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海外報道紹介☆英国における二大政党制の終焉の意味するもの(下)

2010年05月17日 13時29分44秒 | 英字新聞と英語の雑誌から(~2010年)



The Tory leader arrived in Downing Street last night after five days of wrangling ended in an admission of defeat from Gordon Brown and an unprecedented power-sharing deal.

Before walking through the door of No 10 he promised that he would be leading a “full and proper” coalition to usher in a new era of responsibility.

Mr Clegg, the Lib Dem leader, joined him this morning and the two men got down to the hard task of forming the first coalition government since the Second World War, when the Winston Churchill made Clement Attlee his deputy in a government of national unity.


保守党党首のキャメロン氏は【首相官邸のある】ダウニング街に昨晩【2010年5月11日】到着した。それは、ゴードン・ブラウン首相が敗北を認めたこと、すなわち、絶後ではないかもしれないが空前の連立政権樹立の取決めによって新政権の枠組みを巡る5日間の紛糾が終わった後のことであった。

首相官邸に入る際に、キャメロン新首相は、それが責任を果たさなければこの国は大変な事態に陥る時代状況の中で連立政権を軌道に乗せるべく「十全かつ適切」に連立政権を率いることを約束した。

自民党党首のクレッグ氏は、今朝、新首相と落ち合い、挙国一致内閣においてウィンストン・チャーチル首相がクレメント・アトリー氏を彼の副首相に任命した第二次世界大戦以来となる連立内閣の組閣という難事に両者は着手した。   





The share-out of the Cabinet seats quickly showed that this was a real coalition: there will be at least five Liberal Democrats around the Cabinet table, including Mr Clegg, Vince Cable as Business Secretary and David Laws as Chief Secretary to the Treasury.

Mr Cameron’s closest allies, George Osborne and William Hague, were confirmed as Chancellor and Foreign Secretary. Michael Gove becomes Education Secretary, Liam Fox gets Defence and Ken Clarke, displaced from Business by Mr Cable, becomes Justice Secretary.

The most surprising appointment was that of Theresa May to head the Home Office, ensuring a woman in one of the key offices of state.


新内閣の閣僚ポストの配分はこの内閣が本物の連立政権であることを端的に表している。すなわち、クレッグ副首相、ビンス・ケーブル経済相、デビッド・ローズ財務省主席副大臣を含む少なくとも5人の閣僚が自民党から選ばれたのだから。

キャメロン首相の盟友、ジョージ・オズボーンと後見役のウイリアム・ヘイグの両氏はそれぞれ蔵相と外相に任命され、マイケル・ゴーブ氏が教育相に、リアム・フォックス氏が国防相、ケーブル氏に意中のポストをさらわれたかっこうのケネス・クラーク氏は法相のポストを得た。

而して、最も注目すべきは、テレサ・メイ女史の内相への起用である。これは重要閣僚への女性の登用を意味するのだから。   




The Cameron-Clegg press conference in the Downing Street garden was one for the connoisseur as the two men, so similar in age and background and — it now appears — in political outlook, successfully argued that the coalition they had created was built to last. ・・・

One of the first tests of the coalition will be in the forthcoming Thirsk & Malton election contest, held over from the general election because of the death of a candidate.

Mr Cameron said: “We are not merging our two parties so we’d expect our parties to put up candidates and to campaign in that intensely reasonable way in which we always do.”

But he said that the parties would be expected to show commitment to the coalition government.

“Of course people sometimes will want to take a stand on an issue but the aim is to have both parties firmly committed to a coalition agreement that is set out in full detail, that can set out in full detail, that will provide the good and stable government, and the reforms, that our country need,” he said.

“That is is the aim and I think in a very short period of time we have come a huge way to achieve it.”


ダウニング街【の首相官邸】で行なわれた「キャメロン-クレッグ」両氏の共同記者会見は玄人好みのものだった。というのも、年齢的にも氏育ちも、そして、これは今回明らかになったことなのだけれども政治的なものの見方の面でもよく似通ったこの両者は、彼等が発足させた連立政権を【5年間は】持続させねばならないことを十分に説得力を感じさせながら示したのだから。(中略)

連立政権が持続するかどうかが試される最初の試金石は、候補者の急死のために総選挙から外されたThirsk & Maltonの間近に迫っている選挙になろう。

これについてキャメロン首相は、「両党は合併したわけではないのだから、両党共にとことん合理的に今までそうやってきたのと同じやり方で自党の候補を後押しして選挙を戦うだけですよ」と語っている。

しかし、選挙とは別次元で、保守・自民の両党が連立政権に主体的かつ真摯に関わるべきことも当然だとも新首相は語っている。

「もちろん、両党とも時にはある争点については自説を譲らず相手に反抗したいと思うこともあるでしょう。しかし、連立の目的は、連立協定に基づき両党の連携を強固にすることなのです。細部まで十分に検討して発表された、また、それにより細部に亘る諸々の具体的施策への着手が可能な、而して、我が国が必要としている有能で安定感のある政府を具現しうる連立協定を中心として両党が連立政権に共に責任を負うことが連立の目的なのです」と新首相は語ったのだ。

「すなわちこれが連立の目的であり、蓋し、私は極めて短期間に新しい連立政権が多大な成果を上げることを確信しています」とも。    




Mr Clegg, who has the greater experience of European politics, said that the coalition represented a “very significant change” for British voters.

But he went on: In other political cultures it would not be even a faintly radical thought that parties might co-operate with each other in government for the good of the country, but campaign against each other at election time.

“That is precisely the kind of thing that you will see now. I hope people will find it relatively unsurprising relatively quickly.”


