くつろぎ日記

ストーリーとセリフに注目したドラマレビューです。

「白夜行」第5話  ~したたかな綾瀬はるか~

2006-02-10 16:05:17 | 白夜行

   なあ雪穂。月の裏側には一筋の光もなかったよ。

   ひとかけらの優しさもぬくもりも美しさもなかった。

   だけどなあ雪穂。オレを傷つけて去ることがあなたのやり方だったってこと。

   いつの日も変わらないあなたの優しさだったってこと。

   あのむちゃくちゃなわがままだって一度でいいから幸せな子供のように

   甘やかされたかっただけなんだって。今なら、ちゃんとわかるんだけど。

決別の陰には後悔の涙と、強がりの裏側ににじむ涙と。

わかってほしいとオウムのように繰り返したところでつながるものは言葉ではなく。

 

あの日も雨だった。ベッドに横たわり窓に落ちる雨を見る。裸身の雪穂が重なり、

胸が痛む。そして苦しい。ただじっと雨を見る亮司。

亮司は気付いていた。篠塚と一緒の方が雪穂は幸せなのだと。

激情にかられ雪穂になだれてしまった亮司。その胸には後悔と虚しさとそして嫉妬。

      「何やってるんだ俺・・・」

雪穂のシャワーが済みスカーレットの原作に目が行く自分。やっぱり妬いてるのか。

本なぞ捨てていいという雪穂に自分が死んだ意味を繰り返す。篠塚を忘れなくていい

んだと。既に日の当たらない世界に住む自分。そして榎本の仕事が舞い込んでくる。


ここは図書館。スカーレットを原本で読む雪穂。司書の谷口の声にふと聞いてみる。

「ご主人の他に好きな人ができるってことあります?」友達のことを聞くふりして

さりげなく亮司と篠塚の間で揺れる思いを告白している雪穂。普通に当たり前よ。

10年も20年も同じ気持ちではないわ。ただ・・激しい恋も静かな情に変わるだけよ。

隣の息子にときめくと笑わせてくれながら。


雪穂は背中を押された気分になったのか篠塚を喫茶店で待とうと決心。

偶然を装い会えたらいいなとそんな気分だったはず。104に電話して、ええ~っと・・

ところが偶然はすぐに残酷にもやってきた。篠塚が現れ喜んだののもつかの間、

江利子もやってくる。「も・・もしかして・・」二人を交互に見やり暗くなる気持ちを

必死に押し隠す雪穂。強がりの雪穂。二人に微笑みを見せながらその背中には

しょんぼりした目が追いかけていくのみ。二人は無邪気に並んで帰っていくのに・・・。

 

亮司はゲームを作らねばなりません。園村が榎本との関わりを聞こうとしますが

「詳しく話そうか」という言葉に怯んでしまいます。聞かない方が身のためかも?

「想像するからいいや」「ふっ・・賢くなったな・・」しかしあまりにすり減らし、疲労の

激しさに松浦につい漏らしてしまいました。自分を無視された怒りに激怒する松浦。

「松浦さんよりオレを信用してるみたいだよ」と榎本を匂わせる亮司。脅しと受け取っ

た松浦は「風と共に去りぬ」の本を見て閃く。後悔するなよ。。おい。。。ニタッと。。

 

笹垣は何食わぬ顔をして唐澤礼子を訪ねます。写真を出し、この子の命日だと。

雪穂のメンタルケアをとパンフを差し出します。礼子は雪穂が花をつかんだ瞬間を

目撃しバランスを崩してることを察知していますが笹垣には話しません。笹垣も

柔和な目をしながら決して雪穂の心配などしていないのです。お互いが腹のさぐり

あい。けれど礼子は雪穂にパンフを見せてしまいました。誰にも本音を言わない

雪穂に自分にだけはもっと心を開いて欲しかったのでしょうか。

この親心がふと裏目に出ることも、そうすぐ後にそのシーンは、やってきましたね。

 

