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約束の地をめざして

I STILL HAVEN'T FOUND WHAT I'M LOOKING FORー めぐりあう人々と出来事とともに

香山リカ 「しがみつかない生き方」 を読んで

2009-09-23 07:41:36 | 読書


みなさん、こんにちは。世は誰が名付けたかシルバーウィークですね。僕は試験明け休みですが、いまだ勉強や学生寮内の部屋替え等で、試験期間ほどではありませんが、ゆっくりとは休めない日々が続いています。みなさんはいかがですか。

今日は、現在ベストセラーの本、香山リカ著「しがみつかない生き方 ~『ふつうの幸せ』を手に入れる10のルール」を読んで感じさせられたことを書いてみたいと思います。出版されたのは7月末か8月アタマくらいです。僕の記憶が正しければ、たしか本の売れ行き初登場1位、現在は4位ですね。(毎週日曜日の朝日新聞に掲載されている順位による)

香山リカさんと言えば、確か10数年くらい前から時々よくメディアに登場するようになった精神科医の方である。最近は以前よりはテレビには出ていないような気もするが、こうやって著作がかなり売れているところを見ると、いまだ健在というところだろうか。
なぜこの本がこんなに売れているのか、正確には僕などはわからないのだが、僕が買ってしまったきっかけになったことが、他の購買者でも同じ理由の方も多いかもしれない。それは新聞広告にこの本が出たときに、本の各章の表題が掲載されていたが、その最終章の表題がこういう題であったからだ。

第10章 <勝間和代>を目指さない

これに僕は惹かれた。
勝間和代さんについては、知っている人には説明不要だが、売れ筋の本のコーナーに勝間さんの本は必ず並んでいる。公認会計士で経済評論家だが、今新聞・雑誌・テレビ・ネットあらゆるメディアで活躍している知識人である。僕も昨年彼女の本を読み、その凄まじい彼女の効率能力、効率人生に圧倒された。しかし学べる部分もあって、そのうちわずかは彼女の教えの恩恵に与っている。

(←勝間和代氏)

だが、申し訳ないが彼女の生き方には共感できなかった。(その辺のことは、以前、旧ブログで書きつづったことがあるので興味のある方はどうぞ→http://blog.goo.ne.jp/keizzo-blog/e/7477fb8a1c4fe20035aed0d8e061d8c6)よって、この表題に惹かれたのである。それから朝日新聞の書評も読んでみた。その書評は、香山さんも勝間さんも考え方としてはどちらも真反対、両方とも大々的には支持できない、というような内容であった。
まあじゃあ、自分で読んでみるかと。そんなわけで電車での移動時間を使って読んでみた。

読後感を書くと言っても、これから読まれる方もいるだろうから、内容をセキララに書くわけにもいかないところがむずかしいが、自分なりに書いてみたい。

まずは全10章の表題を書いておく。

序 章 ほしいのは「ふつうの幸せ」
第1章 恋愛にすべてを捧げない
第2章 自慢・自己PRをしない
第3章 すぐ白黒をつけない
第4章 老・病・死で落ち込まない
第5章 すぐに水に流さない
第6章 仕事に夢を求めない
第7章 子どもにしがみつかない
第8章 お金にしがみつかない
第9章 生まれた意味を問わない
第10章 <勝間和代>を目指さない

これでなんとなく、内容は伝わりそうだと思うが、実際にはその内容は読んでみないとわからない。内容は鋭い。少し間延びした感も途中にはあるが、最後まで論点と彼女なりの言いたいことがはっきりしてるので、朝日新聞の書評ほどきびしく読まなくていい。

これは僕がクリスチャンであり、神学大生であるので、興味があったところなのだが、少し前にかなり信憑性のある情報で、香山リカさんがプロテスタントの教会に通い始めたという話を聞いていたので、彼女が問うこの「しがみつかない生き方」にその経験が反映されているかどうかを注目していた。
すると読み進めていたら、本書後半で、どこの教会に通っているかも名前を記した上で、そのことを語っていた。やはりその教会の礼拝にたまに出席しているという。その教会名を見たら、同じ神学大生でその教会に行っている人もいるくらいよく知っている教会であったので、驚いてしまった。

