くつろぎ日記

ストーリーとセリフに注目したドラマレビューです。

「白夜行」第6話  ~二人の絆~

2006-02-18 08:08:21 | 白夜行

血まみれのコートの亮司。おそらくはさみはその手に握られていたのでしょう。

そしてフィルムケースを出してみた。落ちていたんだとひとことだけ。

    私だってあんな男死んでしまえばいいと思ってた。

    だから・・やったのは私だよ。

はさみを握り締めた子供の雪穂と大人の雪穂。重なるほどに罪はどこまでも深く。

しかし二人は後戻りもできず白夜から逃れられない運命に逆らおうとするのみ。

この手に太陽をつかみたいともがいていくのに。


 

冒頭、古賀刑事は弥生子に聞いてみる。親としてどうなのか。一番の被害者は誰な

のか。弥生子はわかっている。わかっているけれどそれは言ってはならないのだと

知ってもいる。だから息子は死んだのだと伝えるだけ。転勤前に恩を返すという古賀

笹垣はこんな古賀がかわいい。下がった目尻の中に自分の理解者である古賀には

感謝すら浮かんでくるではないか。その後に訪れる悲劇に、このときはまだ気付かず

にいる笹垣。ラーメンにたっぷりかけられた七味を見つめているというのに。

 

昼間の太陽の下を歩きたいという思いが広がるのを感じていた、亮司。

雪穂が泣きながら謝っていたことを亮司は知らない。二人が一緒だと沈み込んで

しまうことに今更気付いた亮司。写真を燃やし、ネガをやはり手に入れなければと。

この考えに取り付かれた亮司は、松浦にとりあえず金を用意し言ってみる。

思った通り一筋縄ではいかない松浦。

  「ネガがなければ縁が切れると思ってるのだろう?」

苦し紛れの亮司。

  「あの女に何かしたら自首するから。全員、道連れだから。」

しかし松浦は脅しに負けません。

  「そうしたら榎本にぶっ殺されるね・・ふふ・・・」

笑いと共に暗示をかけるように、忍び込むように・・・亮ちゃん、知ってるか・・・

    白夜って知ってる?

    夜なのに太陽が出ててさ夜が昼みたいになってさ

    だらだらぐずぐず人生は続いていくってことだよ・・

ふっ・・シニカルな笑いににじませた松浦の人生観。それは亮司、お前もだ、と。

    なあ、雪穂、白夜って奪われた夜なのか?与えられた昼なのか?

