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サッカーあれこれ(50)

◎「サッカーって遊び」
 「あなたにとってサッカーとは何ですか」
 テレビの若いレポーターが、48歳の現役選手・三浦知良に、こんな質問をしていました。
 プロ野球の長嶋茂雄さんあたりなら、直ちに「野球とはいわゆる人生だよ」とでも答えるでしょう。若いレポーターも、三浦カズに「人生」とか「夢」とか「生きがい」とでも答えてほしかったようですが、彼は違っていました。
 「あっ、そういう質問がいちばん困るんだな。サッカーって趣味だし、遊びでしょ」
 昨年のブラジルWカップでのこと。日本代表が1分1敗の土壇場で、コロンビアと対戦する緊張状態の時、三浦カズがテレビでこう言っていました。
 「肩の力を抜いて、みんな楽しんでくればいいんだよ」
 これは元選手でテレビ解説をやっている、実質応援団の解説者にはなかなか言えないことです。「楽しんでおいで」なんて。
 三浦選手は昨年のJリーグ出場は、わずかに2試合計4分間です。普通なら引退でしょう。だが、誰が何といおうと彼は頑張っている。彼にとってサッカーは趣味であり遊びなんです。お金なんかを超越しています。一本筋の通った生き方には、すごいなと敬服せざるを得ません。

◎必要な楽しむ精神
 こういう時に古い教訓話を言い出すのは、私の悪いくせですが、論語にこうあります。
 「知る者は好むに如かず。好む者は楽しむに如かず」
 知るだけではたいしたことない。知ることが楽しみになる。つまり喜びにならなければ、いくら学問に励んでもしようがない、という意味です。
 サッカーも同じです。サッカーは三浦選手が言うように、もともと「遊び」であり、個人それぞれの「趣味」なんです。だから基本的に気楽にたのしむべきものです。
 いくら巧くなっても、ボールを蹴る喜びを知らなくては仕様がない。楽しむ精神がなくてはコチコチになって勝てないということでもあります。

◎思考停止のサッカー
 日本のスポーツは、まだまだ「体育」なんです。教え教えられ、規律を守り、歯をくいしばっ頑張る。人格養成に役立てる。まさに「野球は人生」なんです。有名なスポーツ研究者は体育学者だし、日本体育協会や体育の日なんです。
 いまのサッカーの日本代表チームも、残念ながら「体育」の残渣が残って思考停止の状態です。規律のための規律になっている。選手は枠にはめられことを好む。そんな雰囲気が、一方でビジネス化して豊かになり、スター化し奇妙な功名心にかられるようになった。選手は義務をおわされ「気楽に楽しむ」という基本的な余裕を見失っています。
 これは欧米各国とのサッカーに対する考え方の決定的な差、歴史や文化の差ともいえます。この状態を脱却しなければ、日本は永遠に「サッカー大国」になれないでしょう。その点で三浦カズの生き様はたいしたものです。
 若いころブラジルで過ごしたカズの考えは、ジーコにつながるものです。ジーコは監督として失敗し、日本のサッカー評論家から最低の監督と評価されていますが、「結果さえよければ経過は問わない」と自由さを尊重したジーコはたいした監督でした。選手がジーコの哲学についていけなかっただけです。
 ジーコ風な考えがが理解できなければ、日本の未来はないとまで私は思っています。
(以下次号)



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