植生Salon

植生Salonでは、植物や緑、自然の面白さを探究するとともに、それを多くの方々と分かち合ってゆきます。

気候変動と高山帯の動植物に関する報道への私見

2020-02-14 | Weblog
2020.2.13 の長野県内ニュース(NHK)をシェア↓し、私見を記します。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagano/20200213/1010012435.html

馴染みのお名前が並ぶ研究論文映像とともに、ビッグデータを解析した、力の入った研究成果が紹介されました。

各地の平均気温のデータをもとに、今後の温暖化を見込んで比較し、気温が上がった場合に元と同じ環境が存在すると予想される場所までの距離が示されています。

大量のデータに基づき、複雑な計算から目安をつけ、議論を喚起する画期的な成果と思います。

NHKのニュースでは、特に高山の動植物に迫る危機がクローズアップされていましたので、
さらに以下の感想をもちました。

気温のデータに基づいていますが、植物からの視点では、気候変動にともなう、日本の山頂部、高山部での風の強さ(風衝)への影響に関する考察もほしいです。日本の高山植生は、風の強さに依存しているという研究成果もあります。
積雪量も重要でしょう。

また、シカ、キツネなどの分布拡大も考慮する必要があります。
こちらはすでに現れている問題で、特にライチョウにとってはより致命的な問題になります。



「人の手を加えて、高山帯の動植物をどうやって守っていくのか議論を始めるべきだ」の部分で、
ライチョウの移転や、高山植物の移植のような、直接の人為行使については、
私は慎重にも慎重に考えなければいけないと思っていて、
むしろ植物については、その手段は否定的に考えています。

ライチョウは実際すでに危機に瀕しているのですが、
今後の気候変動が高山植生に与える影響についてはまだわからない部分も多いと思います。

気候変動が農業に与える影響のほうがより現実的で、
この研究成果は、農産物の生産代替の検討について、自治体に提言する意味合いの強いものなのかなと思います。

さらなる研究内容の発表、進展に期待しております。

NHK長野の報道のもととなった文献はこちら↓
自治体の地域気候変動適応に向けた Velocity of Climate Change (VoCC)の解析
高野(竹中)宏平ほか 2019. 環境情報科学 学術研究論文集 33.