ゆるふわ屋。 - 鏃キロク・若林浩太郎のブログ -

シナリオライター若林浩太郎のblogです

二次創作 ストリートファイター4 ザンギエフの章

2015年06月11日 00時00分00秒 | 二次創作
ストリートファイター5が発表されましたね。

というわけで、珍しく二次創作のショートストーリーを
貼ってみようと思います。

ショート、というには長すぎる気がしますが(苦笑)


書いたのは、ストリートファイター4がゲームセンターで稼働し始めた頃。
Wikipediaを見る限り2008年頃らしいです。


なんとなくで書いて、友人に読んで貰って
そのまま放っておいたのですが
「スト5が出たら、出す機会が失われる」と思い
供養する感覚で載せる気になりました。


長いので分割しておきます。


その1「ザンギエフという男」

その2「強敵」

その3「鋼の意思」


いま読むとチョット恥ずかしいんですけどね(笑)

荒削りながら、いいところもあるかなと個人的には思ってます。

その1 「ザンギエフという男」

2015年06月10日 23時20分00秒 | 二次創作
中国、ベッドタウンの一角。
一般人で活気付く市場で拳と拳を交える二人の姿があった。

「ハイィイーッ!!」

威勢のいい掛け声と共に繰り出される蹴り。

「ぬぁあッ!?」

チュンリーの蹴りがザンギエフの後頭部にヒットし、
ザンギエフがよろける。

「さすがにタフね」

決め技の百烈脚を出すチュンリー。
その嵐のような蹴りの中を進んでくるザンギエフ。

「取った!!」

掴み、そのまま得意の投げ技へ移行しようと
体位を入れ替えようとした、その時。

「フッ……ハァッ!!」

逆に腕を取られ、きめられていたザンギエフ。

ギブアップを勧めるチュンリーに対し力ずくで起き上がるザンギエフ、
チュンリーを再度つかまえようとするが既に空中にいる。

空から奇襲されるも、それに対応しようと
蹴りを掴まえるザンギ。

「今度こそ!」

だが、またしても投げは抜けられてしまい
逆に豪快な投げを決められてしまう。

頭ごと地面(コンクリートではない)に突き刺さるかたちで
気絶しKO負けを喫したザンギ。

気付くとチュンリーに介抱されていた。

「も、もう一勝負……!」

そう懇願するザンギに、困惑するチュンリー。

「ねえザンギエフ、あなた何の為に戦ってるの?」

「決まっておる、国家、そして」

「もうないわ。……あなたの愛した国も、敬愛する大統領も。
 あなたを尊敬してやまないレスリングサイドの子供達も……」

ソ連崩壊後、
政府主催で行われていた興行はなくなり
ザンギエフはレスラーとして試合に出ることはなくなった。

一般の団体に入り勝負するも、
人並み外れた強さにカードを組んでもらえず、
また予定通りのマッチ(試合)を行わないスタンドプレイに
興行主が激怒、ザンギエフは表舞台から姿を消す。

「私はまだ戦える。それはチュンリーも分かっているはずだ」

「分かる。……でもね。
 時代は変わったの。
 あなたの自慢の技も、もう……」

自信があった。
路上では自分こそ最強だという自負が、崩れかけていた。

「私のレスリングスタイルが通用しないというのか」

「何回、いいえ。何十回と戦ってきたあなただから、分かるの。
 実直すぎるのよ。
 ……同じ軌道、同じ位置、同じ力の入り具合、
 何もかも変わらない。私が頭で理解するより早く、身体が対応できるから。
 …………。
 あなたの投げはもう、私には通用しない」


結局、チュンリーとの再戦はならず
ロシアへ帰国するザンギエフ。

極寒のシベリア、飽きもせず続く吹雪の中、
いつも修行してきたロッジに到着する。

カンテラに火を灯し、
横になる。ザンギエフの今の寝床はここだ。

私の技はもう、通用しない……?