ヨーロッパ大陸諸国の政治に造詣の深いクレッグ氏は、英国の有権者の目には連立政権は「驚天動地の変革」と映るのだろうと述べた。

しかし、と新副首相は続ける。他の政治文化では、国家と国民のために諸政党が政権運営では互いに協力し責任を負いながらも、選挙になれば他を打ち負かそうと鋭意努力することは少しも過激な考えではない。

蓋し、「正にそのようなことが今英国でも起ころうとしているのです。私は、英国の有権者・国民がこのような連立政権がそう驚くべきことではないということをそう月日が経過しないうちに理解していただければ嬉しいと思います」とも。    





■後記
冒頭にも述べたように、「グローバル化の昂進著しい、大衆民主主義下の福祉国家を与件」とするとき、各政党の政策は「収斂」せざるを得ず、よって、これまでは水と油、否、不倶戴天の敵同士と見られていた諸政党が連立政権を形成する条件は整ってきている。と、そう私は考えています。

否、今回の英国の連立政権が、より政策とイデオロギーの近い「労働党-自民党」ではなく、比較的それらの差異が大きい「保守党-自民党」によって樹立されたように、支持基盤やイデオロギーの類似性は「近親憎悪」的な感情を惹起させ(もっと率直に言えば、労働党と自民党は総選挙では同じ有権者層の票を奪い合っている直接の敵なのだから)むしろ、些か、異質な政党同士の方が連立を組みやすいの、鴨。この経緯は、日本の場合、支持層が重なる公明党と共産党、イデオロギーが近しい共産党と社民党の関係を想起すれば分かりやすい、鴨。

いずれにせよ、(A)政策面での各政党の違いが漸次極小化していること、他方、(K)これまたグローバル化の昂進に伴い「世界の唯一の超大国=アメリカ」もその超大国の地位を世界資本主義システム自体に<大政奉還>しつつある現在、畢竟、世界の相互依存関係の深化と世界の不安定化もまた加速している現在、すなわち、安定した実行力のある政府の形成が今までよりも一層必要になっている現在、連立政権、就中、大連立による政治的に盤石な政権の誕生は時代が要求しているものかもしれません。まして、(B)福祉国家における行政権の肥大化に基づく政策の収斂や時の政権のフリーハンドの余地の縮小とは逆に、グローバル化の昂進の中で有権者・国民の価値観が多様化する傾向を鑑みるならば、連立政権は人類史の必然とさえ考えられると思います。    

では、日本でも、より連立政権を具現しやすい比例代表制や中選挙区制を大胆に採用すべきなのか。宮澤内閣(1991年-1993年)以来の政治改革の潮流の中で、アメリカの「共和党-民主党」の二大政党制とともに日本の政治が目指すべきお手本と喧伝された英国の二大政党制が今回潰えたことを見て、そう語る論者もおられるようです。しかし、私はそのような議論には与しません。



蓋し、「いつでもどこでも、すなわち、普遍的に優れた選挙制度などは存在しない」のではないでしょうか。而して、2010年の英国においては連立政権が歴史的必然であり、今後、比例代表制を大幅に組み込んだ下院の選挙制度を導入するのが英国の順路かもしれない。けれども、日本の場合には英国とは置かれている政治状況も異なり、よって、2010年の日本においても比例代表制や中選挙区制が望ましいとは当然のようには言えないと思うのです。

畢竟、日本の政党政治が現在抱えている死活的に重要な問題は、(甲)有権者・国民の多様な意見や価値観の受け皿となる政党が存在しない、あるいは、有権者・国民の多様な価値観や意見が数量的に(ある許容限度内で)正確に諸政党の党勢に反映されていないことなどではなく、(自民党と民主党保守派の得票率を合算すれば)有権者・国民の圧倒的多数を占める保守層の受け皿となる政党が存在しないことではないか。而して、(乙)二大政党の一方の当事者として期待する向きもあった民主党が、経済政策・社会政策の拙劣さ荒唐無稽さは置いておくとしても、①安全保障政策、②文化・伝統の顕揚と涵養による社会統合という二点において(欧米を見渡す限り、左翼政権であろうと中道左派政権であろうと、政権与党の「必須科目」であるこの二点において)政権与党としては致命的に拙劣であること。まして、社民党・共産党は問題外の外であることだと思います。    

要は、日本には、政治力において有権者・国民の圧倒的支持を期待でき、かつ、能力的にも政権を担える政治勢力は、自民党内と民主党内の保守派、その他、有象無象の保守系新党の人士に散在している。

而して、日本の政治が孕む現下の問題を上の如く捉えた場合、比例代表制の本格導入はこの「市場=有権者・国民」のニーズと「商品供給=政治政党」を パラドキシカルにも乖離させる危険性が高く、現下の政治情勢においては日本では自民党と(鳩山政権の崩壊を「他山の石」として学習した)党内保守派が主導する民主党の二大政党制が次善であり、自民党内の保守改革派を中心に諸政党に散在するすべての保守派を糾合した新生自民党による一党独裁が最善である。   

ならば、憲法改正を嚆矢とする保守政党による戦後民主主義の清算が終わり、日本政治の新しいプラットフォームが形成されるまでは小選挙区制がむしろ望ましい。而して、比例代表制が最善の選挙制度になるのは日本ではその後の歴史段階においてである。と、そう私は考えています。尚、民主党政権の正体と自民党再生の方途に関しては下記拙稿をご一読いただければ嬉しいです。

・民主党政権の誕生は<明治維新>か<建武新政>か
 http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/caa65d231ce5fc4dcfecc426f8c6810a

・自民党解体は<自民党>再生の道
 http://kabu2kaiba.blog119.fc2.com/blog-entry-718.html







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