そして聖書の言葉から引用して書いている章もあった(第6章・仕事に夢を求めない)のだが、はっきり言って、言葉としての引用間違いである。聖書自体が語っている文脈ではその言葉は引用されていない。しかし、香山さんなりの聖書の言葉に対するとらえ方とも言えるだろうし、その章自体の論点はブレていないので、それはそれで認められるものだと思う。

全体的な感想では勝間さんより、やはりこちらの香山さんの視点ほうが深い意味での時代感覚と、人間らしさにマッチした内容だと思った。
しかし勝間さんもすべてダメなわけではない。ただ、かなり勝間さん以外の人が実行するには、無理があることにチャレンジすることが書かれている。僕は勝間さんと「カツマー」と呼ばれる勝間さんのfollowerたちは、やがて行き詰るのではないかと思っている。確かに結果は残すかもしれない。しかし、人生、人間、結果がすべてなのか。もし行き詰らないように見えたら、それは心の底で勝間さんや彼らは無理をしている生き方をしているのではないか。

話を勝間和代から香山リカに戻す。香山さんは、わかりやすく現代人が本音のところで思っていることを引き出してきて、よく語っていると思う。そのうちいくつかはいい結論やアドバイズを打ち出していると思う。

(←香山リカ氏)

しかし読んでいて限界を感じた。
だが、僕はこの本を悪く言いたくない。この本はかなり益になる。勝間さんには申し訳ないが、朝日新聞の書評とも違うが、この香山さんの本のほうがよっぽど益になる本だと僕は思った。

この本の益になるのは二つの意味がある。
一つは、本当に益になっている内容があること。
もう一つは、かなり鋭く世の中と人の本音の心を見極めているが、それに対し限界ある答えしか出せていないことである。

個人的には、第1章「恋愛にすべてを捧げない」は正直読んで良かった。この本は人の心にある部分ストンと落ち込む。
ただしすでに述べたように、「かなり鋭く世の中と人の本音の心を見極めているが、それに対し限界ある答えしか出せていない」部分があるのだ。これが現在の香山リカさんが持っている人として精神科医としての限界点なのだろう。ただし限界点は誰しも持っているものなので、それ自体悪いことではない。が、読者としてはそれは物足りない。

それ自体は物足りないが、そこに読者である私たち自身に疑問を残してくれるという点で、この本は貴重なのだ。しかしこわいのは、その香山リカさんのもっている限界点ある答えをうのみにしてしまう方々である。だったらそれはカツマーと同じで、カヤマーを生み出すに過ぎない。

香山さん自身クリスチャンでないのに現在教会の礼拝にたまに集っていると言う中で、香山さんがその中からどのような新たな視点や生き方を見出すか、個人的に楽しみにしている。教会は人と人との集まりではあるが、そこに永遠なる神の存在を信じ、そこで一緒に礼拝をする場であるからだ。
限界点を感じさせた現在の生の香山さんが、限界点のない、永遠なる存在の神に、教会を通じて近づいていくときに、やがて新たに突き抜けた文章をいつか書くのではないかと、思わされているのである。

大変質の高いテレビドラマである「救命病棟24時」(昨日終了)の主題歌「その先へ」は DREAMS COME TRUE の新曲だが、その曲の歌詞の中にこのようなフレーズがある。

「人生の意味なんて知らない
 開き直りでも何でもいい
 眠れない夜の悲しみの海
 出口の見えない暗闇のその先へ」

人生の意味なんて知らない~暗闇のその先へ、と歌われているが、「生まれた意味を問わない」(本書第9章表題)という香山さんが、やがて「その先へ」開かれたメッセージを放つことがあるかどうか、陰ながら関心を持っていたい。(終)


付記

いつも閲覧ありがとうございます。
実はこの半年、東京神学大学で学びながら、このブログを週一回の更新をめざして書いておりましたが、本分である勉強を優先する都合上、今後は週イチではなく、10日に1回程度の更新とさせていただくことにいたします。
日記や散文のようなブログであれば、もっと多い頻度の更新も可能ですが、現在のような内容の文章だと学業をしながら週イチ更新は無理との判断から、これからおおむね月3回程度の更新を基本としてやって行くことにしました。今後も人生の道すがら、立ち止まり、心に留まったことを記していきたいと思いますので、これからもどうぞよろしくお願いします。


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