ゆるふわ屋。 - 鏃キロク・若林浩太郎のブログ -

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その3 「鋼の意思」

2015年06月10日 23時05分00秒 | 二次創作
「……死ねッ!!」

豪! 波動ッ!!

燃え盛る火球がザンギの身体をとらえ、爆発が起こる。
舞い上がる砂煙、エネルギーの粒子が火花を散らして消えていく。
その煙の中にゆらり、と立つ男の姿。

そのまま豪鬼に掴みかかり、得意の投げを仕掛けようとした瞬間。

「…………ッ!? ぶ、ぉおッ……ご、ぱッ!!」

鋼を何枚も重ねたようなその筋肉に
沈み込むように入った豪鬼の拳。

「塵と消えよッ!!」

豪! 昇竜ッ!!

吹き飛ばされ、したたかに全身を打ち付けるザンギ。

顔を覆う観衆。だが立ち上がるザンギ。

「ぬンッ……!!」

『滅殺……!』

閃光が豪鬼の拳に集まっていく。

ザンギエフ(もう……何も要らないッ)

『豪波動!!』

エネルギーの奔流が豪鬼の腕から放たれる。

国家の威信も!

光の渦がザンギエフに迫る。

仕える相手も!

「ザンギエフ!!」

リュウ、動けず地面の上でうつ伏せになったまま
顔だけ上げて叫ぶ。

もう何も要らないッ!!

「ぬぅ……ッ!?」

全身から滴り落ちる鮮血。
だがザンギエフは立っていた。

「褒めてやるッ!」

竜巻旋風脚!

棒立ちのザンギエフ、くらう。
だが倒れない。

「もうやめて! やめてぇえ!!」

観客の一人が叫ぶ。

波動拳!!

ザンギの腹にめりこみ、ザンギ仰け反る。
だが倒れない。

「こわっぱがッ!!」

空中に舞い、その手から再び滅殺豪波動を放とうとした豪鬼。

ザンギエフがそれを叩き落した。

なんの技でもない。レスリングでも、なんでも。
子供がただ、手をバタつかせたような一撃。

豪鬼が地面でバウンドし、口から血を吐き出す。
そこに追い打ちの一撃……膝ごと叩きつけるような蹴り。

サッカーボールのように転がる豪鬼。

「ザン……ギエフ!?」

もう私には何も要らないッ!!

豪鬼に馬乗りになり、
両腕で殴りかかる。右拳、左拳、両手で叩きつける。

たまらず豪鬼、腕から波動拳を出すが、
その衝撃波はザンギの身体を貫通するも動きを止められない。

「さかしいわぁッ!!」

噴き上げる一撃、昇竜拳がザンギの顎をとらえる。
誰もがダメだと思った、のに。

伸びきったその腕をザンギが掴まえている。

そのまま豪鬼の顔にヘッドバット! ヘッド! ヘッド!!

「ぐはぁあああッッ!!」

豪鬼の歯の欠片が飛び散り、リュウの目の前に転がる。

「……おおっ、おっ……! ぉおおおお雄雄雄雄雄雄雄ッッッ!!」

豪鬼が力を振り絞りザンギの手から
竜巻旋風脚で抜けて、
地面に降り立った瞬間。

「終わりだッ!!」

滅殺!! 豪ッ……螺旋!!

