牧師の読書日記 

読んだ本の感想を中心に書いています。

1月7日(月) 「ウォルマートはほんとうに脅威か」 島田陽介著  ダイヤモンド社

2013-01-07 11:18:45 | 日記

 著者は本書で、流通業が価格の安さを追求するのではなく、カスタマーに価値を提案するようにならなければこれから生き延びることがますます難しくなるだろう、と主張している。ウォルマートは、多くの人々に安さを追求して成功したと誤解されているが、実は価値を追求している企業であり、ウォルマートの本当の強さは「安さ」ではなく「カスタマー志向」である、と書いている。ウォルマートは「ビジョナリーカンパニー」で取り上げられていた企業の一つである。 

 本からの引用。「商圏を限定する以上、その商圏のニーズに応える個店発想になるのは当然です。また、商圏を限定するから、その商圏の住民のエブリデイ・ニーズを熟知することができる。」

 その地域に合った毎日の生活で使う日用品(食も含めて)をきめ細かく揃え、同じ人に何度も客になってもらうことに全力を注いでいる。これは人々のニーズに応える伝道が必要である、という「自然に成長する教会」に書いてあった教会の働きにも当てはめることができるだろう。
 

 本からの引用。「業態型がもろにウォルマートのEDLP(Every Day Low Price)の影響で、Kマート1社を残して全滅しました。米国の業界ジャーナリズムも証券アナリストも、ウォルマートの安さに負けた、といいます。ですがそれは、間違いです。業態型の唯一の魅力は、単品の安さだった。ですが単品の「安さ」だけで客を引っ張り続けることは不可能です。コストコは、そのことが分かっているから、「安さ」だけでなく、自力で掘り出し物を探し出す魅力をアピールして、敢えて売り場案内表示を一切つけていません。仮にEDLPを「安売り」だと認めたとしても、ウォルマートは「安売り」の魅力だけで集客したのではありません。ウォルマートもコストコ同様に、「安さ」だけで集客し続けることはできないことを、よく知っていたからです。ウォルマートには、業態型ディスカウント・ストアにない独自アソートメントの魅力があった。それがEDLPと組み合わさったことが、ウォルマートが、目玉商品の「安さ」以外に魅力のない業態型ディスカウント・ストアを全滅させた要因です。」

 ウォルマートはとても安いと思うのだが、安さが一番の売りではなくウォルマート独自の魅力があるのだ、それを安さゆえの勝利であると多くの人々は誤解している、というのが著者の一番の主張だろう。コンシューマー(消費者・国民全部とも言える)からカスタマー(顧客・自分たちの店の商品を買ってくれる人々)に目をむけターゲットを絞ることが大事であるとしている。安い商品を品揃えするだけでは今は生き残れない時代であるということだろう。これは直売にもいえる。安く何でも揃えるような八百屋的なものを目指すのではなく(もちろん安さは追求するべきである)、直売の魅力があるはずだから、言ってみれば八屋というか八〇屋というか、私たちが得意なものまた地域の人々のニーズにあった生産物を揃えるという私たち独自の魅力を出していきたいものだ。それは品数(アイテム)を少なくして成功しているセブン・イレブンにも共通していると言えるだろう。