11月19日、悪天候の中、民法合同ゼミが開催されました。
民法合同ゼミは、2005年の夏、佐藤義彦先生の発案で、4年ゼミの合同ゼミを行ったことがきっかけで始まりました。当時の参加ゼミは、佐藤ゼミ、上田ゼミ、梶山ゼミ(7期生)で、出題者は野々村先生、交通事故と医療過誤の競合事例でした。
今の「3年生合同ゼミ」の形で正式に始まったのは、2007年秋です。初回の参加ゼミは、佐藤ゼミ、野々村ゼミ、梶山ゼミ(10期生)、テーマは集合動産譲渡担保でした。
2008年秋が第2回目、参加ゼミは神谷ゼミ、上田ゼミ、野々村ゼミ、梶山ゼミ(11期生)、立論形式で、テーマは177条がらみでした。
2009年秋が第3回目、参加ゼミは神谷ゼミ、上田ゼミ、野々村ゼミ、梶山ゼミ(12期生)、欠陥住宅での事故がテーマでした。LSの法廷教室での開催でした。
2010年秋が第4回目、参加ゼミは神谷ゼミ、野々村ゼミ、荻野ゼミ、梶山ゼミ(13期生)、所有権留保のついた車が他人の土地に放置されていた場合の明渡しと損害賠償が問題になりました。
そして、今回が第5回目です。
(最近、記憶に自信がなくなってきたので、とりあえず、記録しておきます)
今年度も、荻野先生が出題してくださいました。3年連続です。ありがとうございます。
今年度の事案は・・・
毎年、大変な目に遭っている呉服屋の野村一善さんですが、今年は、野村さんが梶河ローンから融資を受けたところから物語が始まります。
当初、借入枠5000万円の融資契約締結にあたり、野村さんは自己所有の不動産に極度額5000万円の根抵当権を設定します。
何度か借入れと返済を繰り返し、残債務額が計3500万円の時点で、野村さんは1000万円の追加融資を申し込みますが、梶河ローンは追加担保がないと、追加融資はできないと断ります。野村さんは、公務員である兄、神屋さんに連帯保証人になってくれるよう依頼し(今年は紙谷さんではありません!)、神屋さんはしぶしぶ引き受けます。これを受けて、梶河ローンは、500万円の追加融資をし、これにつき、神屋さんとの間で連帯保証契約を結びます。
もっとも、500万円では足りませんから、野村さんは、萩野バンクにも融資を申し込みますが、やはり無担保では断られてしまいます。
そこで、呉服屋の店舗を借りる際、父である吉信さんが賃貸人である植田誠子さんに差し入れている敷金を担保にすることになりました。具体的には、吉信さんが萩野バンクのため、植田さんに対する敷金返還債権に質権を設定しました。
しかし、それでもまだ100万円足りませんから、結局、野村さんは手形の不渡りを出してしまい、事実上梼Yしてしまいます。
梶河ローンは根抵当権を実行します。配当表では、配当金全額(2500万円)が梶河ローンに交付されることになっていました。
しかし、梶河ローンに500万円を弁済した神屋さんは、これに不服を申し立てます。保証人として野村さんの債務を肩代わりした神屋さんは、「弁済者代位」により、梶河ローンが野村さんに対して有していた債権とその担保権を行使することができるので、自分にも少し配当があるはずだというわけです。もっとも、梶河ローンからすれば、追加担保をつけたばかりに、自分の取り分が減ってしまうのは納得がいきません。
これが第1部の討論です。
神屋さん側は神谷ゼミ。
梶河ローン側は野々村ゼミ。
他方、呉服屋が事実上梼Yしてしまった野村家では、吉信さんがそれ以降、月50万円の賃料を払うのがバカバカしくなって支払わなくなりました。その後、植田さんと賃貸借契約を合意解除するまでの未払い賃料額は300万円になってしまいました。
植田さんは良心的に未払い賃料額だけ控除して、残額は全て返してくれましたが、100万円にしかなりません。つまり、萩野バンクとしては400万円の敷金返還債権に質権を設定したのに、敷金返還債権は100万円になってしまったわけです。それというのも、吉信さんが敢えて賃料を支払わなかったせいですから、萩野バンクとしては納得がいきません。差額の300万円を吉信さんに返してほしいと主張します。