目を閉じると時差の疲れか
ザンギエフは熟睡することができた。

翌日、いつも技の練習につきあってくれた
野生のクマに出遭う。

「いつも済まんな……」

コートを脱ごうとした時、
クマが後ろを向く。

「……!?」

躊躇していると、その脇から
つがいらしきメス熊と、もうけた小熊の姿があった。

「そうか……おめでとう」

野生の動物と人間、
その領域を超えた友情を分かち合った一人と一匹。

今度は一定の距離を保ち、
少し離れたところで方膝をつき、
互いの目を見詰める。

頷くザンギエフ。
するとクマ達は去っていく。

「……時代は、変わった」

コートの端を掴む手に力が入る。

引退、それはザンギエフの今までの人生を否定する道だった。
その文字が頭をよぎるなど、考えたこともなかったのに。

小屋に戻り、
その日の食事をとるザンギ。

明日は買出しに行かねばならない。
だが、その次は?
手持ちのお金はもう殆どない。
銀行に預けた蓄えなど、とうに尽きている。

潮時なのか?
ザンギは眠れぬまま夜を過ごした。

その2 「強敵」

2015年06月10日 23時10分00秒 | 二次創作
翌日、街にやってきたザンギは
そこで思いもよらぬ顔を見ることになる。

「リュウ……!」

薄汚い胴着、赤い帯、そして何が入っているのか分からないバッグ。
泥臭く、すす汚れていて、何も変わっていない。

「どうしてここへ?」

リュウは真っ直ぐ、ザンギの目を見詰めて言う。

「お前に会いに来た」

とまどうザンギに、リュウはもう一度いう。

「俺と戦ってくれ」

ザンギは持っていた大きな大きなバッグを地面に置いた。

リュウも然り。

二人の周りの空気が一変する。

もともと目立つ容姿、格好の二人。
遠巻きに見ていた人々がある一定の距離を保って集まりだしていた。

「……いつ始める?」

リュウが笑った。

「もう始まっている」

踏み込むリュウ。

コートを脱ぎ捨てたザンギの顔に、
リュウのパンチがヒットする。
容赦も遠慮もないその攻撃に、自分を慰めにきたのでは? という疑念が
払拭される。

満面の笑みでボディブローを返すザンギ。

「ぐっ……! やるな」

リュウも心底嬉しそうにしている。

ザンギは心の底から喜んだ。

これだ! 私が求めていたものはこれなのだ!

(中略)

戦いの最中、
かつてケンと話したことを思い出すザンギ。


ケン
『あいつ……きっと、気付いてないんだろうなぁ』

ザンギ
『?』

ケン
『自分より強い奴に会いに行く、だなんて言ってるけどよ。
 自分が、相手を強くしちまってるんだ、ってコトさ』

その時は分からなかった言葉の意味が、
今のザンギエフにはハッキリ分かる。

私は誇りに思う。
お前と出会えたこと、
お前と戦えることを!

「波動……拳ッッ!!」

「ぬぅぅう~~ッ……ンンッ!!」

バニシングフラットで掻き消し、砂煙の中、
互いの距離を感じる。

リュウを掴んだザンギエフ、
空中に舞い上がる。

スクリュー……ッッッ!!!

回転、きりもみ、
下降、
加速……!

パイルドライバー!!

地面にたたきつけられ、跳ねるリュウの身体。

「こらーっ!
 何をやっている!!」

警察がやってくるが、
二人の姿を見て立ち止まる。

「な……っ、なんだアイツらは」

勝利を確信したザンギエフが勝ち名乗りをあげようと
手を挙げた瞬間。

地面に突き刺さっていたはずのリュウから、
おびただしい殺気を感じる。

その場にいる誰もが死を予感する程の殺気。

凄まじい勢いで地面から吹き上がる拳。
回転しながら突き上がり、ザンギエフを空中へ舞い上げる。

昇!
竜!
拳……ッ!!

「ぐ……ッ、あああっ」

ダウンしたザンギ。
昇竜拳を放ったリュウも、そのまま倒れ掛かり、
身体を片手で地面にそえる形で前屈みになって荒い息をついている。

「はぁ、はっ……あぶない、ところ、だった……!」

「い、今のは一体……なんだ?」

起き上がるザンギエフ。

二人が歩み寄る姿を見た観衆が、
盛大な拍手を送る。

「こ、これは……?」

「さあな。お前のファンじゃないか? なにせ、ここはお前の国だから」

「私の……?」

周りを見渡すザンギ。
リュウが朗らかな笑顔で観衆を見やる。

その時だった。

観衆の間を抜けて警察官が入ってきたのは。

「こらお前らーっ!! 何をして……」

雷鳴が轟いた。

警察官の身体が見えなくなる。
リュウとザンギエフは本能的にそれをかわしていた。

滅殺!!

空中から強襲する一つの影に吹き飛ばされ、
意識を失う警察官たち。

「ヌルい……ッ、ヌルいワッ!!」

「お前は!!」

拳を握るリュウ。

「殺意の波動……なぜ抑えこむッ!
 貴様ならば、あるいは……あるいはッ!!」

独特の構えで立つ豪鬼。

黒い炎に包まれた男の体の中で、赤い目だけが爛々と光っている。

「俺は、俺の道を往く!
 お前が行けなかった道を……!!」

「笑止ッ!!」

リュウのそれとは違う、嵐のような竜巻旋風脚。

周りにある人、物、全てに影響を与え、
分け隔てなく殺意を振りまく。

「うわああああッ!!」

「きゃあああ~!!」

巻き込まれる人々に駆け寄ろうとするザンギが、
背後からの悲鳴に立ち止まる。

「ぐ……ッ、ああああ…………ッ!?」

深々と突き刺さるようにリュウの腹に入った豪鬼の拳。

滅ッ……殺!!

