くつろぎ日記

ストーリーとセリフに注目したドラマレビューです。

白夜行 10話

2006-03-17 17:03:44 | 白夜行

   「私に・・何ができますか?

    あの二人に関わった、一人の人間として、せめて何か・・」

   「桐原亮司の言葉を皆に伝えてやってください。

    これはあなたの言葉じゃないですか。

    あいつらぎりぎりのところで化け物にせえへんかったのは

    あなたのおかげですわ。もう、それで十分ですわ」

信号を送ってきた子供たちを救ってやれなかったと自分を責める谷口司書に

笹垣は責めを負うのはむしろ自分だと。手を合わせて。

*********************************
哀れや、救われへんと言われた亮司は無表情のままチューブをはずしました。

そうなることを予想していたように微動だにせず静かに目を閉じたまま唐澤の母は

死んでいきました。病院側は医療ミスと思っているようです。雪穂はしのびやかに急

に亡くなった事を聞いています。誰にともなく。ささやくことで実は責められてると医師

が感じることを計算しつくした雪穂。きっと誰も疑っていない。

    「私が友達に疲れたなんていうから罰が当たったんです」

亮司には報告をすませるのみ。ふと「大丈夫か」と聞いてくれる亮司に

    「ありがとう、後はうまくやるから」

サボテンを見ながら「親を殺してまでも手に入れた人生だから・・・どこまでも・・」

雪穂はこうして喪主となりました。

 

   なあ、雪穂。

   あなたの母親は、俺たちを救われないといったけど

   俺は俺なりに・・

   あなたを明るいところに、連れ出そうと思ってた。

   だけど連れ出そうとすればするほど

   あなたを閉じ込めてしまうんだね。

   今となればそんな気がするよ。

篠塚は笹垣と会い、不自然な死を調査したことを報告しました。製薬会社の経営者

であれば簡単に事情も聞けるでしょう。笹垣は篠塚に深入りないように助言したよう

ですが自分の目で確かめたいと押し切りました。葬儀場で涼子に状況を聞く篠塚は

確かに不審です。「2時間ぐらい愚痴の電話をかけてきた。その間に亡くなられた」

何のためにこんな話を聞くの?

   「前のダンナの友人で手伝ってくれと言われてるから」

手伝おうかと声をかける篠塚に高宮に頼まれたかと問う雪穂。寂しくなるね。。

ええ・・と言うつもりだったのに。なぜ素直に言えないの。

   「人は・・いつかはなくなってしまうものですから。

   泣いたって、母は戻ってくるわけじゃないし・・・」

雪穂、唐澤の母を本当に愛していたはず。こんなことを言ったらだめだってわかって

るはずなのになぜ裏腹の一面を篠塚に見せてしまったのだろう。

 

亮司は青酸カリをフィルムケースに移し、もとの瓶には食塩を詰める。これでよし。

こうして典子の部屋に戻り、お帰りとにっこり笑ってみる。怪訝な典子。いなくなったと

思っていたのに。ちょっと嬉しかったりする。小説の取材だなんて言ってみたりして

亮司、青酸カリの瓶を返す。明日デートしようか。場所は典子のいなか。川べりに

座り込み、聞かれるまま小説の話を始める亮司。

  何をしても気付かれない男の話。主人公は子供の頃、万引きをするんだ。

  見つからないことを賢いことと勘違いして、それから悪いことばかりする。

  しまいには人殺しまでやってしまう。そしてある日気付く。

自分は幽霊なんだって?

  気付かれないんじゃなくて、誰にも気がついてもらえないんだよ。

  そしてそのうち彼は好きな人ができる。彼は彼女のために盗んだものをあげたり

  彼女を悲しませた人を殺すんだ。

それでも気付かれないの?  

  そう幽霊だから。

可哀想だね、幽霊。で、青酸カリはどこで登場するの?

