goo blog サービス終了のお知らせ 

イチョウの下のよもやま話

埼玉県深谷市にある
吉祥寺の住職のブログ

向島不動堂の水神祭

2013年07月02日 | 日々之法話
毎年 7月1日は 
向島(ごうそ)にある吉祥寺不動堂の水神祭です。

向島地区の役員さんたちにお世話になって
不動護摩を焚きます。



今年は 私の実家のお寺で法務があるため
法嗣・善貴に代務させていただきました。

住職として 昨日の護摩の修法をお勤めできませんでした事を
お詫びいたします。



法嗣に 私が書いたものを渡しておき、
それを読む事で 今回の法話に代えさせていただきました。

今日は その法話を こちらでご覧いただく事にします。






さて、本日は 水神祭りの 護摩修行です。



この、水神というのは どんな神様かと言うと、
2方向の考え方をしなければなりません。



まず、第一に、仏教由来の考え方です。



仏教では 水神とは言わず、
水天という事が多いようです。

インドの言葉であるサンスクリット語では
「ヴァルナ」と言います。

神様の中の種族でいうと、阿修羅神に属します。

阿修羅さまは 後に戦いの象徴になっていきます。



ヴァルナ神は、その起源をたどると、
古代においては インド・ヨーロッパ語族の中で、
天空の神であり、
具体的には、大宇宙の運行を司り、
これに逆らった者を 腹水病にしてしまうと言われていました。



やがて、ヴァルナ神は ヒンドゥー教に取り入れられ、
水の神様として、
特に 西の方角の守護神となりました。

更に、ヒンドゥー教の西方守護の水の神様ヴァルナ神は
仏教にも取り入れられて、

閻魔天や毘沙門天と肩を並べる十二天の一尊になりました。



また、森羅万象の五つの要素のひとつである五大のひとつに置かれ、

色彩は白色、
感覚は味覚、
身体器官は舌根(ぜっこん、舌)、
心の有様は信心、
方角は西、
インドの世界観の嬰陀尼国(えいだにこく)を領地とする、
とされました。



そのお姿は、五匹の龍のうごめく冠をかぶり、
海中で 左手に 人々を助けたり打ち敷いたりする羂索を、
右手には 剣を持ち
(お不動様と同じですね)、
大亀の上に坐っている図像、絵画があります。






第二に、日本古来の水に対する尊敬と畏怖、
畏れ敬う信仰から生れた考え方です。



水田農耕民族である日本人にとって、
水は その状況によって 豊凶が左右され、災害を起す、
非常に重要な存在でした。

それだけに、多種多様な祀られ方をします。



たとえば、水田とのかかわりから、
用水堰や 水田のほとりに 田の神として祀られたり、

山中の川の水源地に 
山ノ神(水別神、みくまりしん)として祀られたり、

井戸神様になったり、

疫病除けの祇園神と習合したり、

水に関わる時期と場所には 
必ずその神様である水神様が 祀られています。



日本の水神様の象徴的なお姿は、龍・蛇。

そして 水神様の子供が 河童です。

昔から、日本の各地に、
水神様が蛇になって現れ、人間の女性と結ばれ、
河童が生れた、

或いは その家の家系が栄えた、

当該の地を 平和に統括した

等々の言い伝えは 枚挙にいとまがありません。



つまり、これらの物語は 水神の神聖さを強調し、
この神に対する人々の畏怖の念を表し示した事例
と言えるかと思います。






さて、日本の祭は、
<月遅れ>を意識しながら考えなくては なりません。

そうしないと、
本来 お盆準備の「棚幡」(たなばた)の行事を、
8月お盆の地方で 7月7日に「七夕(たなばた)」と称して行なったり
等の つじつまの合わない事になってしまうからです。



向島の水神祭は、本来 お盆を半月後に控えての 雨乞いのお祭です。

月遅れ8月お盆を考えた場合、
8月1日頃は 梅雨もとうに明けて、
むしろ 日照りの水不足が心配な時期になっています。



お盆は 御先祖様が帰って来ます。

ご先祖様は、
やがて 氏神様から あらゆる神的存在になっていきます。



遠いご先祖様である龍神・蛇神・河童さんに、
お帰り下さるその前に、
あの世である天国から 我々のこの世に恵みの雨を降らせてくれる事を
お願いしよう、という事です。

もちろん、利根川の水難事故防止を祈る事も
水神祭を行なう意義のひとつでしょうが、

主としては、
雨乞い、恵みの雨を求める祭が 水神祭である事を忘れないで欲しいものです。






最後に、皆様のご健勝を 心より祈念申し上げます。 

ありがとうございました。