60年目を迎えた元朝日新聞運動部記者・中条一雄のコラム。
中条一雄の炉辺閑話~いろりばたのひまつぶし~
サッカーあれこれ(47)
◎蹴飛ばし蹴飛ばされる世界
注目すべき記事を発見しました。毎日新聞2月17日付け夕刊「日本サッカー代表に足りないもの」(樋口淳也記者)です。そこで、釜本邦茂さんがこう語っています(要約)。
「サッカーがつまらない。見ていてどきどきしないよね。ゴールを奪うんだ!という気迫というかスリリングさがない」
釜本さんは続けます。
「いまの代表選手たちのテクニックは我々の頃とは比べものにならないほど上がっている。だが、足りないものがある。それはハングリーさだ」
「サッカーが日本でメジャーになり、代表になれば名声も手に入る。恵まれすぎているために、勝負にこだわる、結果にこだわる意識が低くなっている」
「指導者が戦術、戦術と言っても、それはあくまでも机上の論理。選手は本来、蹴飛ばすか蹴飛ばされるかという世界で勝ち抜かなければいけないんですよ」
「シュートの練習をもっとしなくちゃあだめ。30mの距離で、ピンポイントで狙ったところにシュートが決められるようになれば、正確なパスもできるようになる」
◎練習はスムーズだが
いま一つ、サッカーでなくて申し訳ないのですが、東京6大学野球で面白い記事(毎日・2月17日夕刊)を発見しました。
早大はここ5シーズン優勝しておらず、この1月に高橋広さんを新監督に迎えました。高橋監督は甲子園で鳴門工を率いて春夏通算12勝を挙げている監督です。
高橋監督は指導を始めて1カ月、早大野球部員の気質の変化を痛感し、こう述べています。
「練習は流れるようにスムース。手を抜かず、だらけない。でも、追い込まない。いい子ばかり。納得しないと動かず。僕が学生だったころのハングリー精神がない」
私は、ちょっとだけ笑いましたね。釜本さんも高橋監督もハングリーさを指摘している。そして、早稲田の練習はスムースで、手を抜かないのに、さっぱり勝てなくなった。
まるで能率のいい近代的練習?とやらを、あざ笑っているようでもあります。
◎データで勝てるのか
私がサッカーをやっていた若いころは、「無駄だと思える苦しい練習でも、我慢してやっておけば、将来かならず役に立つことがある」といわれたものです。野蛮といわれようが、苦しさに耐えてがんばったものです。
いまは、筋肉を鍛える近代的な用具があります。喉が渇けば栄養たっぷり水分が常時補給されます。マッサージや栄養士が付き切りでケアしてくれます。
科学的な練習法とやらで、まるでエスカレーターの一段目に足を乗せたら、最上段の一流選手レベルまで、機械が運んでくれるような錯覚を抱いている選手や指導者がいるような気がします。
「数字で考えるサッカー」という記事が2月14日の読売新聞夕刊に載っていました。Jリーグの公認データとして、サッカーのデータ分析をやっているという興味ある記事でした。
誰がどこでボールに触れ、どのようなプレーをしたかなど、すべてのプレーについて試合の映像を見ながら一つ一つの画面を取得するのですが、ベテランスタッフでも入力に10時間もかかるそうです。また、専用カメラで、選手の走行距離やトップスピード、ボールの動きなどを追跡してデータ化するそうです。
このような分析やポイント化をすることで勝敗の原因が客観的に表現できるのだそうです。
パスを何回やった、どれだけ走った、というデータだけで、メッシやC・ロナウドのようなプレーができるのか。勝てるのか。ちょっと別な問題のような気がするんですがね。
(以下次号)
注目すべき記事を発見しました。毎日新聞2月17日付け夕刊「日本サッカー代表に足りないもの」(樋口淳也記者)です。そこで、釜本邦茂さんがこう語っています(要約)。
「サッカーがつまらない。見ていてどきどきしないよね。ゴールを奪うんだ!という気迫というかスリリングさがない」
釜本さんは続けます。
「いまの代表選手たちのテクニックは我々の頃とは比べものにならないほど上がっている。だが、足りないものがある。それはハングリーさだ」
「サッカーが日本でメジャーになり、代表になれば名声も手に入る。恵まれすぎているために、勝負にこだわる、結果にこだわる意識が低くなっている」
「指導者が戦術、戦術と言っても、それはあくまでも机上の論理。選手は本来、蹴飛ばすか蹴飛ばされるかという世界で勝ち抜かなければいけないんですよ」
「シュートの練習をもっとしなくちゃあだめ。30mの距離で、ピンポイントで狙ったところにシュートが決められるようになれば、正確なパスもできるようになる」
◎練習はスムーズだが
いま一つ、サッカーでなくて申し訳ないのですが、東京6大学野球で面白い記事(毎日・2月17日夕刊)を発見しました。
早大はここ5シーズン優勝しておらず、この1月に高橋広さんを新監督に迎えました。高橋監督は甲子園で鳴門工を率いて春夏通算12勝を挙げている監督です。
高橋監督は指導を始めて1カ月、早大野球部員の気質の変化を痛感し、こう述べています。
「練習は流れるようにスムース。手を抜かず、だらけない。でも、追い込まない。いい子ばかり。納得しないと動かず。僕が学生だったころのハングリー精神がない」
私は、ちょっとだけ笑いましたね。釜本さんも高橋監督もハングリーさを指摘している。そして、早稲田の練習はスムースで、手を抜かないのに、さっぱり勝てなくなった。
まるで能率のいい近代的練習?とやらを、あざ笑っているようでもあります。
◎データで勝てるのか
私がサッカーをやっていた若いころは、「無駄だと思える苦しい練習でも、我慢してやっておけば、将来かならず役に立つことがある」といわれたものです。野蛮といわれようが、苦しさに耐えてがんばったものです。
いまは、筋肉を鍛える近代的な用具があります。喉が渇けば栄養たっぷり水分が常時補給されます。マッサージや栄養士が付き切りでケアしてくれます。
科学的な練習法とやらで、まるでエスカレーターの一段目に足を乗せたら、最上段の一流選手レベルまで、機械が運んでくれるような錯覚を抱いている選手や指導者がいるような気がします。
「数字で考えるサッカー」という記事が2月14日の読売新聞夕刊に載っていました。Jリーグの公認データとして、サッカーのデータ分析をやっているという興味ある記事でした。
誰がどこでボールに触れ、どのようなプレーをしたかなど、すべてのプレーについて試合の映像を見ながら一つ一つの画面を取得するのですが、ベテランスタッフでも入力に10時間もかかるそうです。また、専用カメラで、選手の走行距離やトップスピード、ボールの動きなどを追跡してデータ化するそうです。
このような分析やポイント化をすることで勝敗の原因が客観的に表現できるのだそうです。
パスを何回やった、どれだけ走った、というデータだけで、メッシやC・ロナウドのようなプレーができるのか。勝てるのか。ちょっと別な問題のような気がするんですがね。
(以下次号)
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