    夜を昼と見せかける太陽は悪意なのか、善意なのか・・・

    俺の人生は白夜の中を歩いてるようなものだから

    終わりにしよう。あなたのために。俺のために・・。

終わりにすることで雪穂と離れ、別々の人生を行くのだと。あなたはあなたの行く道を

今度こそ進んで欲しい。俺は、たぶん俺も太陽を取り戻したいと思い始めたのかも。


松浦の仕打ちを園村がおかしいと言い出すのも時間の問題。なぜ亮は黙ってるの

か。松浦の身辺をさぐる園村。凄みのある松浦に殴られる園村ですがようやく本性が

見えたでしょうか。駆けつけた亮司には松浦が園村に告げようとするあの事件が脅

威です。既に松浦の言いなりは決定的。亮司の悔しさが炸裂し握ったこぶしはぎりぎ

りまで痛く。実行するだけだと脳裏に忍び込んだ決意はふくれあがる一方。

亮司は切り絵の人型を頭から切り、また切る。執念ははさみを持つことで持続すると

いわんばかりに。ぽろぽろと落ちる切り取られた破片に宿る怨み。

こんな亮司に園村はあの日の出来事を説明するのです。

そしてわかったこと。

  松浦の生い立ちの記。望まれないで生まれたことが松浦の人生を歪め

  必要のない人間だと言われ続ける言葉の暴力。

  歪められた人格の向かう先は刃物しかないことを松浦はその通りに

  実践したということ。傷害で実刑を受けたあとに亮司の家に入り込んだこと。

切り絵の断片を見つめながら、ここから亮司の人生が狂ってきたのだと亮司は

改めて感じてしまいました。知らないほうが良かったろうか。でも知ってしまったのだ。

殺意はどこまでも高くなるばかり。

松浦は亮司は自分がいないとやっていけないと言ってたという。けれどそれは寂しさ

の裏返しであり、逆に亮司がいなければ松浦はやっていけないことを自覚している

からこその言葉だという園村。園村には亮司の決意が見えていたのでしょう。

   「本当の強さは打たれても打たれても、また立ち上がる力のことだ」

それは間違ってるよと。二人は先ほどの会話を忘れたように銭湯で戯れます。

きっとそうするに違いない亮司を直感のように感じていながらおそらく亮司の

その気持ちにふたをしてしまいました。そうよね・・・園村。

   もう少し粘ってみようと思った。

   たかられても粘られてももう少し歩いてみよう。

   終わらぬ白夜はきっとない。

銭湯で何事もなく過ごした亮司。沸点まできていた殺意が消えたように希望が

見えてきました。終わらぬ白夜はきっとない・・そうであってほしい・・けれど・・・。

 

ここは大学。江利子は立ち直れていません。篠塚とはどうなったのでしょう。二人は

一緒にいることもなく。部活に来いと何も知らない高宮は篠塚から江利子に伝えてと

無邪気に言うのです。能面のような篠塚。冷たい横顔は突き刺すように雪穂を責め

ているようでもあります。そっちこそ友達だろ?江利子に伝えておいて・・・

見透かされている・・雪穂はその目の酷さに戦慄を覚えます。ばれてるかも??

膨らむ疑惑で疑心暗鬼。思わずどうしたかと聞いてみる雪穂。ふっと笑い、関係者

でしょう?嫌味なのか?本心なのか・・。測れないその心。去っていく後姿を凝視する

雪穂。利用できるものはとことん利用していくんでしょうか・・。雪穂、何を考えてる?

ふと前を見れば松浦が。ここにもまた利用しようとするものが。この人だけは生かし

ておけない。雪穂の携帯はいつの間にか篠塚を呼び出し、睡眠薬をと求めました。

 

亮司ははさみを腰につけ、出かける準備。榎本の使いはタイミングよく現れ手入れが

あるからとデータの消去を求めています。松浦にも消去するように言いおき帰りまし

た。電話を留守に切り替えた松浦に亮司の勘は何かを察知してしまいます。

走る亮司。急げと何かが告げています。腰にははさみがあるのに、いいのか?

 

ここは松浦の住処。弥生子にはわかっているのです。松浦が亮司を蝕んでいること

を。フィルムを売って欲しい。しかし松浦はいつもの手管でごまかそうとします。その

様子を忍び込んだ古賀が目撃し逮捕の寸前までいきました。しかしそこは台所。

つかんだ包丁が古賀を一刺し。驚愕の弥生子、一歩も動けません。そして息子が、

亮司が来てしまうのです。開いた胸元を違うと否定しても悲しみの亮司にはもはや

何も見えなかった。ずっとこうしたかったと思う。発作的ではあっても亮司は頭の中

では既に何度も松浦を殺していたのだ。それがたまたま今日になっただけなのだ。

松浦は死ぬべき人間だったのだと。自らに言い聞かせているかのように、亮司。

最後まで亮司の事件をばらさなかったと言いながら松浦は絶えていきました。

その胸にはパスポートをおき、サングラスをかける亮司、弔っているかのように。

 

そして雪穂は亮司と対面します。本当は会ってはならなかった気がする。

けれど二人は離れていることができないのかもしれません。

同じように松浦に殺意を抱き、同じように準備をしていた二人。

雪穂は亮司のはさみを握り、あの日と同じように言うのです。

          「やったのは私だから」

     あなたは俺の太陽だった。白夜に浮かぶ太陽だった。

     たったひとつの俺の救いだった。

二人はただ抱き合い、泣くだけ。亮ちゃんに太陽を返してあげる。どうやって?

