私は地球で楽しく遊ぶために生きている

心はいつも鳥のように大空を飛び 空に吹く風のようにどこまでも自由に

善人の背中〜10〜

2018-01-11 21:02:15 | ミステリー恋愛小説
翌日、菅田らん子のプライベートを同僚に聞いてみました。
同僚は不思議そうな表情で
「あの人いつも一人で行動してるから仲良くしてる人いないわ。
あなたと仲の良いと思っていたわ」といいます。
「私と?どうして?」
「だって時々2人で休憩スペースにいたじゃない」
そう言われてみれば他人にはそう見えるのでしょう。
「何を考えているのかわからない人だったけど、まさか佐川君を殺すなんて
信じられないわ。二人は付き合っていたという噂も流れているし」
付き合っていたのは私なのに、、、心でつぶやきます。
「男女関係のもつれって恐ろしいわね」
怖い表情をしながら瞳の奥は興味しんしんで輝いています。
キオが死んで様々なことがわかってきました。
貧しい東北の山奥の村で生まれ、小学では村始まって以来の秀才ということで、
村長さんの親戚の家に下宿して、市内の中学に通ったということ。
そして東京の有名大学に奨学金で入ったということも知りました。
キオの育ちの良い雰囲気は、一種の才能でしょう。
何かになりきれる才能。貧しい生活を微塵も感じない品の良いみのこなし。
数週間が過ぎ、キオの話題もなくなってきた頃でした。
ある日、私は上司に呼び出されました。
応接室へ行くといかつい2人の男性が私を凝視します。
こちらは刑事さんだ。佐川キオについて聞きたことがあるそうだ
そう言い上司は出て行きました。
刑事の1人が単刀直入に言います。
「佐川キオさんとおつきあいしていましたね?」


続く…


善人の背中〜9〜

2017-12-21 14:51:11 | ミステリー恋愛小説
キオが殺された?人間は衝撃を受けると思考が停止する
ということを初めて知りました。
呆然自失で立ち尽くしている横で
川田が男性従業員を呼び止めています。
「佐川さんが殺されたって誰から聞いたの?」
「朝、佐川の部署の部長に警察から連絡があったて、
今部長は警察署に行っている」
ランチどころではありません。
私達は、お互いに顔を見合わせた後、
休憩スペースへと足早に向かいました。
休憩スペースにはテレビが設置されています。
えっ!テレビ画面に視線を移したと同時に声をあげました。
画面が見覚えのある建物を写していたのです。
アナウンサーが淡々と事件を伝えています。
その建物はキオを尾行してたどり着いたマンションだったのです。
「マンションの住人の話によると
佐川さんが殺されていた部屋は空室だったということです。
警察は絞殺された佐川さんの遺体から殺人事件と断定して、
捜査しています」
殺意を抱いていた私の替わりに誰かキオを殺してくれた。
そして、あの日、マンションから出てきた
菅田らん子の姿が鮮明に蘇ったのです。
この事件にらん子が関わっている!
私は直感しました。

続く…

善人の背中〜8〜

2017-12-13 18:58:33 | ミステリー恋愛小説
毎日、仕事で会っている菅田れん子を間違うわけがありません。
帽子をかぶり、眼鏡をかけていても、ガニ股に歩く独特な歩き方、
肩をおとしながら歩く姿勢、菅田れん子です。
しかし、なぜ、れん子がマンションから出てきたのでしょう。
もしかしたら住んでいるのかもしれない、そう思いエントランスを入り
郵便ポストへ向い名前を確認しました。しかし、菅田の表札は見当たりません。
ポストに名前を記載してないのかもしれません。
それにしても、意外な人物に遭遇したものです。
その時まで私は菅田れん子のことを何も知らないことに気づきました。
知っているのは、菅田れん子が独身である事、三年前に中途入社してきた事、
時々昼休みに休憩スペースで一緒になることくらいです。
私は今までれん子の家族構成も、前に何をしていたのかも、
まったく興味がなかったのです。
翌日、私は総務課の同僚がイラリアンランチに行くと言うので
ついて行くことにしました。
総務課なられん子の情報を聞き出せると思ったのです。
「珍しいわ。いつも誘っても来ないのに」おしゃべりな川田麻衣子が言います。
川田なら社内の個人情報を知っていそうです。
私と数人の女子従業員は、会社を出ようとした時でした。
異様な大きな声が聞こえてきます。その声の方に視線を向けると、
一人の男性従業員が大声で叫びました。
「佐川キオが殺された!」

