くつろぎ日記

ストーリーとセリフに注目したドラマレビューです。

「パパとムスメの七日間」 五十嵐貴久著

2007-06-30 14:31:16 | book

久しぶりにブックレビューです

     「パパとムスメの七日間」

                五十嵐貴久著


本書は47歳のお父さんと16歳の女子高生の中味【心・人格】が

一週間だけ、入れ替わってしまうという物語。

入れ替わりモノということで、素材はありふれてはいますが

実はそういう素材にあえて挑戦したというのが

作者の自信の表れと受け取りました。

何しろ五十嵐氏といえばエンタメに長けるといっても過言ではなく

過去の作品は数々、ドラマ化されていることからしても

映像的に表現したくなるような、イメージに富む筆致なのです。

しかもその力量たるや、ホラーもファンタジーも時代物でさえも

こなしてしまうというすばらしさ。

ただ、ちょっとだけこのキャラクターの設定と

二本の柱のうち、一方はすぐにつながって容易に想像できてしまい

それが的中したために惜しい気がしました。

意表をついてこその五十嵐氏だと思うので、その点だけがやや残念。

 

地震による電車脱線事故が起こり、父娘が入れ替わってしまいます。

それから、二人はお互いの情報交換をしながらも

それぞれの立場や、状況を少しずつ理解していきます。


父親はほどほどの位置をキープした化粧品会社の中間管理職。

はっきり言えばどこにでもいるさえない親父ということですか。

この光聖堂という会社のモデルは某○生堂でしょうかね(笑)

その会社が本書に語られている、一時代も昔の硬直した会社経営を

行っているならばかなり風刺に富んでいるとも思います。

でも、本書の最後の結末と同じように、某○生堂が安価な化粧品で低年齢層を

巻き込み、コンビニやドラッグストアに展開した戦略は見事なものでした。

そして今や時代は次世代への橋渡しとするこういった若年層を無視して語れない

のです。そうした意味からも、この父親が会社員として仕事をする姿を、

女子高生の目で見るという新鮮さは意外と多くの賛同を得られそうに思います。


私としての視点は、この会社の仕事のあり方というものにありました。

父親が手がけるターゲット層というのが女子高生ということで、

きっと最後の土壇場でこの入れ替わったムスメが何かをしでかすだろうと

予想していたのが的中しました。

それが見事な結末であり、小気味良かったということは付け加えておきましょう。

 

さて、もう一本の柱はムスメの方ですね。

今時の女子高生だからと言っても普通の恋する女の子に何も変わりないわけで

女子高生の神器であるケータイを駆使して、恋を語るという取り組みも

氏の情報収集の密度を理解させるに十分でした。

実際、氏には高校生あるいはそれに近いお嬢さんがいらっしゃるのかもしれません

 

随所に散りばめられたコミカルな語り。

それらは映像で見たらどれだけ笑えるか、きっとそこは役者の力も必要でしょうが

会話の一つ一つがくすりとさせられます。

例えば、ムスメが会社に行った時の会話に「オンシャのおかげで・・・・」と取り引き先

の某に言われますが娘は「オンシャ」というのはなんという会社かわかりません。

オヤジの姿になったムスメがいつもの要領で携帯を両手で早打ちしてしまい、そこが

会社であったために周囲のモノたちが唖然とする光景など、一時が万事、

世代のギャップを感じさせながら、おかしみをかもし出していくのです。


そして物語は終息に向かいます。

このオヤジに熱をあげていた女性がいるわけです。

すこし頭の回路が変わった動き方をするというのがこの手の人間でしょうか。

五十嵐氏の過去の「RIKA」を即座に思い出していました。

そして父娘は、今度は交通事故となり、元の人格へと戻るのです。

 

戻ったあとに、それまでの気まずい女子高生と父親の関係が

ほんの少しだけ、変わっていることに気づきます。

うざいだけの父親だったのに、どれだけ自分を愛してくれてるかわかるという

実はわかっていても素直になれてなかった娘の心理を上手に表現しています。

そして、そういう父親ながら、愛する娘のことをしんみりとした情感にもっていくのが

ほんのりと涙がにじむ仕掛けになっています。

本当、最後にほろりとくるのは、作者お得意の戦法で見事に術にはまりました。

すごく面白かったです。

                         