吹き上がる竜巻旋風脚。

今まで最大級の竜巻が起こり、ザンギエフが蹴られながら巻き上げられていく。

その場に居る誰もが息を呑んだ次の瞬間。

「竜巻が……止んだ?」

リュウがハッとして上空を見た。

「逆回転!!」

回転したままの豪鬼を掴んで、そのまま回転していたザンギエフ。

何も言わず、そのまま地面へ投げて叩きつける。
高いところからボールを投げる子供のように。

降り立ったザンギエフ、全身に力を込める。

立ち上がって構えようとした豪鬼に、
ザンギは、そのまま弓なりに引いて振りかぶった子供のようなパンチ。

ただ力まかせの一撃。

ゴロゴロ……と重い岩が転がるようなごとき様。

そして豪鬼はピクリとも動かない。

「ふぅ……ッ! ふぅぅ……ッッ!!」

猛るザンギに手を伸ばそうと、リュウが立ち上がる。
片足を引きずって。

「やめろ、ザンギエフ!!」

軸足を失った、力のないパンチがザンギの顔に命中する。

ダメだ、そんなのじゃ……。
そう一同が思ったのに。

「リュウ……。私は今まで何を?」

「ザンギエフ、よかった」

「あの化け物は?」

「あいつは……。あっ!!」

姿を消している豪鬼。

「逃げた、んじゃないか。この国のヒーローに恐れをなして」

ハッ、と戦いの記憶が蘇るザンギ。

「私は、我を忘れて……」

……そうだ。
私は国を、民を、親愛なる友人を捨て……何もかも捨てたのだ。

茫然自失としているザンギの肩を叩くリュウ。

「見事なスクリューパイルドライバーだったな」

「……? なんのことだ」

「アイツの竜巻旋風脚を止めたのは、間違いなく。
 お前のスクリューパイルドライバーだったよ」

「私の……?」

割れんばかりの拍手、駆け寄る観衆。

抱きつく女性までいる。

どうしてだ?
私は、お前達を捨てようとまで思ったのに……。

「覚えてますか、ザンギエフ?
 私、子供の頃にサインをもらった……!」

ハッ、とするザンギエフ。
幾百、幾千もの子供にサインしたのだ、覚えているはずがない。
なのに、彼の目の中には子供時代の女性が映っている。

「ああ……。覚えているとも」

「リュウ」

「なんだ?」

「あれは……私がまとった、あれはなんだったんだ?」

「……分からない。
 俺も、かつて一度あれにとりつかれ、拳を汚したことがある」

「お前まで」

「全てを捨てても、勝ちたいと。
 何もかもなぎ倒してでも、奪い去りたいと。
 その思いが生み出す、破壊の衝動……そんなところか」

グローブの、手の甲の部分をザンギの胸にコツン、と当てるリュウ。

「……よく帰ってきたな、ザンギエフ。
 お前にはやっぱり、レスリングが似合ってる」

捨てようとしたのに。
それでもお前は……私を。
守ってくれたのか?

自らの内に眠る歳月に、流した汗に問いかけるザンギエフ。

「それで?」

見ていた子供が問いかける。

「どっちが勝ったの?」

「そりゃあ、もちろん」

リュウが笑い、ザンギの手を掴む。

「悪役(ヒール)を撃退した方が勝者に決まってるだろ?」

手をあげられ、ポカーンとしているザンギエフ。

「ウン!!」

嬉しそうに頷く子供。

「ほら、勝者は勝者らしく」

リュウにそういわれ、ニヤッと笑うザンギ。

両手をあげ、
「ダアアアアアアッッ!!」

得意の勝ち名乗りをあげる。


その後、ザンギエフは
レスリング団体の用心棒として勤務することになった。

「ど、道場破りだ!
 ザンギさん、道場破りがきたよ!」

新人レスラーが青ざめた顔で駆け込んでくる。

「そいつはもしかして、これのことか?」

ノビている道場破り。

口をあけたまま固まる新人レスラー。

「私はチョット出かけてくる」

「えっ? どこまで」

「決まっている。……ライバルが待つ場所にだ」


(エンドロール)


アメリカの、とある空軍基地。

「ソニックブーム!」

「フンッ!」(バニシングフラット)


スペインの闘技場。


「ヒョオオオッ!!」(バルログ)

「うぉおおおっ!!」(エリアルロシアンスラムでバルログの身体をつかむ)


ストリートファイター達よ……
永遠なれ!!

THE END


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