「訴えられちゃってねぇ」
こんなことを平然と言ってのける人がいる。
朝から大雨になり、また昨日と10度も差のある涼しい午前。
それでも午後は、雨は小降りになり、湿度は97%という異常気象だ。
気温もどんどん上がり、また32度。
雨は夕方になっても小降りが続き、客も来ないのじゃないかと思えるような日だった。
休みの日に少し無理をしたせいか、脚が痛み、イマイチ、やる気のない日だった。
「悪い事したんじゃないですか?」
男は少し薄笑いを見せた。
「浮気したんだよ。人の女房と。だから旦那に訴えられた」
「そりゃ、当然ですよ」
「まぁ、不運だったよ。こんな事で訴えられるなんて」
「いや、立派な反社会的行為ですよ。お客さんだって、自分の女房が誰かに抱かれてたら、嫌でしょ?」
「いやぁ、うちの女房はそんな甲斐性はないからなぁ」
「どうですかね。お客さんと一緒で、悪い事なんて思ってないんじゃないんですか?」
僕はわざと嫌がらせをしてみた。
「俺は悪いとは思ってないんだ。いい女だと思ったからやった。女だって嫌いだと思ってセックスなんかしないさ」
僕はあきれてしまった。
僕は恋をする事は素敵だと思っている。
人を好きになる事は、若さを保つ秘訣だとも思っている。
しかし、他人様の家庭を荒らす事は好きでない。
自分勝手な感情で、不幸な人を作りたくないし、
それよりも、憎みあうような争いはしたくない。
不倫は、道徳上の問題であって、法で裁く事はできない。
心の痛手をお金に変えるという手段で、争うしかないのである。
しかし、だからといって、つまらない事だ。
早く誰かほかの客に来てほしいと願ったが、こんなときに限って誰も来ない。
こんな天候では、わざわざ傘を差して来たくない。
それでも男は話し続ける。
「女だって喜んでいたくせに」
「物好きですね、その女も」
「欲求不満だったんだ。旦那が悪いんだよ。自分の女房さえ、満足させていないんだから」
「お客さんのせいじゃなくて、旦那の責任ですか?」
「そう思うよ、俺は。たまたまメールを見られたから、こんな事になったんだ。不運だったんだよ、俺は」
「悪い事したんじゃないですか。不運じゃなくて、不貞ですよ」
「いやいや、女だって喜んでた。そうじゃなかったら、何度も会わないじゃないか」
「それって、自慢なんですか?」
「そうじゃないけど、こんな事で訴えられるなんておかしいよ」
「僕は当然だと思うんですけどね。それに、そんな事を自慢してる人が要るってことが不思議ですよ」
それでも男は、自分の正当性を話して帰っていった。
もう店を閉めようとしたとき、35歳独身の女性が入ってきた。
昼のランチには毎日来てくれる人だ。
「珍しいね、夜に来るなんて」
「よかったほかにお客がいなくて。こんな天気だから、マスターに相談してみようかと思って」
女性は、元気そうに振舞っていたが、空元気であることは一目でわかる。
「結婚って楽しい?」
とんでもない質問に僕は驚いた。
「結婚なんて、って言ってたじゃないか」
「最近友達がみんな結婚してさ。友達がいなくなっちゃった」
「それで結婚したくなったのか?」
「少しはね」
「結婚なんて、自由がなくなるだけだ、って言ってたじゃないか」
「口ではね」
「正直だね」
「見栄張るのも疲れたって感じかな」
「恋した事ってあるの?」
そう聞きたくなるほど、服装に色気がないのだ。
その割りに人の批判は大好きだ。
「付き合うのが面倒くさいからね」
「付き合った事あるの?」
「ない」
女性は笑った。
「一度もない」
「自慢にならないぜ」
「そうだね。私も好きな人と付き合ってもいいかなって思うようになった」
「楽しいよ、好きな異性とと楽しく過ごすのは」
「チャンスがないよ」
「チャンスを作らなかっただけさ」