豪! 昇!! 竜っ!!

巻き起こる竜巻。

まっすぐに下に落ちてきて、ボロ雑巾のように転がるリュウ。

「拳とは相手を屠るためにあるものッ!
 勝てずして理を語ろうなど……!!」

起き上がろうとするリュウの脚を踏み砕く豪鬼。

「~~ッッッッ……!!」

豪鬼の瞳がザンギを見据えた。

「まだおったか……雑魚がッ!」

「ザン、ギエフ……逃げろ。こい、つは……ぐ、うぅっ」


逃げる?

ザンギエフの心臓がバク、バクと高鳴る。

この私が、逃げる?

噴ッ……豪波動拳!

きゃあああ!!!!!!

ぬあああ!?

「ふしゅうううッッ!!」

スチームのように蒸気を吐き出し、ザンギエフがゆらり……と立っている。



背後にいる観衆がザンギエフの巨体を盾にして、震えて座っている。
いや、動けないのだ。


「ざ、ざんぎ……えふ」
「!?」

腰を抜かした少女が、涙を目に一杯溜めて、見上げている。

「たす、た……助けてぇ……!」
「任せろ」

その3 「鋼の意思」

2015年06月10日 23時05分00秒 | 二次創作
「……死ねッ!!」

豪! 波動ッ!!

燃え盛る火球がザンギの身体をとらえ、爆発が起こる。
舞い上がる砂煙、エネルギーの粒子が火花を散らして消えていく。
その煙の中にゆらり、と立つ男の姿。

そのまま豪鬼に掴みかかり、得意の投げを仕掛けようとした瞬間。

「…………ッ!? ぶ、ぉおッ……ご、ぱッ!!」

鋼を何枚も重ねたようなその筋肉に
沈み込むように入った豪鬼の拳。

「塵と消えよッ!!」

豪! 昇竜ッ!!

吹き飛ばされ、したたかに全身を打ち付けるザンギ。

顔を覆う観衆。だが立ち上がるザンギ。

「ぬンッ……!!」

『滅殺……!』

閃光が豪鬼の拳に集まっていく。

ザンギエフ(もう……何も要らないッ)

『豪波動!!』

エネルギーの奔流が豪鬼の腕から放たれる。

国家の威信も!

光の渦がザンギエフに迫る。

仕える相手も!

「ザンギエフ!!」

リュウ、動けず地面の上でうつ伏せになったまま
顔だけ上げて叫ぶ。

もう何も要らないッ!!

「ぬぅ……ッ!?」

全身から滴り落ちる鮮血。
だがザンギエフは立っていた。

「褒めてやるッ!」

竜巻旋風脚!

棒立ちのザンギエフ、くらう。
だが倒れない。

「もうやめて! やめてぇえ!!」

観客の一人が叫ぶ。

波動拳!!

ザンギの腹にめりこみ、ザンギ仰け反る。
だが倒れない。

「こわっぱがッ!!」

空中に舞い、その手から再び滅殺豪波動を放とうとした豪鬼。

ザンギエフがそれを叩き落した。

なんの技でもない。レスリングでも、なんでも。
子供がただ、手をバタつかせたような一撃。

豪鬼が地面でバウンドし、口から血を吐き出す。
そこに追い打ちの一撃……膝ごと叩きつけるような蹴り。

サッカーボールのように転がる豪鬼。

「ザン……ギエフ!?」

もう私には何も要らないッ!!

豪鬼に馬乗りになり、
両腕で殴りかかる。右拳、左拳、両手で叩きつける。

たまらず豪鬼、腕から波動拳を出すが、
その衝撃波はザンギの身体を貫通するも動きを止められない。

「さかしいわぁッ!!」

噴き上げる一撃、昇竜拳がザンギの顎をとらえる。
誰もがダメだと思った、のに。

伸びきったその腕をザンギが掴まえている。

そのまま豪鬼の顔にヘッドバット! ヘッド! ヘッド!!

「ぐはぁあああッッ!!」

豪鬼の歯の欠片が飛び散り、リュウの目の前に転がる。

「……おおっ、おっ……! ぉおおおお雄雄雄雄雄雄雄ッッッ!!」

豪鬼が力を振り絞りザンギの手から
竜巻旋風脚で抜けて、
地面に降り立った瞬間。

「終わりだッ!!」

滅殺!! 豪ッ……螺旋!!