ダンス部。部長が何気に江利子に八つ当たり?どうせすぐに捨てられるんだから。

部費の管理簿を押し付けられた江利子をかばい雪穂が変わることに。そのお礼に

と江利子と篠塚から呼び出され、しかし絶望の上塗りとなったこの日。雪穂の太陽は

一点の曇りもないひなたを自然に求めていることをいやというほど知らされました。

江利子が持つ天然の育ちのよさ。自分にはないもの。自分だってそんな恵まれた

両親に囲まれ、大事に甘やかされて育てばきっと、きっと。悔しい雪穂。篠塚は

さらに雪穂の傷をなぞるのです。傘を妊婦さんに貸して自分はさっさと走っていった

江利子の話をして。二人がタクシーに乗り去っていく様に手はぎゅっと握り締め、

目はどんどん強張り、睨み、遠くを凝視して。

その胸にはすでに計画が芽生えていたのでしょう、雪穂。

 

亮司の部屋。雪穂は切々と訴えています。どこかで亮司はわかっていても乗って

やりません。亮司にとって雪穂はまだ自分を求めるどぶに咲いた花だったのかも

しれません。雪穂の考えは間違っている。世の中は不公平だけど人の幸せを奪う

ことなど思わねーよ。だから病院行けばと言ってみた。

雪穂はただ亮司にうんと言って欲しかった?

そうしたらそんな酷いことなど実行に移す前に気が済んだかもしれないのに?

けれど運命の歯車は回ってしまいました。

小さく悲しく微笑み、ついと肩をそびやかして、その内側では崩れそうな雪穂が

音も立てずにしのびやかに涙を流していたとしても。

 

そして松浦からのTEL。タイミングにほくそ笑む雪穂。用件は見なくても知ってるの。

このチャンスとばかり亮司へとTELをします。松浦の携帯で。組むべき相手はアンタ

じゃなかったんだと思った。さよなら、今までありがとうね。翻弄される亮司。

涙で走ります。早く早く早く。逸る心はその場所がどこかすぐにわかったようです。

ふうっ、間に合った。けれど「亮は正しい。正しいことは言われなくてもわかってる。

だけど私はやって欲しいの。」理性ではないの。もう私の中の本能も怨みも悔しさも

全部あの子で払ってほしいの。理屈じゃないのよ。あの子が不幸になったら絶対に

溜飲が下がるわ。生まれながらに持っているものと持たざるもの。この差が私には

我慢できないのよ。おそらく心に血を流しながら亮へと吐き出していく雪穂。中に入り

そして鍵を。絶望だけが亮司を覆ったでしょうか。しょんぼりと力なく座り込む亮司。

しかし何の救いか。松浦は程なく出てきました。面倒くせーよ。泣いてばかりの雪穂

にてこずった様子。今こそ連れ帰ろうとする亮司。けれど雪穂は言わねば気が済み

ません。あの忌まわしい写真でゆすられたこと。この写真など序の口なこと。何度も

フラッシュするその父親とのシーンに亮司は爆発しそうに苦しい。

  「私が間違ってるんだよね。不公平だと思ってるのは間違ってるのだよね。

   人の幸せを壊すのは間違ってるのだよね。

  この写真をみて笑えるようにならなきゃいけないんだよね」

もうどうにもなりません。雪穂は壊れてしまいました。自分の太陽だと思った篠塚が

求めているものは絶対に自分には手の届かないものをもっている江利子を選んだ

のです。容姿や才能や努力やそうやって得られるものではないのです。

篠塚の持つ太陽の本能が江利子の日向の匂いをかぎとっただけ。

亮にだけは言われたくなかった・・号泣の雪穂は暴れ殴り、ただ当り散らすだけ。

  「やってやるよ。

   雪穂の人生、ぼろぼろにしたのオレと・・オレの親父だから・・」

      ・・・呻くように、あえぐように、亮司。

      ・・・すでに雪穂の手のひらの上。

 