「でも男の人って、体だけが目的じゃないの?」
「それでもいいじゃないか。迫られた事もないなら、それは不幸だよ」
「ない。私堅いから」
「堅いんじゃないさ。もてない事の言い訳さ」
「だって、本当にもてないんだもの」
「積極的ななってさ、男に飲みにつれてってもらったりしてさ。寄った振りしてやられちゃえばいいんだよ。簡単にひっかるよ。結婚も夢じゃないぜ」
「でも、セックスって、虜になってしまうって言うじゃない?」
「それでいいさ。セックスの悦びを知ってるから、結婚したいと思うんだ」
「友達でセックスの事ばかり言ってる子がいる。私にはついていけない」
「したくないの?」
「興味はあるけど」
「不倫だって何だっていいさ。人を好きになる事。そして付き合う楽しみや、セックスの魅力を知ると、もっと人生楽しくなると思うけどね」
「マスター、いい人いない?」
「あせってるね。それでもいいさ。いろんな人と付き合ってみるほうがいいさ」
「女から誘うの?」
「もちろん。さりげなくね。来週、行きたい芝居があるんだけど、友達が行けなくなったて言うの。もし、時間があれば、付き合ってもらえませんか? 一人では行きづらくて。なんて言えば、男なんていちころさ。そのとき着ていく服装は、僕がデコレートしてあげるから」
「下着も?」
「もちろん。いざというときのために」
女性は笑った。
「本当に? 私がやっても大丈夫かなぁ」
「大丈夫さ。あなたは、そこから始めなくちゃあね」
「お酒飲めないけど」
「飲めばいいじゃん。すぐにフラフラになって、ホテルに連れ込まれたら」
「ふふっ」
女性は元気に帰って行った。
言い訳で生きるのは寂しい。
もっと自由で、責任の取れる生き方のほうが素敵だと思うのだが。
もちろん僕だって、決して誇れる生き方をしているわけではない。
それでも、今は自信を持って生きている。
自分のために。
大げさだけれど、社会のために。
こんなことを平然と言ってのける人がいる。
朝から大雨になり、また昨日と10度も差のある涼しい午前。
それでも午後は、雨は小降りになり、湿度は97%という異常気象だ。
気温もどんどん上がり、また32度。
雨は夕方になっても小降りが続き、客も来ないのじゃないかと思えるような日だった。
休みの日に少し無理をしたせいか、脚が痛み、イマイチ、やる気のない日だった。
「悪い事したんじゃないですか?」
男は少し薄笑いを見せた。
「浮気したんだよ。人の女房と。だから旦那に訴えられた」
「そりゃ、当然ですよ」
「まぁ、不運だったよ。こんな事で訴えられるなんて」
「いや、立派な反社会的行為ですよ。お客さんだって、自分の女房が誰かに抱かれてたら、嫌でしょ?」
「いやぁ、うちの女房はそんな甲斐性はないからなぁ」
「どうですかね。お客さんと一緒で、悪い事なんて思ってないんじゃないんですか?」
僕はわざと嫌がらせをしてみた。
「俺は悪いとは思ってないんだ。いい女だと思ったからやった。女だって嫌いだと思ってセックスなんかしないさ」
僕はあきれてしまった。
僕は恋をする事は素敵だと思っている。
人を好きになる事は、若さを保つ秘訣だとも思っている。
しかし、他人様の家庭を荒らす事は好きでない。
自分勝手な感情で、不幸な人を作りたくないし、
それよりも、憎みあうような争いはしたくない。
不倫は、道徳上の問題であって、法で裁く事はできない。
心の痛手をお金に変えるという手段で、争うしかないのである。
しかし、だからといって、つまらない事だ。
早く誰かほかの客に来てほしいと願ったが、こんなときに限って誰も来ない。
こんな天候では、わざわざ傘を差して来たくない。
それでも男は話し続ける。
「女だって喜んでいたくせに」
「物好きですね、その女も」
「欲求不満だったんだ。旦那が悪いんだよ。自分の女房さえ、満足させていないんだから」
