牧師の読書日記 

読んだ本の感想を中心に書いています。

2月9日(日) 「新約聖書通論」 竹森満佐一著  新教出版社

2014-02-09 08:42:42 | 日記
 
 私は本書を新約聖書の「概論的、総論的」なものと思っていたので、少し自分の考えていたものと内容が違っていた。この本はどちらかと言えば、新約聖書の「各論」を扱っている。すなわち新約聖書27巻をおおざっぱに文献学的に説明し解説しているのである。ただ共観福音書(マタイ、マルコ、ルカの福音書)について、福音書の神学、パウロの神学についてなどにも近現代の研究成果を踏まえて書いている。

 ここでは一つだけ取り上げる。共観福音書についてである。新約聖書に収められている順番ではマタイ、マルコ、ルカの順番だが、実際に書かれた順番はマルコが一番先で、マタイとルカがマルコを参考にしたという研究結果である。その他にQ資料というものがあり、これをもマタイとルカが参考にしただろうということである。

 マルコは12使徒の一人ではないので、イエス・キリストと共に過ごすことがほとんどなく、彼が主に過ごしたのはイエス・キリストの使徒パウロとである。このパウロもイエス・キリストと過ごすことは全くなかった。それに対してマタイは12使徒の一人であり、3年間イエス・キリストと実際に行動を共にしている。すなわち直接、イエスの言葉を聞き、わざを見て、生活を共にしたのである。その彼がイエス・キリストと実際に過ごすことがなかったマルコが書いたものを参考にするなどおかしいのではないか、と思ってしまう。

 しかし、私は現代の研究がそれを示しているのであれば、それもあり得ると思っている。でも、マルコの福音書は、マルコが一人で書いたというよりも、マルコの福音書は初代教会の標準的な福音書であって、マルコ独自のものであったと考えるよりもこの福音書の作成にペテロやマタイも関わっていたと考えるのが自然ではないかと考えている。そのマルコの福音書とQ資料を参考にしつつ、マタイとルカは独自にそれぞれが自分たちの視点で福音書を書いていったのではないだろうか。