江利子はいきなり口に布を押し当てられ、そして計画は実行されました。

亮司は教会にいました。そしてガラスを割りまくり泣き暴れた雪穂を思い出していま

す。ガラスの破片は雪穂の心の破片となって落ちてきたあの日。虚しい自分。

篠塚と雪穂は車で話し合います。あくまで警察に届けるという篠塚。どこまでおめで

たいの。そんなこと誰も望んでないのよ。この私だって。けれど口調は慎ましやかに

友を思う真情に溢れ。一筋の涙を見せながら告げるのです。

 「楽しかったです。今までありがとうございました。江利子からの伝言です」

びっくりの篠塚。この顔を見てちょっとはすっとしたはず。けれど虚しい雪穂。

篠塚の本を投げ、沈む様を呆然と。後悔するだけだと亮司の声が聞こえるのみ。

 
笹垣は古賀の自宅で鍋をつついています。笹垣のノートを弥生子に渡したと

聞いて激怒するが「親心に賭けた」という言葉に少しほろっとさせられてもいます。

あの女に親心なんて良心はないと断定し眉間にしわが。しかし古賀の妻が

親心は自分の子供だけはかわいいという本能だと告げています。

       念仏申せば、八十億劫の罪、滅ぼす

笹垣の執念は二人の行く末を案じるのではなく獲物をただ狙うのみ。虎視眈々と。

 

ラスト。雪穂に亮司は自分が翻弄された顛末を話しています。とっくにそんなことは

わかっていたのに。開き直られてはどうにもなりません。言うことを聞いてくれることを

期待してなかったと言えばウソになる。だけど計算ずくの芝居かって言われたら

違う。・・・どう違うの・・心細げな声に、思わず子供の亮司と重なる・・・

私には亮しかいないんだよ。亮に見捨てられたら本当に一人ぼっちなんだよ。

しかし亮司にはもう届きません。もう何を言われても騙されてるようにしか思えなく

なったんだよ。雪穂のこと信じられないんだよ。

溜息の雪穂。そんなに信じられないならもういいや・・本当は言いたくなかったのに。

  全部計算ならなんだっていうのよ。これまでのこと全部亮が決めたこと。 

  自首しないことも殺しも強姦だって私が頼んだ事は一度もない。

 思わず観葉植物を投げつける亮司に追い討ちをかけるように雪穂。

          亮、騙される方がバカなのよ。

はあはあと肩で息をし、目はすわり冷静さに欠ける亮司。仕方なかったの。

こんなこと言うはずじゃなかった。怒らせることが目的だったのではなくて

蓄積した澱が口を付いて出ただけ。本当に亮だけなのに。どうして狂いだすのか。

こうやって今度こそ離れてみればきっともう私たち、無事に静かにすごせるね。 

      ごめんね、亮ちゃん。ごめんね。

      ・・・ごめんね。

 

 

 今週もかなりはらはらドキドキしました。雪穂の悔しさには同調してしまいますし

亮司を結果的に自分の都合よく操ってしまったことにもおそらく計算ではなく

そういう運命の歯車が回っていたとしか思えません。

先週、自分の気持ちが抑えられなくて身代わりのように亮司を求めてしまったのに、

今週は悪女になり切れてなく松浦との時には泣くだけだったという雪穂が悲しい。

魔性の女として亮司を翻弄しながらも心の底では亮司を求めていることには

間違いはないと見ました。そのしたたかさは子供時代から傷つけられてきた育ち方に

あるのでしょうが、徹底して悪になりきれてないような部分も見えてきます。

ラストで亮司にかなりきつく言い渡し、決別をしたものの、裏腹に泣きながら

謝っています。このシーンは特に私の涙を誘いました。哀れ。

 

 



17 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (miyabi)
2006-02-10 16:25:12
TBありがとうございました。

雪穂怖かったですね。

嫉妬・・・誰にでもある感情だけど

雪穂の場合は強すぎますね。過去の
返信する
Unknown (miyabi)
2006-02-10 16:28:24
ごめんなさい。

途中で送信してしまった。



過去の環境が大きく影響しているわけだけど

それでも、やりすぎ。

本当に悲しい二人です。

切なくなります・・

次週も楽しみです。

TB遅らせていただきますね。
返信する
また読ませていただきました (谷口真文)
2006-02-10 17:20:26
■『くつろぎ日記 「白夜行」 第5話』を読ませていただきました。今回は雪穂が大暴走する話なので、かりんさんが、どうまとめるのか興味がありました。なるほど。(「江利子はいきなり口に布を押し当てられ、そして計画は実行されました」)

第6話もよろしくお願いします。

松浦勇(渡辺篤郎)にそろそろ「天罰」が下りそう。

■『白夜行』(第5話)で一番印象に残ったシーンは、雪穂の携帯電話に電話がかかってきて、発信元は「公衆電話」だったので亮司かと思って雪穂が電話に出ると「松浦と申しますが」という声がした場面です。あれには驚きました。

