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サッカーあれこれ(37)

◎ネイマールに遊ばれた
 シンガポールでのブラジルとの試合。日本代表は「完敗」の上に、もうひとつ「完」が付くくらいの「完々敗で」した。見ていて気の毒なくらい無残。
 技術的な差はもちろん、身体的能力、身のこなし、一対一の強さ、球ぎわの強さ、スムースな基本的な動きと流れるような球さばき、身についたズル賢さ、ここぞという時の猛然たるスピードなどなど、ブラジルはすごかった。
 サッカーでは弱い相手と試合するとき、チームの長所がどんどん出てくるといわれますが、まさにそれ。生け贄になったあわれな日本代表。
 グラウンドが砂場状態で悪かった。日本は多数の新人を起用したテスト試合だった。かもしれないが、手も足も出なかったとは情けない。まるで富士山から8000メートル級のエベレストでも見ているよう。みんな一生懸命やっているんだろうけど、まだまだなんだなあ、日本のサッカーは。
 W杯でドイツに惨敗した地元ブラジル。その悔しさをぶちまけたような気合の入ったスキのない動き、その底力と世界レベルには舌を巻くばかり。その試合振りから、次のロシアW杯まで、親善試合でも「1敗もしないぞ」というドゥンガ新監督の意気込みがうかがえました。
 我が国の主要紙は「王国の壁厚く」「アギーレJに高い壁」「ブラジルに何もできず」「0-4以上の惨敗」「屈辱の選考会」「疾風ネイマール4発」などの見出しをつけましたが、中でも最も傑作なのは日刊スポーツの「ネイマールに遊ばれちゃった」。本当にいいようにやられちゃった。

◎敗戦の責任は協会にも
 就任間もないアギーレ監督に、私は同情します。日本代表を把握するには短期間過ぎます。日本に何が足りなくて、何が長所かなどなど理解できているのでしょうか。
 こういう状態で、来年1月のアジア・カップに臨まなくてはならないのはつらいところ。
 小手先のフォーメーションとか、戦術や戦型、選手起用ウンヌンで解決する問題ではないでしょう。体の造りから違っている。それでも今度はアジア相手。もし優勝できなかったらどうなる。たぶん責任問題が起きるでしょう。
 韓国、豪州、湾岸諸国、それにウズベキスタンも強いぞ。それとも、新人に見切りをつけて長友を使い、長谷部らベテランを呼び戻しますか。それならザッケローニと同じじゃないか。なんの進歩もない。今までの繰り返し。
 協会の技術委は、アギーレを選んだ理由をこう言っています。「日本代表にない、勝ち切るだけの勝負強さ、メンタリティーの強さを学ばせてもらうため、修羅場を経験して、引き出しの多いアギーレを選んだ」と。だが、目先の勝敗のためにアギーレを雇ったとしたら情けない。
 付け焼き刃的に、使い古した外人監督を雇う。こういう強化環境しか作れない日本サッカー協会のお偉方の無能と無責任。何とかならんでしょうか。

◎万機公論に決すべし
 セ大阪のフォルランへのインタビュー(10月13日付け朝日新聞)で、興味深い記事を発見しました。彼は日本選手の印象をこう語っています。
 「日本選手は試合中に絶対やってはいけない致命的なミスをしてしまうことがある」「思うに、日本人はプランを立て、物作りをすることは得意。サッカーでも練習では、決められたことはしっかりできる。でも、実戦では選手が感じて、状況に合わせないといけないことが多い」……。
 フォルランは短期間に日本選手の特徴を的確に掴んでいます。サッカーではコツコツと努力して平均点をとるだけではダメ。時に臨んで臨機応変の処置がとれることが大切。サッカーを知り抜いた人たちの天才的なプレーが勝負を決めます。これは日本人のもっとも苦手とするところ。
 さきにU-19の日本代表は、今年もアジアで敗れ来年のW杯出場権を4大会連続で逃しました。何だか将来も寒い。ことし創設のJ3にU-22の選抜を参加させるなど、裾野の強化に懸命ですが、なんだかむなしい。
 ドイツでは、バイエルン・ミュンヘンの2軍が3部でレベルの高い試合をやっています。もし2軍がブンデスリーガまで昇格してきたらどうなるんだろう、と思ったものです。日本でも浦和など財政的に豊かなところは2軍をJ3に参加できように、つまり若い人たちがトップレベルと試合できるチャンスを、例えばJ1の試合の前座などで、どんどん作るべきでしょう。
 かつての名選手で、サッカーの造詣の深い、知恵のある日本の指導者もたくさんいると思うのです。協会の一部の人たちの間の密室で、勝手にコトを運ぶのはよくない。
 意地の悪い私は、アジアカップで日本が負けたらどうなるのだろうと、ヤジ馬根性的に見ています。新人への移行はアギーレの下でうまく行くのでしょうか。すべて万機公論に決すべし、です。
(以下次号)
  
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