これが第2部の討論です。
萩野バンク側は荻野ゼミ。
そして、吉信さん側は梶山ゼミ。
論者の服装に注目してください。なんとなく、どことなくカラフル・・・理由はこちら。
少し勉強している人なら、お気づきかと思いますが・・・
第1部については最高裁平成17年1月27日判決、第2部については最高裁平成18年12月21日判決が参考になります。しかし、全く同じ事案ではありません。それぞれ、少し違うところがあります。
仮に判例を支持するとしても、「違い」が結論に与える影響を考えなければなりません。
第1部については、平成17年の前に、最高裁昭和60年5月23日判決があり、平成17年判決とは異なる処理をしています。
昭和60年判決は「抵当権の被担保債権の一部弁済」の事例であり、平成17年判決は「一個の抵当権が複数の債権を担保する場合の一個の債権の全部弁済」の事例であったわけですが、今回の事例は「根抵当権によって担保される複数の債権のうちの一つに対する弁済」ですから、どちらのケースにあたるのかが問題となります。また、そもそも、最高裁の判断そのものの是非も問題にする必要があるかもしれません。
第2部に関する平成18年判決は、債務者自身の有する敷金返還債権に質権が設定されていた事案で、かつ債務者が破産しましたので、破産管財人の責任が問われたものです。ですから、やはり、今回の出題とは異なります。
今年は設問がそれぞれ独立しており、かつ難易度もやや高かったのか、特に第1部の議論は例年に比べると、おとなしく、問題の核心にいきそうでいかない、という状態のまま、終わりました。
第2部は、梶山ゼミの(おそらく、荻野ゼミにとっては想定外の)奇抜な立論で、活性化しましたが、お互いの「真意」が伝わりきらず(それはもしかしたら、自分たちでも「真意」が分かっていなかったせいかもしれませんが)、なかなか議論がかみ合いませんでした。
さて、気になる質問者賞及びゼミ賞は・・・
最優秀ゼミ賞は荻野ゼミ。立論、質疑応答ともに安定していた点が評価されました。
質問者賞は、各部3人ずつ選び、そのうちの1人をMVPにと言われていたのですが、
第1部のMVPは該当者なし。
3人には、神谷ゼミのNくん「神屋さんが行使する債権は求償権ではなく、原債権であるから、梶河の債権に劣後するいわれはない」ことを指摘した点、それに対し、条文の趣獅・まえて応接した野々村ゼミのOくん、フロアから問題の核心へ誘導する質問をした荻野ゼミのKくんが選ばれました。
第2部のMVPは荻野ゼミのTくん、最初は正直、外れの発言も多かったのですが、尻上がりに調子が出てきました。梶山ゼミの理屈では、担保設定者の行動が「悪質」と評価される余地はあるのか、との指摘などが光っていました。
残り2名には、「梶山ゼミのTです。お答えします」と終始「涼しい顔」で冷静な答弁を行ったTさん、第1部で受賞したKくんとともにマイクをとりあいして、するどい発言を繰り出していたOくんが選ばれました。
その他、実行委員が選ぶ個人賞としては、第2部で唯一フロアから質問した神谷ゼミのTくん(生野高校61期で、梶山の後輩らしい・・・)、核心に迫る質問をしたはずなのに流されてしまった野々村ゼミのKくんが受賞。
おめでとうございました。
6時半からの懇親会まで、1時間以上時間があり、どうせコンパ会場ではガツガツ食べられないだろうということから、神谷先生、O原TA、梶山の3人は某所でパンケーキを食べておりました。
で、気が付くと、6時半をすぎていたらしく・・・神谷ゼミの人が恐るべき勘で私たちを探し出し、「みんなが待ってます」と呼びにきてくれました。
あとで携帯を見たら、荻野先生や実行委員のSさんからメールや着信が・・・ごめん!!!