■『白夜行』(第5話)で私が好きな場面は図書館で雪穂が谷口さんに恋愛相談をしているシーンです。

『白夜行』は殺伐とした場面が多いですが、図書館は別世界(「非武装地帯(?)」)のようでほっとします。

『白夜行』の第1話を見て感銘を受け、初めて訪れたTBS『白夜行』公式ホームページのキャスト(登場人物)一覧に、

「谷口真文(余貴美子)。亮司と雪穂が幼い頃に出会い、その後も何度もそれぞれ訪れることになる図書館の司書。借りる本の内容を通してだが、亮司や雪穂が例え話や多少のウソを通してであっても誰にも言えない心情を吐露出来る唯一の相手。2人を唯一どこにでもいる普通の子供として扱った人。」と書いてあるのを見て以来、注目しています。雪穂と亮司を裏切らないで欲しいと、祈るような思いで毎回見ています。

■では、また来週お会いしましょう
返信する
こんにちは。 ()
2006-02-10 17:27:32
TBありがとうございました(^^)

なんだか、もう雪穂のことを悪女だとか

言えなくなってきました。

胸が痛くなるほど、雪穂の気持ちが

理解出来てしまう回でした。

ラストは・・・泣かされました!

こちらからもTBさせて頂きました♪
返信する
TBありがとうございます! (Nob)
2006-02-10 18:03:28
こんにちは~

TBどうもありがとうございます!

こちらからもTBさせて頂きますね。

亮司と雪穂・・・これからどうなっていくのでしょう。

最後までちゃんと見届けようと思っています(^^ゞ
返信する
初めてみました (オレ様)
2006-02-10 21:42:54
話題のドラマなので、興味をそそられた。

そうかこんなお話なんですねー

本も読んでみたくなりましたー
返信する
Unknown (mari)
2006-02-11 06:22:57
かりんさん、おはようございます。

ひっそり生きていくためではない、嫉妬に狂った

犯罪を亮司に強いてしまった雪穂。

二人はめぐり会ってはいけなかったのでしょう。

振り回される亮司が哀れでした。
返信する
miyabiさん♪ (かりん)
2006-02-11 19:20:10
コメントありがとうございます。

雪穂の嫉妬が大きい理由は自分では努力しても手にいれることのできないものを江利子が持ち、そしてそんな江利子を篠塚が選んだからですよね。

「自分にないもの」ということがポイントなんだと思います。

こんな二人なのでどこまでも罪を重ねるしかないのでしょう。

来週は松浦を殺すのかしら?楽しみでもあり苦しくもありですね。



返信する
谷口真文さま♪ (かりん)
2006-02-11 19:34:16
こんばんは!いつもありがとうございます。



今週の雪穂は嫉妬の嵐でした。どうしても自分で持つことができないものを江利子は持っているわけで、それならば自分がかつてされたように自分と同じ位置に江利子を落としたかったということでしょう。

来週は松浦がはさみで刺されるシーンが見えていました。また一つ罪を重ねていくのでしょう。天罰ですけどね。



そうそうあの電話はびっくりでした。二人の連絡手段が公衆電話を通していることを松浦は知っていたということでしょうか。自分の携帯があるのに。油断させて雪穂に電話にでてもらうということだったのかしらね?



司書の谷口さんが結婚指輪をしていたので安心して相談しましたね。さいごに「ただ・・」と言って濁しました。なんだったのかなと気になりました。先週の谷口さんはスクラップを作っていませんでした?笹垣と

ダブっているシーンで二人のどちらかわからなかったのですが時折厳しい顔をするので二人の何かを知っているのかとも思いました。二人にとってオアシスであってほしいですね。



視聴率がずんずん下がっていますがでも面白いですよね?

返信する
空さん♪ (かりん)
2006-02-11 19:47:30
こんばんは!

空さんは私と同じ雪穂擁護ですね。

雪穂の気持ちがわかってくると何も非難できません。

最語に亮司に泣きながら謝っているのが私にまで伝染しとにかく泣けました。

亮司にはとことんわかってほしいけれど、さて来週はどうなるでしょう。

と言っても雪穂を写真でゆすった松浦ですからね。

必然的にあのはさみのシーンになるのでしょう。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。