![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/61/ea/f1c02a9e3587ca853f2e9816d86e7818.jpg)
野沢尚の作品はどれもが好きで新作が出るたびに震える思いでページをめくったものだ。
それだけにもう作品に触れることができなくなった時、その死を悼むよりも
喪失感の方が大きく心底がっかりしてしまった。
その野沢作品のなかでこの「深紅」は何よりも私の中で大事にしていたものである。
6年生の秋葉奏子は家族が事故にあったと知らされる。
修学旅行中であったために高原から東京までのタクシーのなかで家族の下へと意識を走らせる。
その移動中の「4時間」がその後の奏子の心的外傷後ストレスとなってしばしば
心を閉ざす扉の入り口として意識を掘り下げ、時間を6年のときに呼び戻す。
前半はかなり衝撃的なスピードで加害者と被害者の接点を説明し
惨殺の場面は、加害者さえも被害者であるかのような錯覚を覚える書き方である。
しかし後半は奏子の心象風景を静かにたどりテンポは緩やかになっていく。
加害者の娘、未歩と出会い、一人生き残ったために家族に対して罪を感じる奏子が
憎しみや苦しみを押し隠して、やがて救われ癒されていく様子が淡々と描かれていく。
ラストはあまりにもあっけなくて拍子抜けしてしまうが、いい終わり方だと思う。
結局、奏子の苦しみの根源はいたわしい目で見られる周りの空気や、憎しみや恨み
に基づくものではなく、自分の心をガードする自ら溢れる自然の作用ではないか。
6年の奏子が叔母に引き取られ転校することになったときに
精一杯、クラスメートに笑顔を向けお別れ会をする。
「神様、この悲しみと絶望の極地でこれほど笑ったのだからほんの少しでいいから
ご褒美がほしい。せめて痛めつけないで」と願う。
笑った見返りに神様は何をしてくれたのか。
これを思うとやはり未歩の出現こそ、奏子の心を反作用的に浮かびあがらせる
効果があったと言わざるを得ない。
深紅という表題は奏子が「4時間」の心の奥に閉じこもる時に家族の流した血を想像する
その深い悲しみをはらんだ色だということを繰り返し訴えていたように思う。
この「深紅」はまもなく映画となって公開されることになったそうだ。
びっくりしてしまった。内山理名と水川あさみが主演となっている。
正直、大事な子供を取り上げられたようで残念な気もするが
この難しい役をどのように演じてくれるか楽しみでもある。
それだけにもう作品に触れることができなくなった時、その死を悼むよりも
喪失感の方が大きく心底がっかりしてしまった。
その野沢作品のなかでこの「深紅」は何よりも私の中で大事にしていたものである。
6年生の秋葉奏子は家族が事故にあったと知らされる。
修学旅行中であったために高原から東京までのタクシーのなかで家族の下へと意識を走らせる。
その移動中の「4時間」がその後の奏子の心的外傷後ストレスとなってしばしば
心を閉ざす扉の入り口として意識を掘り下げ、時間を6年のときに呼び戻す。
前半はかなり衝撃的なスピードで加害者と被害者の接点を説明し
惨殺の場面は、加害者さえも被害者であるかのような錯覚を覚える書き方である。
しかし後半は奏子の心象風景を静かにたどりテンポは緩やかになっていく。
加害者の娘、未歩と出会い、一人生き残ったために家族に対して罪を感じる奏子が
憎しみや苦しみを押し隠して、やがて救われ癒されていく様子が淡々と描かれていく。
ラストはあまりにもあっけなくて拍子抜けしてしまうが、いい終わり方だと思う。
結局、奏子の苦しみの根源はいたわしい目で見られる周りの空気や、憎しみや恨み
に基づくものではなく、自分の心をガードする自ら溢れる自然の作用ではないか。
6年の奏子が叔母に引き取られ転校することになったときに
精一杯、クラスメートに笑顔を向けお別れ会をする。
「神様、この悲しみと絶望の極地でこれほど笑ったのだからほんの少しでいいから
ご褒美がほしい。せめて痛めつけないで」と願う。
笑った見返りに神様は何をしてくれたのか。
これを思うとやはり未歩の出現こそ、奏子の心を反作用的に浮かびあがらせる
効果があったと言わざるを得ない。
深紅という表題は奏子が「4時間」の心の奥に閉じこもる時に家族の流した血を想像する
その深い悲しみをはらんだ色だということを繰り返し訴えていたように思う。
この「深紅」はまもなく映画となって公開されることになったそうだ。
びっくりしてしまった。内山理名と水川あさみが主演となっている。
正直、大事な子供を取り上げられたようで残念な気もするが
この難しい役をどのように演じてくれるか楽しみでもある。
かりんさんの本への感性溢れるコメントを拝見し、ちょっと離れていた「野沢作品」に映像ではなく活字で会いたくなりました。
野沢尚の作品はドラマや映画になっているものが多く
なじみがありますよね。すべてヒットしている優秀な脚本家でもありました。
この「深紅」は、奏子が受けた傷を癒す過程が丁寧に描かれていて、氏のものは全部好きでしたが、これは特別な思い入れがあった作品です。
どんな脚本になってるか心配ですが、映画を見る前にぜひこちらの原作にも触れてみてくださいね
実は、野沢尚という人のことを知らず、ネットで少し調べました。
聞いたことのあるドラマの脚本をたくさん書いていた人なのですね。どれも見たことはありませんが…。
そして、「坂の上の雲」の脚本執筆中に亡くなってしまったのですね。
実は、今、すごくスローペースですが原作を読んでいるところです。なかなかおもしろいです。
「深紅」かりんさんの感想を読んで、ぜひ読んでみたくなりました。
「坂の上の雲」は司馬遼太郎ですね。それはサンドさんのテリトリーですよね。
日露戦争を織り交ぜた明治に生きた人達のストーリーとか。
野沢尚が脚本を書いていたならどう料理したのでしょう。壮大で奥行きの深い情味あふれるドラマとなって歴史の苦手な私もきっと見たと思います。
サンドさんのコメントを読んで私もネットで少し調べたら知らない野沢尚の作品がたくさんありました。
これから少しずつ探して読もうと思います。
読み始めたら、一気に読んでしまいました。
それを待って、高2の娘が奪うようにして読みました。
次に読むのは何がいいでしょうか?
お嬢さんも本がお好きなのですね。
親娘で感想を語れるって素敵です。
次はがらっと違う作風ですが「砦なき者」なんてどうですか?
サンドさんと合うかはわからないですが面白いことは約束します。
ただこれはかなり怖いです・・・
確かドラマにもなったと思います。
書店でぱらぱらめくって適度に隙間のある相性のよさそうな本を私は選んでますよ(笑)
サンドさんのところにあとで伺いますね。
「カノン」も、書店で何度も気になって手にするものの、まだ読んでいません。こちらもいつか読みたくなりました。
本当に本がお好きなんですね。
また遊びに行きますね。