ま、そんなこんなで、長い一日が終わりました。
来年もまた開催しますから、2年生のみなさん、楽しみに(!?)しておいてね。
民法合同ゼミは、2005年の夏、佐藤義彦先生の発案で、4年ゼミの合同ゼミを行ったことがきっかけで始まりました。当時の参加ゼミは、佐藤ゼミ、上田ゼミ、梶山ゼミ(7期生)で、出題者は野々村先生、交通事故と医療過誤の競合事例でした。
今の「3年生合同ゼミ」の形で正式に始まったのは、2007年秋です。初回の参加ゼミは、佐藤ゼミ、野々村ゼミ、梶山ゼミ(10期生)、テーマは集合動産譲渡担保でした。
2008年秋が第2回目、参加ゼミは神谷ゼミ、上田ゼミ、野々村ゼミ、梶山ゼミ(11期生)、立論形式で、テーマは177条がらみでした。
2009年秋が第3回目、参加ゼミは神谷ゼミ、上田ゼミ、野々村ゼミ、梶山ゼミ(12期生)、欠陥住宅での事故がテーマでした。LSの法廷教室での開催でした。
2010年秋が第4回目、参加ゼミは神谷ゼミ、野々村ゼミ、荻野ゼミ、梶山ゼミ(13期生)、所有権留保のついた車が他人の土地に放置されていた場合の明渡しと損害賠償が問題になりました。
そして、今回が第5回目です。
(最近、記憶に自信がなくなってきたので、とりあえず、記録しておきます)
今年度も、荻野先生が出題してくださいました。3年連続です。ありがとうございます。
今年度の事案は・・・
毎年、大変な目に遭っている呉服屋の野村一善さんですが、今年は、野村さんが梶河ローンから融資を受けたところから物語が始まります。
当初、借入枠5000万円の融資契約締結にあたり、野村さんは自己所有の不動産に極度額5000万円の根抵当権を設定します。
何度か借入れと返済を繰り返し、残債務額が計3500万円の時点で、野村さんは1000万円の追加融資を申し込みますが、梶河ローンは追加担保がないと、追加融資はできないと断ります。野村さんは、公務員である兄、神屋さんに連帯保証人になってくれるよう依頼し(今年は紙谷さんではありません!)、神屋さんはしぶしぶ引き受けます。これを受けて、梶河ローンは、500万円の追加融資をし、これにつき、神屋さんとの間で連帯保証契約を結びます。
もっとも、500万円では足りませんから、野村さんは、萩野バンクにも融資を申し込みますが、やはり無担保では断られてしまいます。
そこで、呉服屋の店舗を借りる際、父である吉信さんが賃貸人である植田誠子さんに差し入れている敷金を担保にすることになりました。具体的には、吉信さんが萩野バンクのため、植田さんに対する敷金返還債権に質権を設定しました。
しかし、それでもまだ100万円足りませんから、結局、野村さんは手形の不渡りを出してしまい、事実上梼Yしてしまいます。
梶河ローンは根抵当権を実行します。配当表では、配当金全額(2500万円)が梶河ローンに交付されることになっていました。
しかし、梶河ローンに500万円を弁済した神屋さんは、これに不服を申し立てます。保証人として野村さんの債務を肩代わりした神屋さんは、「弁済者代位」により、梶河ローンが野村さんに対して有していた債権とその担保権を行使することができるので、自分にも少し配当があるはずだというわけです。もっとも、梶河ローンからすれば、追加担保をつけたばかりに、自分の取り分が減ってしまうのは納得がいきません。
これが第1部の討論です。
神屋さん側は神谷ゼミ。
梶河ローン側は野々村ゼミ。
他方、呉服屋が事実上梼Yしてしまった野村家では、吉信さんがそれ以降、月50万円の賃料を払うのがバカバカしくなって支払わなくなりました。その後、植田さんと賃貸借契約を合意解除するまでの未払い賃料額は300万円になってしまいました。
植田さんは良心的に未払い賃料額だけ控除して、残額は全て返してくれましたが、100万円にしかなりません。つまり、萩野バンクとしては400万円の敷金返還債権に質権を設定したのに、敷金返還債権は100万円になってしまったわけです。それというのも、吉信さんが敢えて賃料を支払わなかったせいですから、萩野バンクとしては納得がいきません。差額の300万円を吉信さんに返してほしいと主張します。