今はまだ言えないけれど。嗚咽の亮司。しがみつくように崩れるように。

その腕は雪穂に回されて・・・二人しっかりと。

 

図書館。谷口司書は先日の会話が気になっていました。隣の息子にときめく自分も

それは夫という支えがあるからこそだと。それを聞いていた雪穂は報告に行きます。

友達のよりが戻ったの。傷つけた分、これから大事にすると言ってました。

喜ぶ谷口司書に雪穂は、ありがとうございます、また来ます・・・と。

ふっと笑顔が、こどもの二人を重ねているようです。

 

警察。古賀の死体を前に妻に説明する笹垣。無念はその胸いっぱいに広がり

自分を責めるのみ。恩なんて要らなかった。なぜ自分が動かなかったのだ・・。

力なく座る手にはカップラーメンが七味をたっぷりと、古賀をしのぶように。

     苦悩の故郷を捨てがたく安らぎの浄土は恋しからずそうろう

逃げた松浦はいったいどこに?あの二人はどう関わってきてるのだ。

お前ら許さん・・・・ただ、切々と・・・悔しさと・・・悲しさと・・。

 

ラスト、それぞれの道。亮司は部屋を払いました。交差点に立つ手には軽い

荷物のみ。雪穂はいつものように高宮から誘いを受けています。

どこに連れていってくれるの?妖しい笑みを浮かべて・・・。

       ・・・・そして笹垣は園村に亮司のことを聞き出してしまいました。

    

*****************************
今回もそれぞれが独立してもいいくらいの深い話があり長くなってしまいました。

特に松浦の生い立ちには納得できるものがありこれがあってこその殺人です。

どうしても無視できない内容でした。

ここまでで5千字ぐらいです。お読みくださりありがとうございました。

今週の疑問なんですが亮司は松浦を殺害しましたがその始末をどうしたのかと・・・

警察では松浦は逃亡していることになっていましたね。 

先日の山田孝之騒動で視聴率が上がったかしら(苦笑)

泣きの山田の演技がやはり上手いです。はるかちゃんは今週は悪女の雰囲気が

なかったですね。二人は別々に生きながら陰で結束することになるのでしょうか。

ラストシーンの園村に向ける笹垣の狂ったような目が怖かったですね。

      ・・・執念の目、さすがです。

 



10 コメント

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また読ませていただきました (谷口真文)
2006-02-17 17:56:02
■『くつろぎ日記 「白夜行」 第6話』を読ませていただきました。今回のかりんさんの文の白眉は冒頭の、

「私だってあんな男死んでしまえばいいと思ってた。だから・・やったのは私だよ。」という雪穂のせりふの引用ですね。

私もこの場面が一番印象に残りました。

第1話の西本雪穂(福田麻由子)のあの名場面が蘇りました。

ドラマ『白夜行』も折り返し地点まで来ました。完走するつもりですので、あと5回よろしくお願いいたします。

■>「今週の疑問なんですが亮司は松浦を殺害しましたがその始末をどうしたのかと・・・

警察では松浦は逃亡していることになっていましたね。」

私の家族(←原作は読んでいるがドラマは見ていない)によると、松浦の死体は雪穂の自宅(唐沢家)の庭に埋めてあるそうです。



■『白夜行』(第6話)で2番目に印象に残ったシーンは、紙を切り抜いて作った男性のシルエットを亮司が切り刻むところです。松浦勇(渡部篤郎)に対する強い憎しみがよく表現されていると思いました。

■『白夜行』(第6話)で私が好きな場面は、第5話の、図書館での雪穂の、「友人の」恋愛相談の続きです。第5話では谷口さんが他の館員に呼ばれて中座してしまったのですが、第6話では谷口さんの恋愛哲学(?)が最後まで聞けました。第6話では図書館のシーンがもう1回あり、雪穂が嬉しそうにうまくいったみたいですと、「友人の」恋愛のゆくえを報告していました。

■では、また来週お会いしましょう

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うっ。。 (uranus-planet)
2006-02-17 20:35:12
がーん!

やはり雪穂の家の庭に・・・!

