くつろぎ日記

ストーリーとセリフに注目したドラマレビューです。

「野ブタ。をプロデュース」 

2005-12-16 16:15:21 | book

いよいよドラマは明日が最終回。これまでこの本をなんとしても読破しなくては

思い続けていたのにどうしても手が出ませんでした。

しかし、昨日の記事にも書いていますが、ラストは原作とサプライズの融合と

いうではありませんか。それでは読まなくてはなりませんね。

修二がなぜこういう精神を持つようになったのかどこかにヒントがあるのでしょう。

ハッピーエンドになるとはいえ避けては通れないと決心しました。

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桐谷修二。クラスの人気者。しかしこの人気は軽妙な会話術とスマートな外見、

頭脳の確かさから本人が自ら作り上げている着ぐるみによるものであった。

ある日、このクラスに転校生がやってくる。

修二とは正反対のデブでドンくさい高校生。

小谷信太。この子を読みから「野ブタ」と名づけ演技指導よろしく

人気者に仕立て上げるべくプロデュースしていく修二。

実は修二はプロデュースしていきながら自分をプロデュースしていることにも

気付き納得し、さらに深くその着ぐるみを着こんでいくのである。

いきなりモーニング娘でスタートしました。ちょっと微妙。

以前ほどモー娘を見なくなっています。寒い朝はパトラッシュの登場で。

瞬時にこの若い背景を理解させてくれる文章表現の巧みな作者です。

修二より何倍も上手の着ぐるみを着ているかのように見えますね。

さてプロデュースはスタートしました。

いじめられていた野ブタはまず相手の懐に入り込み親しみを持ってもらう。

次のステップは、笑いを取る。

そのステージは数学の問題を解くときの黒板の前。

演技はズボンを破って見せること。

そしてジャンプで一気に強さを印象付ける。姑息な手段とはいえその準備としての

根回しがうまくいってない。けれど結局、成功してしまう。

偶然と運と野ブタの人柄のよさが受け入れられ、確かに人気者の階段を

上る野ブタ。修二は遠くからほくそ笑んで見ていればよかったのだが。

しかしその日は突然やってきました。

この転落の箇所はドラマと同じでした。

目撃場所が自転車で通り過ぎるドラマと、本を立ち読みしているガラス越しとの違い

程度です。修二がそれまで保っていたものはこれほど脆く不確かなものだったという

ことに愕然としてしまいます。それを修二自身がしっかりと受け止め乗り越えるので

はない部分に今の高校生や若い人達の孤独が描かれているということでしょうか。

修二はまり子にさえもしっかりガードし心の内側を見せていません。

まり子の存在はただ自身をプロデュースするための手段以外はないのですね。

利用されていただけのまり子ですが、それでも最後は修二を信じようとします。

しかし拒否されてしまいます。どこまでも根強い修二のこれは人間不信と言っても

いいかもしれません。人気を得ることの虚しさがわかっているならばおそらくもっと

違う自分を目指したに違いないのにと思うと残念な結果です。

人との程よい距離感を保つというのは実はこんなに寂しいことだったと思い知らされ

るシーンでもあります。しかし、修二は本当にまり子に言ってもらいたい言葉は

「そうであっても私は嫌いになったりしないから」と全て納得した受け入れではなく

「本当は全然知らなかったのでしょう」という絶対的な信頼であったはず。

少なくともまり子には絶望の渕で温もりを求めていたし好きだという表現さえも出て

きていたのです。修二がほしいものが最後に得られなかったのは悲しいとさえ思いま

した。それほどにこのシーンは残酷。これで修二はまり子にも決別しさらに深く

自分自身を孤独に追い込んでいくわけです。

まり子に投げつける言葉は辛らつではあるけれどそれは自らに言い聞かせる言葉に

違いなかったのですね。やがて時間が移り、再び新しいステージで自らを

プロデュースしようとする修二がいます。最後がもったいない終わり方をしていて

残念な結末。結局何も成長していないという点と、

あくまで冷えきった内面にどこまでも茫漠としたものを感じてしまいます。

こうした内面が育った原因をどこからも読み取ることができなくて

修二の深い孤独を痛く苦しく感じていまい寂しさの境地に陥るばかりです。

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ドラマを先に見ていたので原作とあまりの違いに絶句してしまいました。

