駒澤大学に入ってすぐ表参道の裏手にあった小さなレストランでアルバイトをしていた。
西部音楽愛好会というサークルに入って、Bluegrassを始めた頃、練習日とアルバイト日が合わず困っていたら、先輩が別のアルバイトを紹介してくれた。
そこは西麻布にあった「タイムトンネル」というカントリー音楽のライブハウスだった。駒澤大学に入学してから、渋谷、表参道、そして今度は西麻布へと、川口から出たことがなく一番近い都会が赤羽だった私にとっては見るもの聞くもの新しいものばかりですべてが驚きだった頃だ。初めての都会でのバーテンなんて仕事に戸惑いながらも行くたびにプロの演奏が聴けるのはうれしかった。Bluegrassのバンドもあったし。お店のメインでやっているカントリーのバンドがあって、そのバンドに当たることが多かった。それが「三田ひろしとCrokes Road」だ。不慣れなバーテンにとても優しくて、音楽の話やいろんな話を聞かせてくれてうれしかったなあ。唄がとてもよかった。お店がなくなる最後の日も三田さんと一緒だった。何時になってもお店が開かず、階段でずーと待っていた。結局店長は現れず、お店もそれっきりになってしまった。その後の三田さんはカントリー界の若手No1として売れっ子になった様子。私にとっては大学入った頃のとても大事な懐かしい思い出であり、最近になってどうしてるかななんて、Web検索してたら、おっ、まだ唄ってる!高田馬場ローンスターカフェで。行ってみることにした!

いや~、懐かしかった!長い髪と髭はもうないけど歌声は間違いなく三田さんだ!唄は丁寧だしうまいし、いい声してるし円熟味があるよね~! 休憩の時にタイムトンネルの話をしたら、私の事は覚えてなかったけど懐かしくお話できた。「何が好きなの?」って「Hank と Jimmy」と言ったらたくさん唄ってくれた。ヨーデルもね!「あちこちでやってるんですか?」って聞いたら「勘弁してよ、もう72だよ!」って。そうは見えないけど今はローンスターカフェで月1回と他で月1~2回だそうだ。唄、良かったなあ~。また来よう!
余談だが、タイムトンネルに颯爽としてクールな感じの女性が良く来ていた。いつもすっとお店に入って来て奥の席にひとり座り、煙草に火をつける、カッコいいなあ、なんて思っていた。この女性がやがて、神保町にBluegrass Innというお店をだし、私も少なからずお世話になることになる。亡くなられたのがとても残念だが、タイムトンネルの懐かしい思い出のひとつ。