吹き上がる竜巻旋風脚。

今まで最大級の竜巻が起こり、ザンギエフが蹴られながら巻き上げられていく。

その場に居る誰もが息を呑んだ次の瞬間。

「竜巻が……止んだ?」

リュウがハッとして上空を見た。

「逆回転!!」

回転したままの豪鬼を掴んで、そのまま回転していたザンギエフ。

何も言わず、そのまま地面へ投げて叩きつける。
高いところからボールを投げる子供のように。

降り立ったザンギエフ、全身に力を込める。

立ち上がって構えようとした豪鬼に、
ザンギは、そのまま弓なりに引いて振りかぶった子供のようなパンチ。

ただ力まかせの一撃。

ゴロゴロ……と重い岩が転がるようなごとき様。

そして豪鬼はピクリとも動かない。

「ふぅ……ッ! ふぅぅ……ッッ!!」

猛るザンギに手を伸ばそうと、リュウが立ち上がる。
片足を引きずって。

「やめろ、ザンギエフ!!」

軸足を失った、力のないパンチがザンギの顔に命中する。

ダメだ、そんなのじゃ……。
そう一同が思ったのに。

「リュウ……。私は今まで何を?」

「ザンギエフ、よかった」

「あの化け物は?」

「あいつは……。あっ!!」

姿を消している豪鬼。

「逃げた、んじゃないか。この国のヒーローに恐れをなして」

ハッ、と戦いの記憶が蘇るザンギ。

「私は、我を忘れて……」

……そうだ。
私は国を、民を、親愛なる友人を捨て……何もかも捨てたのだ。

茫然自失としているザンギの肩を叩くリュウ。

「見事なスクリューパイルドライバーだったな」

「……? なんのことだ」

「アイツの竜巻旋風脚を止めたのは、間違いなく。
 お前のスクリューパイルドライバーだったよ」

「私の……?」

割れんばかりの拍手、駆け寄る観衆。

抱きつく女性までいる。

どうしてだ?
私は、お前達を捨てようとまで思ったのに……。

「覚えてますか、ザンギエフ?
 私、子供の頃にサインをもらった……!」

ハッ、とするザンギエフ。
幾百、幾千もの子供にサインしたのだ、覚えているはずがない。
なのに、彼の目の中には子供時代の女性が映っている。

「ああ……。覚えているとも」

「リュウ」

「なんだ?」

「あれは……私がまとった、あれはなんだったんだ?」

「……分からない。
 俺も、かつて一度あれにとりつかれ、拳を汚したことがある」

「お前まで」

「全てを捨てても、勝ちたいと。
 何もかもなぎ倒してでも、奪い去りたいと。
 その思いが生み出す、破壊の衝動……そんなところか」

グローブの、手の甲の部分をザンギの胸にコツン、と当てるリュウ。

「……よく帰ってきたな、ザンギエフ。
 お前にはやっぱり、レスリングが似合ってる」

捨てようとしたのに。
それでもお前は……私を。
守ってくれたのか?

自らの内に眠る歳月に、流した汗に問いかけるザンギエフ。

「それで?」

見ていた子供が問いかける。

「どっちが勝ったの?」

「そりゃあ、もちろん」

リュウが笑い、ザンギの手を掴む。

「悪役(ヒール)を撃退した方が勝者に決まってるだろ?」

手をあげられ、ポカーンとしているザンギエフ。

「ウン!!」

嬉しそうに頷く子供。

「ほら、勝者は勝者らしく」

リュウにそういわれ、ニヤッと笑うザンギ。

両手をあげ、
「ダアアアアアアッッ!!」

得意の勝ち名乗りをあげる。


その後、ザンギエフは
レスリング団体の用心棒として勤務することになった。

「ど、道場破りだ!
 ザンギさん、道場破りがきたよ!」

新人レスラーが青ざめた顔で駆け込んでくる。

「そいつはもしかして、これのことか?」

ノビている道場破り。

口をあけたまま固まる新人レスラー。

「私はチョット出かけてくる」

「えっ? どこまで」

「決まっている。……ライバルが待つ場所にだ」


(エンドロール)


アメリカの、とある空軍基地。

「ソニックブーム!」

「フンッ!」(バニシングフラット)


スペインの闘技場。


「ヒョオオオッ!!」(バルログ)

「うぉおおおっ!!」(エリアルロシアンスラムでバルログの身体をつかむ)


ストリートファイター達よ……
永遠なれ!!

THE END