  気付いた男がたった一人だけいるんだよ。そいつを殺す時に使う。

亮司は雪穂のために人を殺したとそして笹垣を青酸カリで殺すと典子に言いました。

もちろん典子は誰のことかわかりません。しかし青酸カリが登場することで一抹の

不安がよぎったようです。気付いてもらえなかった犯罪。もしも子供の時に気付いて

もらえていたらこれほどの苦しみを味わうことなく、ごく普通の笑顔で雪穂と出会えて

いただろうか?雪穂にとってもそのほうが良かっただろうか?きっとそうなのだ。

今となっては遅すぎたのだけれど。気付かれないということの寂しさ。

 



谷口司書は「幽霊からの遺書」をアウトし弥生子のもとへ走りました。亮司の子供時

代を知る者として話したことがあると弥生子に見せました。必死に手繰り寄せるよう

に読む弥生子。出るのは悲痛の声のみ。自分が殺したと繰り返すだけです。立ちつ

くす谷口司書は切り絵の帆船に気付きます。亮司の足跡がここにあることを知って

母の苦しみが伝わる瞬間。


やがて笹垣も弥生子のもとを訪れます。雪穂の母が亡くなった事。証拠はないけれ

ど亮司だと確信していること。弥生子がこの店にいる意味も見破られています。

亮司が昔父親をこの場所で殺したことを母の直感で知っていた。そのことを笹垣は

見抜いているのです。しかし笹垣は容赦がありません。表面の上塗りをしてるだけ

の弥生子だと。そうすれば自分は罪滅ぼしになるが根本的に亮司を救うことにはな

らないのだと。決して責めてはいなかった、いなかったけれど弥生子にはそれは辛

すぎました。笹垣のこの言葉は弥生子を旅立たせるには十分すぎたのです。


しかしまだこのときは亮司のことだけです。大江図書館の印刷。笹垣には閃くものが

ありました。子供の亮司が読む本。雪穂の読む本。二人の接点。しっかりつながった

図書館に出向くのはすぐです。そして谷口司書と出会い。子供たちを蝕んできたもの

の正体を二人は確認しあいます。名刺をおいた帰り道、笹垣の脳裏には子供たちの

過去が手に取るように見えていました。母に手をひかれ売春をさせられる雪穂。

ダクトを通り目撃する亮司。父を殺す亮司。ガスをひねる雪穂。

    「やめ!」

笹垣の叫びが二人に届けば、二人の悲劇はなかったでしょうか。

もっと早く気付けば。救ってやれなかった二人の人生に涙が落ちていく。

 

葬儀場から終わったことの報告をする雪穂。亮司の気がかりは笹垣。しかし葬式に

は篠塚しか来なかった。亮司が考えていることが雪穂にはわかっています。次は

笹垣だと。そして亮司自身もでは、と。それだけはやめてと声を枯らしてみるけれど

電話は虚しくて。ボックスから出た雪穂はひざからくず折れてしまいました。

雪穂が目を覚ました時そこには篠塚が。いつになく優しい篠塚。サボテンが気になる

篠塚は疑問も口にしてみた。「母はサボテンのような人でした」雪穂の思い出の中の

母は厳しくて、まっすぐで本当の強さと優しさを知っていたと涙ぐんでしまいます。

人の愛し方がわからないという雪穂。お返しするのが当然だと思っていた雪穂。

篠塚は笹垣から聞いた雪穂の過去がよぎり目を閉じるばかりです。テーブルにつっ

ぷす雪穂に篠塚は語りかけました。自分も生まれながら役にたたなければいけない

運命だったと。無条件で愛されてる江利子と違い自分は結果をだすことで愛情を形

にしてもらったという篠塚。しかし本当に、雪穂は一人だったのか?

そっと爪をかむ雪穂。決して一人ではなかったと思っていたが。なぜ爪を噛む?

  俺たちは似たもの同士だ。そう思ったことはないか?スカーレット。

 

 

亮司は典子と決別を考えています。典子には知る由もなく電話がかかってくる相手を

探ろうとしてその手をひっこめたり迷いは続きます。幽霊に気付いてもらった男は

涙が出るほど嬉しいのでは?という典子に泣きながら殺そうという亮司。殺すという

結末に反対の典子。亮司は典子に情を感じ始めています。いつまでも居ていいと

言われ流されそうな自分。狂おしいほどに求め合った二人がやがて朝を迎え、亮司

は決心しなければなりません。この居心地の良さとの決別。ちょっとタバコを買いに

行って来る。私のも買ってきて。典子は薄々この日がくることをわかっていたのね。

テーブルにはタバコがあったのに。あえてそう言って見送った典子。

 