これが第2部の討論です。
萩野バンク側は荻野ゼミ。
そして、吉信さん側は梶山ゼミ。
論者の服装に注目してください。なんとなく、どことなくカラフル・・・理由はこちら。
少し勉強している人なら、お気づきかと思いますが・・・
第1部については最高裁平成17年1月27日判決、第2部については最高裁平成18年12月21日判決が参考になります。しかし、全く同じ事案ではありません。それぞれ、少し違うところがあります。
仮に判例を支持するとしても、「違い」が結論に与える影響を考えなければなりません。
第1部については、平成17年の前に、最高裁昭和60年5月23日判決があり、平成17年判決とは異なる処理をしています。
昭和60年判決は「抵当権の被担保債権の一部弁済」の事例であり、平成17年判決は「一個の抵当権が複数の債権を担保する場合の一個の債権の全部弁済」の事例であったわけですが、今回の事例は「根抵当権によって担保される複数の債権のうちの一つに対する弁済」ですから、どちらのケースにあたるのかが問題となります。また、そもそも、最高裁の判断そのものの是非も問題にする必要があるかもしれません。
第2部に関する平成18年判決は、債務者自身の有する敷金返還債権に質権が設定されていた事案で、かつ債務者が破産しましたので、破産管財人の責任が問われたものです。ですから、やはり、今回の出題とは異なります。
今年は設問がそれぞれ独立しており、かつ難易度もやや高かったのか、特に第1部の議論は例年に比べると、おとなしく、問題の核心にいきそうでいかない、という状態のまま、終わりました。
第2部は、梶山ゼミの(おそらく、荻野ゼミにとっては想定外の)奇抜な立論で、活性化しましたが、お互いの「真意」が伝わりきらず(それはもしかしたら、自分たちでも「真意」が分かっていなかったせいかもしれませんが)、なかなか議論がかみ合いませんでした。
さて、気になる質問者賞及びゼミ賞は・・・
最優秀ゼミ賞は荻野ゼミ。立論、質疑応答ともに安定していた点が評価されました。
質問者賞は、各部3人ずつ選び、そのうちの1人をMVPにと言われていたのですが、
第1部のMVPは該当者なし。
3人には、神谷ゼミのNくん「神屋さんが行使する債権は求償権ではなく、原債権であるから、梶河の債権に劣後するいわれはない」ことを指摘した点、それに対し、条文の趣獅・まえて応接した野々村ゼミのOくん、フロアから問題の核心へ誘導する質問をした荻野ゼミのKくんが選ばれました。
第2部のMVPは荻野ゼミのTくん、最初は正直、外れの発言も多かったのですが、尻上がりに調子が出てきました。梶山ゼミの理屈では、担保設定者の行動が「悪質」と評価される余地はあるのか、との指摘などが光っていました。
残り2名には、「梶山ゼミのTです。お答えします」と終始「涼しい顔」で冷静な答弁を行ったTさん、第1部で受賞したKくんとともにマイクをとりあいして、するどい発言を繰り出していたOくんが選ばれました。
その他、実行委員が選ぶ個人賞としては、第2部で唯一フロアから質問した神谷ゼミのTくん(生野高校61期で、梶山の後輩らしい・・・)、核心に迫る質問をしたはずなのに流されてしまった野々村ゼミのKくんが受賞。
おめでとうございました。
6時半からの懇親会まで、1時間以上時間があり、どうせコンパ会場ではガツガツ食べられないだろうということから、神谷先生、O原TA、梶山の3人は某所でパンケーキを食べておりました。
で、気が付くと、6時半をすぎていたらしく・・・神谷ゼミの人が恐るべき勘で私たちを探し出し、「みんなが待ってます」と呼びにきてくれました。
あとで携帯を見たら、荻野先生や実行委員のSさんからメールや着信が・・・ごめん!!!
ま、そんなこんなで、長い一日が終わりました。
来年もまた開催しますから、2年生のみなさん、楽しみに(!?)しておいてね。