車の旅で鄙びた集落に行ってみた。
人家が四軒という集落であった。
昔はこの集落も二十軒の家があったそうだ。
町まで十キロもある、冬は雪が四メートルも降ると聞いた。
今は静かなになったが、昔は賑わっていた。
田圃で稲作をしたり野菜を作ったりしていた。
農閑期にはお蚕さんを飼っていた、晩秋には炭焼きもした。
毎日が忙しかった。
集落を散策していたらお婆ちゃんと会った。
おしゃべりしていたら、上がってお茶を飲んで行けと勧められた。
やはり人が懐かしいのだろう、お話する相手も欲しいのだろう。
勧められるまま上がりお茶をいただいた。
おじいちゃんは86歳、私は82歳だといっていた。
『毎日何をしていますか』と聞いたら、『おじいちゃんは字を書いている』という。
般若心経を写経していた。上手い筆字には驚いた。
お婆ちゃんは造花や小鳥の模型を作っているという。
『仲の良い夫婦ですね』と云ったら、『そんなこともないよ、喧嘩するのも面倒くさい』
と答えていた。
この集落でも花も咲き、秋には紅葉も始まる。
二人にとってはこの集落がやはり住めば都なのだろうか。