根幹として他人を踏み込ませない修二と野ブタをプロデュースするという点が共通し

ているのみです。原作の登場人物は潔いくらいに人物を絞り込みわずかなクラスメ

ートとまり子、そして野ブタだけです。

修二の自身の心をガードする寂しさはどこで培われたのかと思うと

月並みですが母による愛情が欠乏していたのかという程度の想像しかできません。

ドラマでは豊かな人間関係があり、とりあえず虚しい人気者を演じていても

回を追うごとに野ブタと彰に影響を受け温もりをもらっている修二がいるわけです。

こんないいドラマに仕立てあげてもらって良かったという

ただ暖かな感想が出てくるだけなんですよね。

そうそうラストは、原作とサプライズによるものとありました。

原作は転校で終わりましたね。

ドラマも父が転勤というところで先週は終わっていました。

やはり転校がキーワードでしょうか。

光を受けながら廊下を一人で歩くシーンがありましたが。

三人でクリスマスを楽しんでる映像もありましたしね。

私の希望としては修二が母の仕事で留学してくれることなんです。

だってこの作者も留学していますから。共通するものがあるのではないですか?

そしていきなり数年経ち、再会した三人はしっかりと友情を確認するということに。

もう虚しく他人からガードする必要のない三人の絆を信じられる成長した修二

見せて欲しいと、ここだけは絶対に原作とは違う終わり方をして欲しいのです。

 



5 コメント

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とりあえず ありがとうございます (mata24)
2005-12-17 10:31:27
中々 師走のこの時期 活字に費やす時間は

 作れず 原作 読まずに 行こうと決めてた矢先の

かりんさん の のぶた。原作以上に原作だと思います。

日テレBBS AT HP  及び バンドー(水田)ブログ中にも原作からの 結末類推は あって、ある程度は予想していたのですが、 より楽しみになってきました。

 おりしも 日付は 17日 花より男子 の 最終話見たあとに コメントしています。 



原作のモチーフを 大切にしながら、より視聴者へのアナウンス効果を一番に 考えたドラマ制作を目指してる時代になってきたようです。   

ちなみに 日テレの もうひとつの連ドラの あいのうた

では 結局 不治の病の 主人公が 死を迎える前で、エンディングを迎えてます。 正直 拍子抜けの感はいなめないのですが それはそれで 良いような気がしてます。



今日は とりあえず リアルタイムで 正座して 臨む所存であります。  
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歌がすきでーっす! (オレ様)
2005-12-17 21:01:07
あの歌、通勤途中にいっつも聞いてて、

一緒に歌ってますぞ

だから、対向車のひとにはクチパクで盛り上がってる私が見えとるかもしれませぬ。

いい歌やわー
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mataさん♪ (かりん)
2005-12-18 18:53:16
本としてはかなり秀作でした。

おもしろいです。

使う言葉が今の若者なんですね。そういう視点でみると若い人を捕らえる力がある作者だと思いました。



芯はドラマと同じなのですが、修二の心情はもっと寒々しい感覚があります。エピソードもドラマは楽しめるように見せてくれましたが本はいただけないですね。

最後も弱い終わり方。

ですが、新しい時代の風というのしら、そういう意味でこの本をドラマにしようと考えた人は凄いと思いました。作者にも今後注目です。



あいのうたは見てなかったのですがラストをキレイに終わらせたかったのかもしれませんね。

残念かもしれないですが希望が残るようには思えないでしょうか?



「野ブタ」正座してご覧になりましたか?(笑)
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オレ様へ♪ (かりん)
2005-12-18 19:16:09
いつも歌ってるのね!ちょっと懐かしみのあるような。大ヒットして嬉しいですね。プッシュしただけありました(笑)

運転しながら・・・気をつけてね!



関係ないですが運転しながらマニキュアを塗る人もいるそうですね。

対向車でおおっと思いましたよ。

オレ様はやってないですよね。

安全運転でお願いしますよ(笑)
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Unknown (野ブタをプロデュース)
2007-01-09 16:35:59
http://yan.seed-d.cc/uu2/u2y3_nobuta.html
野ブタをプロデュースのDVD-BOXを紹介しています。
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