牧師の読書日記 

読んだ本の感想を中心に書いています。

9月12日(木) 「オレたちバブル入行組」 池井戸潤著  文春文庫

2013-09-12 06:38:35 | 日記

 本書の主人公である半沢直樹を主人公にしたシリーズがテレビドラマ化され、高視聴率を出しているようだ。このドラマを一度も見たことはないが、原作本である本書は面白い。そしてこの人の書く経済小説は経済の勉強にもなる。ヘタな経済の本よりもこの小説から経済について学ぶことは多いと言えるだろう。直木賞受賞作である「下町ロケット」も面白かったのでこの人はコンスタントに良作を出す作家と言える。著者は元銀行員ということなので、本書の舞台である銀行の話にリアリティーがあるのも物語を面白くしている要因だと思う。

 物語は一言で言ってしまえば主人公である銀行員半沢直樹が取引先の粉飾決算をしている会社社長や「手柄は自分のもの、ミスは部下のもの」とする上司など、ズルをして銀行のお金を騙し取っている人たちを懲らしめていく話である。すなわち「やられたらやり返す」のだ。私は人間くさくて好きだ。スッキリとする。分かっていて意地悪やズルをする人間は本当に醜い。

 昨日用事があって役場に行ったが、自分の立場を利用して意地悪をするおなじみの人間がいた。醜いあわれな人間である。このような人間が銀行には多いということを著者はリアルに書いている。そのような人間が多い銀行組織は腐っていて変革が必要であると訴えているのではないだろうか。東京電力もそのような組織の代表格であるのは間違いない。このような人間たちがいると気持ちよく仕事ができなくなってしまう。なぜお互いに気持ちよく仕事ができるようにしないのか本当に不思議である。本書は理不尽さが横行する会社社会で働いている人たちへの応援小説とも言えるだろう。