KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

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あなたもマラソンランナーになれる・・・わけではない vol.9~体重と記録の関係②

2009年06月06日 | あなたもマラソンランナーになれる
1ヶ月以上、更新が停止していたが、インフルエンザに罹っていたわけではないので、ご安心を。インフルエンザと言えば、毎年5月末に小豆島で開催されるハーフマラソンに出場していたが、昨年はエントリーしていたものの、直前に入院していた父親の容態が悪化し、出場を取り止めたが、図らずも、大会当日の深夜が父親の命日となってしまった。今年は、足の痛みのせいでエントリーを見送っていたが、大会そのものがインフルエンザの影響で中止になってしまった。

インフルエンザの影響で修学旅行を取り止める学校も少なくないようだが、新型のウイルスよりも、一酸化炭素の方が恐ろしいとつくづく思った。

さて、再開にあたって、一言お断りしたい。このシリーズ、これまで書いてきたこと、そして今後も書いていくことについては、あくまでも、僕個人の体験と感想に基づくものであるという事。ランニングを続けていくことによって得られる、体型や体力、競技力の変化や向上の度合いについては、僕がやって来た事と同じ事をすれば、誰でも同様の効果を得られるというものでもないということをご理解いただきたい。タイトルの「・・・わけではない。」
というのは、そういった点に対する「言い訳」でもあるのだ。


前回、自分のマラソン記録と体重の変化にどのような相関関係があるかを調べてみたが、最も体重を絞った時期に、自己ベスト記録が出せたわけではなかった、という事実に我ながら驚いた。

体重の減少、というのは、ランニングがもたらす大きな効果の一つである。もともと僕もダイエットを目的として走り始めた。しかし、今、僕はランニングを「最良のダイエット手段」として、他人に勧めることはしないつもりだ。前にも書いたように、ダイエットとは、肥満が原因で罹る病気の治療と予防のために行なうものである。かつて読んだ、アメリカ製のダイエット本(当然、日本語版で読んだ)にて、繰り返し強調されていたように、「ダイエットをしなければいけないような人は、病人」なのである。ランニングは病人にはできない。ランニングに限らず、スポーツは病人には無理である。
「スポーツをすれば、健康になれる。」
と誤解している人は意外と少なくないのではないか?以前読んだ、フィットネスの情報誌によると、特に高齢者のスポーツジム入会希望者にそういう人がよくいるようである。かつて、実際に
「スポーツは身体にわるい」
というタイトルの本があった。

ダイエットという言葉が、体重を減らすという事を意味することばとして、定着してしまったが、「ダイエットに効く」と言われたら、何をやっても許されるような風潮があるようだ。若い女性の中には、「ダイエットのために」喫煙をしている、という人もいるらしい。覚せい剤が若年層にまで広まったのも、「ダイエットの薬」という触れ込みだったという。空恐ろしい話だが、そこまで極端でなくても、テレビで「ダイエットにいい」と紹介されたら、スーパーの店頭から納豆やバナナが消え、プロのアスリートでも音を上げるようなプログラムのフィットネスのDVDが長年運動とは無縁だった人までが買い求めて、筋肉痛に苦しむ、という奇妙な現象。亡くなった作家の中島らも氏が、大麻で逮捕された際の獄中での体験を記した著書に「牢屋でやせるダイエット」というタイトルをつけていたのには笑わせられた。いかにもこの人らしい、きついブラック・ジョークだったし、そんな現象を嘲笑しているかのようだった。

短期間で大きな効果を得られる「ダイエット」に、人気と注目は常に集まるが、僕の経験から言えるのは、
「短期間で体重を落とせる人は、短期間で体重の大幅増量を経験した人である。」
という事である。僕の体重がなかなか70kgを切れなかった理由は、理解している。僕の体重が最後に70kg以下を記録したのは17歳の時。体重が90kgに迫り、ダイエット目的で走り始めたのは31歳の頃だったからだ。14年も身体にこびりついた脂肪を燃焼させるのは容易ではなかった。

ダイエットを第一の目的としてランニングを行なうのは、少しリスキーだと思う。水分補給や栄養補給を怠りがちになるからだ。真夏でも重ね着をして走っている人を見かける。試合に備えて減量するボクサーをイメージしているのだろう。しかし、これは既に常識になっているが、汗を大量にかいて体重を減らしても、水分を摂れば元通りである。だからと言って、汗を大量にかいても水分を摂るのを我慢するとどうなるかは書くまでないだろう。