「お客さんのせいじゃなくて、旦那の責任ですか?」
「そう思うよ、俺は。たまたまメールを見られたから、こんな事になったんだ。不運だったんだよ、俺は」
「悪い事したんじゃないですか。不運じゃなくて、不貞ですよ」
「いやいや、女だって喜んでた。そうじゃなかったら、何度も会わないじゃないか」
「それって、自慢なんですか?」
「そうじゃないけど、こんな事で訴えられるなんておかしいよ」
「僕は当然だと思うんですけどね。それに、そんな事を自慢してる人が要るってことが不思議ですよ」
それでも男は、自分の正当性を話して帰っていった。
もう店を閉めようとしたとき、35歳独身の女性が入ってきた。
昼のランチには毎日来てくれる人だ。
「珍しいね、夜に来るなんて」
「よかったほかにお客がいなくて。こんな天気だから、マスターに相談してみようかと思って」
女性は、元気そうに振舞っていたが、空元気であることは一目でわかる。
「結婚って楽しい?」
とんでもない質問に僕は驚いた。
「結婚なんて、って言ってたじゃないか」
「最近友達がみんな結婚してさ。友達がいなくなっちゃった」
「それで結婚したくなったのか?」
「少しはね」
「結婚なんて、自由がなくなるだけだ、って言ってたじゃないか」
「口ではね」
「正直だね」
「見栄張るのも疲れたって感じかな」
「恋した事ってあるの?」
そう聞きたくなるほど、服装に色気がないのだ。
その割りに人の批判は大好きだ。
「付き合うのが面倒くさいからね」
「付き合った事あるの?」
「ない」
女性は笑った。
「一度もない」
「自慢にならないぜ」
「そうだね。私も好きな人と付き合ってもいいかなって思うようになった」
「楽しいよ、好きな異性とと楽しく過ごすのは」
「チャンスがないよ」
「チャンスを作らなかっただけさ」
「でも男の人って、体だけが目的じゃないの?」
「それでもいいじゃないか。迫られた事もないなら、それは不幸だよ」
「ない。私堅いから」
「堅いんじゃないさ。もてない事の言い訳さ」
「だって、本当にもてないんだもの」
「積極的ななってさ、男に飲みにつれてってもらったりしてさ。寄った振りしてやられちゃえばいいんだよ。簡単にひっかるよ。結婚も夢じゃないぜ」
「でも、セックスって、虜になってしまうって言うじゃない?」
「それでいいさ。セックスの悦びを知ってるから、結婚したいと思うんだ」
「友達でセックスの事ばかり言ってる子がいる。私にはついていけない」
「したくないの?」
「興味はあるけど」
「不倫だって何だっていいさ。人を好きになる事。そして付き合う楽しみや、セックスの魅力を知ると、もっと人生楽しくなると思うけどね」
「マスター、いい人いない?」
「あせってるね。それでもいいさ。いろんな人と付き合ってみるほうがいいさ」
「女から誘うの?」
「もちろん。さりげなくね。来週、行きたい芝居があるんだけど、友達が行けなくなったて言うの。もし、時間があれば、付き合ってもらえませんか? 一人では行きづらくて。なんて言えば、男なんていちころさ。そのとき着ていく服装は、僕がデコレートしてあげるから」
「下着も?」
「もちろん。いざというときのために」
女性は笑った。
「本当に? 私がやっても大丈夫かなぁ」
「大丈夫さ。あなたは、そこから始めなくちゃあね」
「お酒飲めないけど」
「飲めばいいじゃん。すぐにフラフラになって、ホテルに連れ込まれたら」
「ふふっ」
女性は元気に帰って行った。
言い訳で生きるのは寂しい。
もっと自由で、責任の取れる生き方のほうが素敵だと思うのだが。
もちろん僕だって、決して誇れる生き方をしているわけではない。
それでも、今は自信を持って生きている。
自分のために。
大げさだけれど、社会のために。