笹垣が発見してしまったのは偶然でしょうか。おそらく笹垣は弥生子がこうするかも

知れないと知っていたはず。手首の傷の何本も見ていた弥生子にあえて厳しく告げ

た笹垣。弥生子は笹垣が来ることを知っていた。だからこそ実行したのは亮司を追

いつめないでと言いたかったから?自分が悪かったと罪にさいなまれたから?笹垣

が自分を責めたように思ったから?「あの子はまだダクトの中にいる。押し込めたの

は私。そんな人生しかあげられなくてごめん」遺書の弥生子は亮司に謝るのみ。

血だらけの弥生子を抱きしめ「何でこんな生き方しかできへんね・・なんでや」

笹垣の苦悩は、自分が発していることを悟ってか。涙するも念仏はでてきません。

そして一切の始末を終え笹垣は弥生子の骨と共に帰りました。関わったものとして

いつか亮司が来ることを知っていたのでしょう。渡さねばならないことも。

亮司は自分の母がその風呂敷の中に居るとは気付かず笹垣を見張っています。

その笹垣は呼び出され出て行きました。忍び込む亮司。計画通り青酸カリをトイレに

振りいれすばやく外に出る。そこで見てしまったもの。それは母の遺影。遺書。

そして笹垣のノート。

 

笹垣は谷口司書と会っています。二人の犯罪の歴史をすらすらと口にする笹垣。

谷口司書は見守ってきた二人がそんな犯罪を犯していたとは知りません。

二人が現れた時期を把握している谷口司書に驚きを感じつつもそれに合わせた

年表でも諳んじるような笹垣におののきすら感じてしまいます。なぜそんなことを。

二人がアホだからですわ。笹垣は二人は交換殺人を犯したとそこから人生が狂った

と言い捨てるように。しかし言わねばなりません。あの子達、私に聞いてきたんです。

  人を殺してまで幸せになろうなんて、ずうずうしくないのかって。

  生きるために人を殺していいのかって。

気付かなかった自分、親たち。きちんと導くことができなかった大人たちが悪いのだ

と大粒の涙を流しながら自分を責めるばかりの谷口司書です。

笹垣はそんなことはないといいます。

  人を殺す知恵はあるのに自首する知恵がないはずがない。

  あいつ等をぎりぎりのところで化け物にしなかったのはあなたのおかげです。

もうそれで十分です。手を合わせて。

 

亮司はノートを読み、その詳細にいつしか感動すら覚えています。自分たちの犯した

罪をきっちり見てきた人がいる。間違いなくその通りの二人の軌跡だ。

   なあ、雪穂

   あいつが作ったノート、俺たちの道のりだった。

   その足でおいかけ、その手で書き記し、

   どれだけのときをあいつはその目で俺たちを見つめ続けたのだろう。

   そのノート、あいつの血と肉でできていた。

亮司はこんな殺し方をしてはならないと思い再び部屋に忍び込みトイレの水を流す。

そこに帰ってきた笹垣。しばし、見詰め合う二人。

桐原かと訪ねる笹垣に亮司は叫び声をあげて飛びかかりました。

   せめてあいつの血と肉にまみれて殺したかったんだ・・・

    次回、最終回です。

******************************
壮絶でした。皆が躍起になって二人を救おうとしているのに二人は、いまだ自分達

の世界から抜け出ようとしません。間違っている虚の世界だと知りつつも、戻ること

ができずいます。そのために亮司の母も自殺してしまいました。

弥生子を追いつめたのは笹垣のように見えますが結局自分の弱さだともいえます。

谷口さんが出て泣きじゃくりながら笹垣と話をします。自分のせいだと責めながら。

子供のころからの二人を知ってるものとしてどれ程の責任を感じたのかと同情すら

してしまいました。これほど二人を思ってくれる大人が身近にいたのに。

二人に届かなかったのが残念でもあります。

亮司は自分と笹垣がいずれ雪穂の邪魔になると悟っていました。

雪穂のために自らも始末しようと考えているのでしょう。

雪穂はそのことをまだ知りません。庭をながめて亮司を思い出すのみです。

そして来週はあのサンタクロースのシーンになるのですね。


ただ私はちょっと今週は冷めてしまいました。周りが熱くなってるのになぜか・・

それは登場人物たちが涙をこぼしすぎるからかもしれません。同情で泣かれるのは

嫌だな。演技者があまり泣くと急にしらけてしまうのは私がいけないのかも(苦笑)

 

しかし谷口さんと典子がそっくりで混乱し、しばし考えてしまいました。

似ていると思いません?

 

 



22 コメント

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また読ませていただきました (谷口真文)
2006-03-17 18:21:20
■『くつろぎ日記「白夜行」第10話』を読ませていただきました。

第10話のハイライトは笹垣(武田鉄矢)と大江図書館の谷口さん(余貴美子)の会話というわけですね。

なるほど。

>谷口さんと典子がそっくりで混乱し、しばし考えてしまいました。似ていると思いません?