話はずれるが、ボクシング漫画の名作「あしたのジョー」において、主人公矢吹丈のライバル、力石徹を最初に登場させた際、原作者の高森朝雄(梶原一輝)氏は、刷り上った漫画を見て、激怒したのだという。作画のちばてつや氏は力石をジョーよりも大柄に描いていたからだ。
「これじゃあ、この二人が試合ができないじゃないか!!」
ちば氏といえば、その前作「ハリスの旋風」で主人公である石田国松が、常人離れした巨漢の番長と喧嘩をするシーンをご記憶の人もいるかもしれない。チビの主人公が、巨大なライバルを倒す、という構図がちば氏の好みだったのだが、なんとちば氏はボクシングの公式戦が体重別に行なわれることを知らなかったのだという。(この人、それ以前の代表作である「ちかいの魔球」を書き始めた時点では、野球のルールを知らなかったとも言われている。)
しかしながら、このちば氏のミスのせいで、力石が常識離れした苛酷な減量を課してまでジョーと戦い、ジョーをマットに沈めた直後に死ぬ、という展開が生まれたのだという。

「あしたのジョー」などのスポ根漫画を読んで育った世代というのは、実際に学生時代に体育系の部活においても、「運動中に水を飲むな」という指導を受けているはずである。スポーツドリンクなるものが発売されたのはまだ30年ほどしか経っていないし、「熱中症」なる言葉をランニング情報誌の記事で知ったのも、せいぜい10年くらい前である。それ以前には、市民マラソンの参加者でも、レース中に給水を摂ることを「根性がない」と誤解していて、レース中に脱水状態となって倒れる事故も各地で相次いでいた。

短期間で体重を減らそうとしてランニングを行なうのは、本当に身体のためによくない。体重減を目標としたいのなら、だいたい1年で10kg、というのが妥当な目標である。繰り返すが、急激な効果を期待すると、水分と栄養の補給を怠るようになる。体脂肪を効率良く燃焼させるには、朝起きてすぐ、食事の前に走るのがいいという。2時間7分台の記録を持つ、ベルギーのランナー、ヴァンサン・ルソーは、朝起きてすぐにゴルフ場を15~20km走るのが現役時代のトレーニングだったという。

しかし、これは決して誰もが出来るトレーニングではない。少なくとも、最低限、走る前に水分を摂っておき、血糖値を少し上げるために飴かチョコレートを一片口にしておく事が必要だ。かつては、朝起きてすぐ、QちゃんをCMに起用しているドリンクを飲み干して30km走ったことがあるが、今では無理かもしれない。

現在、アメリカ大陸をランニングで横断している間寛平氏の近況を「ランナーズ」誌が連載でリポートしている。現地で彼をサポートしているのは、坂本雄次氏。僕は好きではないのだが、毎年、某テレビ局の夏の恒例行事となっている、24時間かけてタレントが100kmを走る(?)チャレンジにおいて、タレントの横で伴走している、顔に大きなほくろのあるおじさん、と言えば、ピンとくる人もいるだろう。日本スパルタスロン協会会長の肩書きを持つ、ウルトラマラソンの第一人者であり、この企画にチャレンジするタレントのトレーニング等のサポートもしている。もともとは東京電力の陸上部出身の競技者であり、湘南国際マラソンの運営も携わっているという。

その坂本氏のレポートによると、寛平ちゃんのアメリカ大陸横断、24時間休み無く走り続けている姿を連想しているかもしれないが、実際には、1日に40~50kmの距離を9~10時間のペースで、5日走り1日休むというサイクルで続けているという。驚いたのは、寛平ちゃんが故障らしい故障を起こしていない(5月22日発売号に掲載された記事を書いた時点で)ことと、体重がほとんど変化していないということだ。毎日4500~4800キロカロリーもの栄養を食事で補給いるからだということだが。

寛平ちゃんは、もはや体重をギリギリまで絞っているから。今更これ以上やせも太りもしないのだろう。ただ、こういう話を聞くと、やはりランニングはやせるために行なうのではなく、ランニングを行なうために、やせなければならないものだなと思うのだ。

現在の僕は、片道20kmの自転車通勤の効果が表われている。昨年末には83kgまでになっていて、今年2月の愛媛マラソンの頃も80kg前後あった体重が、5月の平均で76kg台になっている。先月5日の48回目の誕生日当日には、48kmを5時間20分かけて完走した。最後は歩いてしまったが、42kmは4時間20分で通過している。

半年後までに、あと3kgは絞るつもりだ。そうすると、ちょうど、自己ベストを出した頃の体重に戻ることとなる。楽にクリア出来そうだが、油断をすると、また昨年並みの体重に戻るかもしれない。




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