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サッカーあれこれ(26)

◎国民的な盛り上がり
 ブラジルW杯出場の日本選手23人が発表され、主要新聞はすべてトップページを使って大々的に報道しました。今昔の感です。
 私の若いころ、サッカーがこんなに国民的な関心事になるとは夢にも思いませんでした。やはり、喜ぶべきことなんでしょうなあ。あとは、日本がどれだけの成績をあげるかでしょう。
 毎日新聞に「日本サッカー協会名誉会長・小倉純二さんの講演会」という社告が載っていました。私はだんだん年をとって歩行困難になりつつありますが、講演会は大好きです。駅の近場を選んで、いろんな人の話を聞く。これ、ボケ防止の第一歩。
 サッカーに限らず憲法や集団的自衛権の講演会にもよく出かけます。小倉さんは古い友人です。聞いておこうという気持ちになりました。選手発表の2日後の5月14日、会場は池袋のホテルでした。平日で会費5000円の昼食付だったせいか、集まったのはほぼ中高年ばかり。7つの丸テーブルを囲んで約50人。
 女性は年をとった感じの人が3人だけでしたが、最後の質問タイムになって、女性2人が積極的に発言しました。こういう会が成立すること自体驚きですが、まさにブームは女性ぐるみで本物です。
 古い、古い、もう16年前のフランス大会あたりからブームになっているよ、と言われればそれまでですが、本田、香川、長友らはタレントや大臣なみの知名度、コマーシャルでも人気者です。テレビの「サッカー選手、いい男ランキング」といった低俗番組は気になりますが、まあ、これもサッカーが世間から認められた証拠でしょうか。

◎大久保起用の意図は
 講演会では、ザッケローニ監督のインタビューが映像で紹介されました。日本選手の特徴として、彼は「組織とスピード」を挙げていました。これはいままでの外人監督共通の観点ですが、ザッケローニは固く守って反撃するカテナチオのイタリアンスタイルは、あまり好きでないようです。そのせいかFWに異常に多い8人の選手を選んでいます。
 もちろんFWとした本田や香川はいつでもMFがやれるわけで、人数だけで攻撃的とはいえません。しかし、守備にお馴染みの固定メンバーを起用したザック監督の意図は、「攻撃」にあるとみていいでしょう。そのための、2年前に一度招集したきりの大久保起用がサプライズになったと思います。
 大久保について、各新聞は「一年前に亡くなった父親の思いを胸に」とか「亡き父との約束果たす」といった感傷的な記事を載せましたが、私はここ2年の彼らしい進歩を感じています。
 昔の彼は強引に突っ込んで体当たりするような、いわゆる体を張る稚拙なプレーが目立ちました。だが、最近は中距離からのまともないいシュートをするようになった。ゴール前でこぼれ球を素早く拾うプレーも多くなりました。
 そもそもといえば大袈裟ですが、得点にはほぼ3種類あります。組織的にパスをつないで攻めるものやフリーキックなどから計画的に決めるもの。相手のミスやこぼれ球を狙って決めるもの、個人の力で単独ドリブルなどで決めるもの、です。
 サッカーで意外に重要なのが2番目の相手のミスやこぼれ球を拾う腰巾着のようなプレーです。これはイタリアW杯で得点王になって磐田でプレーしたスキラッチのようなタイプです。広島の佐藤もこれができますが、ザックは「大久保には嗅覚がある」として、彼に賭けたのでしょう。実際には本番の、どのあたりで起用されるか、興味しんしんですが。

◎優勝できるのかな
 小倉さんの会の質問タイムで、私はド素人的な「日本は優勝出来ますか」という質問をしたかったのですが、笑われそうなのでやめました。
 とは言っても本田選手あたりは、しばしば「優勝」を口にしています。まあ、大口たたきが、彼のパーソナリティであり、売り物なのですが、「その言や、よし」と言っておきましょう。現実はまだまだ。日本サッカー界全体はそこまで進んでいるとは思えません。
 とても、いまの実力では運良く(まったく運良くです)第一次リーグを突破できても、相手次第ですが、それ以上は無理でしょう。優勝するチームは、余裕を持って一次リーグを戦います。一つ落としても復元できる力を持っています。
 人間は一カ月間、緊張状態を続けるのは無理だと、私は常々思っています。優勝するチームは、最初リラックスして一次リーグを戦い、徐々に調子を上げていきます。これまで優勝したチームは、すべてそういうパターンで戦っています。
 最初から緊張状態にあるチームは、たいてい脱落します。日本チームがそこらあたりの選手の心理をどう運んでいくか、それが決め手でしょう。協会幹部の人たちは2050年には優勝すると言っています。これこそ「その言や、よし」です。
 問題はマスコミです。大会が進んでくるとメッタヤタラに盛り上げます。1998年フランスW杯直前の某スポーツ紙のアンケートでは、実に7%が「優勝する」と答えていました。外人記者に話したら「すげえジョークだ」と笑われました。結果は3戦全敗。これこそ誇大宣伝の罪、思い込みの罪です。
 ブーム、ブームといいますが、このような世界を知らない猪突猛進型のブームは困ったものです。冷静にサッカーを楽しむファンが増えてこそ、ブームは本物でしょう。
(以下次号)




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