牧師の読書日記 

読んだ本の感想を中心に書いています。

4月4日(木) 「ネクロポリス 上下」 恩田陸著  朝日新聞社

2013-04-04 06:27:22 | 日記

 本書は、生と死の狭間の世界を描いている。タイトルの「ネクロポリス」だが「死者の街」を意味するギリシャ語のようなだ。日本文化とイギリス文化が混合したような島「V・ファー」。そこの「アナザーヒル」という場所に「ヒガン」の時期に行けば死者に会えるという不思議な設定。そこに行った主人公が様々な事件に巻き込まれていく。簡単に言えばこのような話である。日本とイギリス文化(東洋と西洋)、日常と非日常、生と死、などのテーマ自体は良いと思うのだが、どうも著者の世界観が好きになれない。物語としてはミステリーの要素があったので、楽しむことはできた。

 テーマは何であろうか。私は個人的に「融合」なのかなと思った。文化の融合、宗教(キリスト教と神道)の融合などである。確かに現代は様々なものが融合し、境界線がなくなってきている社会である。最後に一言。著者がこの分野に本気なら良いと思うが、「死者との交流」を扱うのは軽々しくやらない方が良い。著者が霊的な世界についてどの程度の理解があるか分からないが、霊的な領域は危険を含んでいる。