやっぱフラメンコはヒターノもパジョもないねえ、結局はフラメンコは愛。
フラメンコ好きは皆ファミリー、って気になるのでありました。
最後のトナーはシギリージャ風に終わるのが面白い。古いカンテなのに彼が歌うと古い中にも新しさがきこえてくるのが、これまた面白い。
というわけで、古いフラメンコを愛し学び、自ら新しい息吹を吹き込んでいくダビ・ラゴス。
2年前、このCDは録音にも入っていなかったのに、批評家協会の新人ディスク賞を授賞したというエピソードもあるダビ。
(リストにあった名前をみてCDを聴かずに投票した人が多かったってことですね)
デビューアルバムとは思えない、すばらしい出来のアルバムでございます。
カンテ好きはぜひ1枚!
ちなみにこのアルバムの発表記念ミニコンサートの模様はこちらのブログ、フラメンコ最前線で
http://noticiaflamenca.blogspot.com/2009/12/blog-post_07.html