ドラマ化にあたって、父親が舘ひろしさん、娘が新垣結衣さんだというので

お二人を想像して読み始めるとこれがなかなか面白いのですね。

しかも、ムスメの恋する先輩は加藤成亮(NEWS)というので、

あのカッコイイ先輩としてシゲちゃんがどう演じるか楽しみです。

デートのシーンや告白など、素敵な先輩になることは必至ですネ

     HP  パパとムスメの七日間 



6 コメント

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パパとムスメの七日間 (本大好きママ)
2007-06-30 17:34:44
また寄らせていただきます。

この本、TVドラマになるとは知らずに、買ってました。さあ読むぞ、という時にドラマ化のことを知りました。で、まだ表紙を開いてません。読んでからだと
その本が良ければ良いほど、ドラマでがっかりすることが多いんですよね。あまりにも感情移入しちゃうからかもしれませんが。

あぁ、でも今この記事読んでしまった。

もう、読もう。

ドラマはいつか再放送されたらみることにします。

返信する
パパとムスメの7日間 (アリス)
2007-06-30 21:00:15
私は原作を読んだことがないのですが、ルルさんの記事でだいたいの内容はつかめました。
ドラマ化すると原作とはまた少し違うものになるでしょうが、TVでも素敵な世界にしてほしいですね。
何よりシゲの登場が楽しみです~♪

7月ドラマもいよいよ始まりますね。
楽しみですw
返信する
本大好きママさん♪ (かりん)
2007-06-30 23:07:06
こんばんは!

遊びにきていただいてすっごく感激です。
ありがとうございます。

「パパムスメ」買っておられたのですね!!
すごいわ~~!
私ね、昨年、作者からコメントを頂いてから探したのですが、見つからなかったのですよ!!
すんなり買われたのですねえ・・・

ドラマになる事を知ったのは私も最近です。
夏ドラマの何も整理してないので未だにまだよくわかってないのですが、明日の夜9時、オンエアですから。これだけは見ると思います。

>ドラマでがっかりすることが多いんですよね。あまりにも感情移入しちゃうからかもしれませんが

でもたいがいの本などをドラマ化してますが、
けっこうそれでも、本とドラマは違うと割り切ってませんか?
特に最近はほとんどが漫画をベースにしてるものが
多いと思いますが、皆さんそれでもドラマをご覧に
なってますよね。

私が、書いたのはほんの骨組みですし、あらすじには
ふれてません(つもり)なので・・・
よろしければ、一緒にドラマも観ていきませんか?

まずは明日を楽しみにしたいと思います。

とりあえず、もしもこの本が面白かったら
ぜひ感想を教えてくださいね!!
返信する
アリスさん♪ (かりん)
2007-07-01 00:06:32
こんばんは!

>ドラマ化すると原作とはまた少し違うものになるでしょうが、TVでも素敵な世界にしてほしいですね

私も、原作とドラマは違うと思ってます。
原作をベースにどれだけ映像で魅せてくれるかは
脚本次第ですね。

そういう意味では楽しみにしています。
もう明日なのね。
春ドラマと夏ドラマは間がないので
焦ってしまいました。

シゲちゃんの役は原作ではすっごい素敵なせンパイですね!
ドラマではどういう風に演じるのか
脚本はどうなってるのか
いろいろと楽しみです!
返信する
こんばんは! (りっきー)
2007-07-01 22:55:51
かりんさん、こんばんは!
先日は、娘の記事にコメントありがとうございました♪
日々大きくなるもので・・・今では抱っこしないと泣き止まない始末に。。。(汗)
また時折、娘の写真をアップしていきますので、またぜひ遊びにいらして下さいね☆

このドラマ、面白そうだなぁ~、と思っていたのですが。。。今回は見れませんでした(泣)

がっきーが出演しているので、気になっているんですが・・・う~ん、悩みますね。。。
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りっきーさん♪ (かりん)
2007-07-02 20:27:30
こんばんは!

ベビーちゃん、すくすくでもうかわいくてかわいくて
メロメロですよね♪

>抱っこしないと泣き止まない始末に。。。
ずっと抱っこしていいと思いますよ~~~
抱っこといったらパパだというくらいいつも抱っこしてあげてくださいね。
このドラマを昨日見ていたら、自分の高校のときを思い出してしまいました。
やっぱりこのころって父親がうざかったかも(笑
女子高生のほぼ9割はあんな感じになると思うんです。
ですから、一生分のだっこを今のうちにしておいてね(笑

ドラマも全7回なんですよ。
あっという間に終わりますから、めっちゃ笑えるドラマなのでよろしかったらご覧くださいね!!

またベビーちゃんを見にいきますね♪
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