 役の雰囲気が似てるっていうことでしょうか。疑うことを知らない善意の人だという点?でも、栗原典子(西田尚美)は「負け犬日記」の筆者ですけど、谷口さんは結婚して子供がいて恋愛相談を受ける立場にありますからその点が大きく違うように思います。

それとも、二人とも(余貴美子、西田尚美)女優とは思えないほど平凡な容姿という意味でしょうか。

■今回のドラマで一番好きなシーンは典子が亮司の携帯電話の内容をチェックしようとして思いとどまったところです。高い倫理観に感銘を受けました。

■では、また来週お会いしましょう。最終話のノベライズをよろしくお願いいたします。





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こんばんは! (Nob)
2006-03-17 19:30:42
こんばんは!

TBどうもありがとうございます!

私は今回笹垣の回想シーンにやられました。

「やめい!」の一言は重かったですね。
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わかる気がする。。。 (くう)
2006-03-17 21:12:22
登場人物が泣きすぎると何となく冷めてしまうって解る気がします。

演技は好評で良かったのですが、悪いけど私は

余貴美子さんのシーンで、ちょっと冷めてしまい。。。(^_^;)

赤の他人なのに、よくこんなに気になってボロボロ泣けるなぁ。なんて。。。

ノートの場面で本当にグッと来ました。

感動するためには、あまり余計な演出はいらないんですよね。
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掘り返されるのかな? (uranus-planet)
2006-03-17 21:31:28
典子が言っていたように、あそこまで詳しく二人の過去を調べ上げていた笹垣に、

亮司は感動したのでしょうね。

そして彼を殺さない限り、絶対逃げられないとも。



次週サボテンの下が掘り返されることがあるのでしょうか?

もしあるとしたらそれは篠塚?それとも笹垣によって?

次週はきっと大量に涙してしまいそうな気がするのでタオルが必須ですわ。
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本当にどうなっちゃうのやら。。 (しーな)
2006-03-17 22:47:47
まさに壮絶な最終回前話でしたね…。

薬剤師さんがいい女だっただけに、

裏切られるのは分かってたけど、悲しかったです。

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Unknown (mari)
2006-03-17 22:53:22
かりんさん、こんばんは。

昨夜は大嵐でした。そんな中でのこの物語は

あまりにも、不気味でした。
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やっぱり気になって… (ちはる)
2006-03-18 04:55:32
原作ファンの僕からすれば、原作とは違うところばかりが目に付いてしまい、素直に見る事ができないのですが、みなさんのコメントを見ていると、素晴らしいドラマなのだなぁと思います。



最終回はこれからどう持っていくつもりなんでしょうか。このドラマはアンフェアほどではないですが、毎回のように人が死んだり、傷つけられたりしているように思います。



個人的には初回のサンタのシーンは長いと思ったので、あのシーンではあまり時間を使ってほしくないと思います。ドラマでは亮司と雪穂のどちらも救われないんでしょうか。最終回、期待しています。
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う~ん・・・ (まこ)
2006-03-18 11:56:20
今回は回想シーンも盛りだくさん!

2度目の「親を殺してまでも手に入れた人生だから」というセリフ。

少女時代の雪穂は空恐ろしいほどでしたが、さすがに今回の義母殺しには自分が手をかけてないのに切なげだったのが救いでした

無邪気な子供時代に少しだけ関わっただけの谷口さんなのに、二人の犯罪を聞いてあれほどまでの涙を流せるなんて!こんな風に情の深い彼女だからこそ、亮司と雪穂もつい本音を吐露してしまうんでしょうね…

最終回、二人がきちんと反省してくれますよーに
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Unknown (ぶろぐひろば)
2006-03-18 12:04:15
突然申し訳ありません。



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こんにちは (ikasama4)
2006-03-18 12:52:47
自分がこのドラマで唯一涙をこぼしたのは礼子の言葉でした。

今まではどうも被害者の弁が目立って、自分達はこうするしかなかった、とか言いながら、それって自分達で選択できる道をなくしているだけじゃないのかと思っていたので今回は笹垣がやっと本来あるべき主張をしてくれて、大分溜飲が下がりました。

亮司と雪穂、二人の涙には同情と同時に哀れんでしまっていたので。



>しかし谷口さんと典子がそっくりで混乱し、しばし考えてしまいました。

>似ていると思いません?

思考、というか考え方という点についてはかなり似通っていると思いますね。

男にだまされやすいとことか(笑)
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