カウンターの中から客をのぞくといろんなことが見えてくる

日本人が日本食を知らないでいる。利口に見せない賢い人、利口に見せたい馬鹿な人。日本人が日本人らしく生きるための提言です。

食べ歩きを自慢する味オンチが、世の中の害になる。

2012-07-31 | 人間観察
風邪をひいた。

寒暖の差が、屋外と屋内が大きすぎるからだろう。

朝5時に市場に出かけるとき、車の中はすでに暑くなっており、汗が吹き出る。

市場の駐車場に着くころには車内は涼しくなっている。

でも車を降りると、また汗が吹き出る。

そして市場の中は、冷蔵庫の中のような寒さだ。

こんなことの繰り返しに、体調がよくなるはずがない。

店に戻ったときは、頭が痛く、寒気がした。

薬を飲み、少し横になる。

月曜日は準備に非常に忙しいのだが、そんなことは言っていられない。

メニューを少し簡単にして、9時まで練る事にした。

たった1時間と少しなのだが、これが結構疲れが取れる。

そして、その後は、なんとなくランチが終了した。

そしてまた仮眠。

また寒気が戻ってきた。

熱をはかっても、36度4分。今のうちに体調を整えないと、大変なことになる。

後片付けをする女房の不満な表情をよそに、僕はまた眠る。

目を覚ましたのは、6時ジャスト。

オープンの時間に少し遅刻?だ。

仕方ないさ。疲れてるんだから。

すぐに客が来た。

2人、2人、1人、1人、1人。

月曜日は、あまり金を使う客は少ないが、頭数は多い。

そして突然初めての夫婦らしい二人連れがやってきた。

「知り合いに聞いてきたんだ。ここはテレビ局が取材には来ないのか?」

「うちはお断りしていますので」

「ホームページはあるのか?」

「会員の方しか閲覧できません」

「もっと積極的にやればいいのに」

「ここは、のんびりやっていきます。僕一人で料理を作るので」

「俺たちは、情報番組や、グルメガイドをいつも見てるんだ。だから、今までに何百軒という店に行ったぜ」

「お気に入りは何軒くらいありましたか?」

「いやいや、俺たちは、一度行ったら、2度と行かない。一回行けば十分だ」

「おいしい店をお探しなんですか?」

「俺はビールだけでいい。何もいらん。女房は、お茶を出してくれ」

「うちは、コース料理しかないんです。料理屋ですから。お酒だけの方は、どこかの居酒屋にでも行かれたほうがいいですよ」

「俺たちは、知らない店はないんだ。そんなことを行ってるから、取材にも来ないんだ。早くビールを出せ」

「お帰りください」

そのとき、在名テレビの人が来ていた。

「ここは、取材拒否なんですよ。常連だけを大事にする店なのでね」

名刺を見せられ、夫婦は何も言えなくなる。

他の客に責められるように、夫婦は帰っていった。

「あの客、うちにも来たわ」

栄で寿司屋をやっている店の奥さんが言う。

「俺はどこそこにも行ったんだ。あの店にも行ったんだ、って、つまらないことばかり言ってるの。今の人って、自分の舌で店の良し悪しが決められないのね。ガイドブックなしでは、店にも入れないかわいそうな人よ」

妙に納得してしまった。

こんな連中が、「あの店はいい」「あの店は悪い」って決めつけてしまうんだろう。

情けない人間たちと、マスコミに害された人々が、ますます世の中を悪くしていく。

自分の舌と味覚で、行きつけの店を見つけようとする人は、もう少ないのかもしれない。