怖い想像をしてしまったと思っていましたが

原作では、そのとーりなのですね。

亮ちゃんはやっぱり殺人犯か(>_<)



ドラマが終わってから原作を読もうと思っていたのですが、

原作はドラマよりもっと怖いのかもしれませんね。

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こんばんわ♪ (くう)
2006-02-17 20:46:57
亮司は自分にとっての太陽を読み間違えてると思うよね。

園村くんが近くにいてくれれば、それだけで

太陽の近くじゃない。。。って気がするけど。。。

園村くんは、今後どうなるのかなあ。

とラスト近くでちょっと不安に思ってしまいました。
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谷口真文さま♪ (かりん)
2006-02-18 15:59:03


いつもありがとうございます。

司書の谷口さんと同じHNにしておられるので図書館の会話には特別にほっとさせるものを感じてるのですね。

>だから・・やったのは私だよ・・

この部分は子供の雪穂と重なりましたね。同じ状況で同じ台詞を言いました。麻由子ちゃんとはるかちゃんをかさねるとどこか似て見えてくるから不思議です。

そして私もここが今週回のポイントだと思いました。



松浦の死体は庭でしたか。何か石みたいなものを置いていましたが、その手で太陽をつかもうとしていましたね。あのシーンが印象的でした。



切り絵の人型を頭から切って落としていくシーンは淡々とした顔つきなのに不気味さが加わり殺意を象徴してました。強い憎しみの表現でしたね。



図書館でのシーンは谷口司書が親身になって答えてくれるところがいいですよね。信頼して自分のことを

話している雪穂と、誠実に答えてくれる谷口さんが

好感度が高いです。おかげで雪穂はまた亮司が必要な人間だとはっきり悟りました。

良かったのか悪かったのか。二人は絆がしっかり結ばれてあったようです。



残り5回ですか。最後がわかっているだけに辛い気分ですがストーリー展開としては十分引っ張ってくれてると思います。



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uranus-planetさん♪ (かりん)
2006-02-18 16:06:29
こんにちは!

庭に何か埋めているシーンはありましたもんね。

石を置いてるようでした。

その淡々とした顔つきで太陽をつかもうとしているところが雪穂らしかったです。

亮ちゃんは結局罪を重ねてしまいましたね。

二人でさらに罪を犯していくんでしょうね。
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くうさん♪ (かりん)
2006-02-18 16:12:11
園村くんが置いてくれた温泉へのチケットはどうなったのでしょうか?

2枚ありましたよね。

表向きの顔を使うときは園村の名前を使うと言ってたのでこれからも園村君は利用されていくのでしょうね?

でも最後のシーンで笹垣にリョウなんて言ってしまい、ばらしてしまいましたから。あの刑事相手ではごまかせないと思うし、二人は離れるかな?
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あぁ・・・ (まこ)
2006-02-18 21:06:31
こんな形で松浦と決別するとは…一度は思いとどまったのに

暗い表情が多い亮司なので、泣きの演技はお手のもの?(笑)

しかし、銭湯のシーンでの笑顔も印象的でした。

もしかしたら亮司の心からの笑顔を見たのは初めてかも・・・
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まこさん♪ (かりん)
2006-02-19 13:32:36
松浦殺害は母を見てしまったために発作的なものですよね?

たまたまはさみを持っていたのが運命を左右したのかも?

銭湯のシーンは無邪気で良かったですね。

いつも暗くておどおどした亮司でしたから園村とのシーンはほっとさせるものがありますよね。

この笑顔を再び見られる日がくるかしら?
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Unknown (まりこ(^▽^))
2006-02-21 12:06:33
こんにちは

古賀が殺されて、笹垣の執念は、また深くなっていきますよね・・。

二人の取り巻く環境も変わりそうです。

目が離せません!

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まりこ(^▽^)さん♪ (かりん)
2006-02-21 14:48:58
こんにちは!



古賀は笹垣にとってかなりかわいい部下だったはず。もう理性を全部捨てて執念の復讐に変わりそう。

怖いねっ!

亮司と雪穂もそれぞれの道をいきそうですね。

もう明後日ですよ!!



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