続く…

善人背中〜7〜

2017-12-05 18:50:23 | ミステリー恋愛小説
キオのあとをタクシーで追いかけました。
「あの赤いタクシーを追いかけて!」
にやっと笑う運転手は「尾行ですか?」
どうやらゴシップ好きなようです。
こちらとしたら好都合です。
任せてとばかりに、赤い色のタクシーめがけて走り抜けていきます。
街の景色がビジネスビルからお洒落な街並みへと変化していきます。
キオを乗せたタクシーは、有名なブランドビルの横を曲がり走っています。
そして、あるマンションの前で止まりました。
キオは慣れたようにタクシーを降りると、
マンションへと入って行きました。
あたりを見渡すと小さなコーヒーショップがあります。
私は店の中でキオの動向を探ろうと思いました。
しかし、1時間過ぎても出てきません。
珈琲一杯で粘るわけにもいかずお代わりをしました。
運ばれてきたコーヒーを口に運びマンションの方へ視線を向けた時でした。
一人の女性が入り口から出てきます。その姿を見て驚きました。
一瞬人違いだと思いました。
何故ならその女性は菅田れん子だったからです。
昼休みいつも1人でコンビニおにぎりを食べていると、
声をかけてくれる同じ部署の菅田れん子。
何故菅田れん子が??どうして?
私は混乱してしまいました。

続く…

善人の背中 ~6~   

2017-11-15 10:54:54 | ミステリー恋愛小説
私は期待していました。いつかはキオがプロポーズしてくれるだろうと。
人生のすべてがキオ一色になっていた私にとって
キオにそっくりな赤ちゃんを生むことがすべてでした。
信じていました。何度も言いますが、惚れたら負けなのです。
惚れてしまった段階で私はキオに完敗だったのです。
心も体も生活もキオの色に塗り替えられていたことに気付くのが
あまりに遅すぎました。
キオは私の長所でもあり短所の大らかさと鈍感を瞬時に見抜いたのです。
私はキオの意のままの女になりました。
そして少しずつ私は自分の言葉を失っていきました。
私の中にどくどくと流れるように入っていたのは、キオの観念と価値観でした。
慎重すぎる避妊、気ままに求めるセックス、自由な時間に会いに来る
交際を何の疑いも感じませんでした。

ある日の昼休みの事でした。
「キオ君社長の娘とつきあっているらしいわ」
と同僚が言ったのです。
信じられませんでした。信じたくありませんでした。
私だけに向いていたと思っていたキオが裏切るはずがない、
しかし、他の女子社員も
「社長の娘じゃ私達はかなわないわ」と投げやりに言います。
事実だろうか?変わりなく寛ぐキオが私を裏切るわけがない。
しかし、会社ではキオと社長令嬢とのことで持ちきりです。
後でわかったことですが、上司の親戚との見合いは
社長の娘だったのです。
知らなかったのは私だけのようでした。
男性達は「要領のいい奴にはかなわない」とひがみを含んだ口調で言います。
もしかしたら、ほんとのことかもしれない。
私の愛は少しずつ執着へと向かっていったのです。
その日、私は、会社の向かい側でキオが出てくるのを待っていました。
会社から出てきたキオを確認すると私は後を追いました。
私はキオを尾行したのです。



続く・・・