じゅうのblog

こちらでボチボチ更新していく予定です。

『風の帰る場所―ナウシカから千尋までの軌跡』 宮崎駿

2024年06月19日 21時30分25秒 | ■読書
渋谷陽一による宮崎駿へのインタビュー集『風の帰る場所―ナウシカから千尋までの軌跡』を読みました。
宮崎駿の作品は、6年くらい前に読んだ養老孟司との対談『虫眼とアニ眼』以来なので久し振りですね。

-----story-------------
「どんな状態になっても世界を肯定したいっていう気持ちが自分の中にあるから、映画を作ろうっていうふうになるんじゃないかと思うんです」(本書より)――『千と千尋の神隠し』でついに第75回アカデミー賞を受賞し、名実ともに世界のトップ・アニメーション映画監督となった宮崎駿。
決して大人に向けてではなく、ある10歳の子どもたちを観客として想定して作られた作品であり、しかも湯屋を舞台に何から何まで非常に日本的なるもので作られた作品であるにもかかわらず、『千と千尋』が年齢も国境も超えたグローバルな普遍性を獲得することができたのは何故なのでしょうか。
本書は12年の歳月をかけて行われたインタヴューのすべてをノーカットで収録した、宮崎駿の決定版インタヴュー集です。
華やかなサクセスストーリーを歩んでいると誤解されがちですが、宮崎駿のアニメーター人生は決して平坦な道のりではありませんでした。
実は苦渋の決断だった『ナウシカ』のアニメ化、『となりのトトロ』の興行的な失敗、表現者としてぶつかった壁……のどかな世間のイメージとはかけ離れた、一人の表現者・宮崎駿、そして人間・宮崎駿の真実。
本書ではそのすべてが、宮崎自身の肉声によって語られています。
様々な苦悩と困難を乗り越えて、宮崎駿はなぜ世界を肯定できたのか。
12年間かけてじっくり積み重ねられた、あまりに重く、そしてあまりに眩しい言葉の数々。
本当の宮崎駿を知ってください。
-----------------------

1990年(平成2年)から2001年(平成13年)の12年間……渋谷陽一による宮崎駿へのロングインタビューを収録した作品です。

 ■はじめに
 ■風が吹き始めた場所―1990年11月
  ・映画
  ・拠り所
  ・現代
  ・風
  ・娯楽
  ・ブランド
  ・黄金律
  ・自己嫌悪
  ・日本人
  ・動態
  ・左翼思想
  ・本音と建前
  ・手塚治虫
  ・ディズニー
 ■豚が人間に戻るまで―1992年7月『紅の豚』インタビュー
  ・豚の由縁
  ・崖っぷち
  ・東西の崩壊
  ・嘘
  ・豚でしかない人間
  ・「仕方のないもの」
  ・根拠
  ・出発点
  ・創作意欲
  ・終わっていない映画
  ・メガヒット
  ・本質
  ・突き抜けたニヒリズム
  ・ジャパニメーション
  ・時代劇
  ・奇跡
  ・種を蒔く人
 ■タタラ場で生きることを決意したとき―1997年7月『もののけ姫』インタビュー
  ・引退
  ・職工頭
  ・業の深さ
  ・日の当たらない日本史
  ・コダマ
  ・『もののけ姫』の世界観の裏側
  ・新しい歴史観
  ・不条理な生
  ・暴力性
  ・自信の喪失
  ・愛憎
  ・ジブリというタタラ場
  ・庵野秀明
  ・押井守
  ・高畑勲
  ・無意識
 ■ナウシカと千尋をつなぐもの―2001年7月『千と千尋の神隠し』インタビュー
  ・静かな山場
  ・千尋と海
  ・急遽の変更劇
  ・油屋=ジブリ
  ・顔の見える観客
  ・銀河鉄道の夜
  ・大事なもの
  ・予感
  ・鉄砲オタク
  ・物語
 ■風の谷から油屋まで―2001年11月
  ・失業者
  ・漫画家
  ・持ち込み
  ・制約
  ・職場
  ・橋
  ・「ライフワーク」
  ・映画版『ナウシカ』のエンディング
  ・世界観の造形
  ・『ナウシカ』の成功
  ・少年モノとしての『ラピュタ』
  ・脇役
  ・戦前・戦後
  ・キスシーン
  ・女性観
  ・『トトロ』への積年の想い
  ・日本
  ・日常
  ・草原
  ・台風
  ・『トトロ』の失敗
  ・ヒモつき
  ・思春期
  ・佳境に入ったコミック版『ナウシカ』
  ・社員
  ・経営者
  ・冷戦の終結とバブルの崩壊
  ・後悔
  ・真っ向勝負
  ・シンプルでストロングなストーリー
  ・「タタラ場」という現実
  ・祝福
  ・メロドラマ
  ・答え

宮崎駿監督が『風の谷のナウシカ』から『千と千尋の神隠し』までの作品について、渋谷陽一のインタビューに答えて、自らの言葉で歴史観や人生観にまで踏み込みながら真正面から語ったのが、本書です……資料的な価値という意味で完全保存版であることは言うまでもありませんが、本書を読むと、今回の引退劇に至る伏線のみならず、実は今後の宮崎監督の行動を占うヒントまでもが隠されていることに気づかされます、、、

12年間を費やして行なわれた5本のインタヴューを完全ノーカット収録……『風の谷のナウシカ』、『となりのトトロ』、『千と千尋の神隠し』は、どのように生まれたのか?  宮崎駿監督が自らの作品の背景や狙いはもちろん、文明論から歴史観に至るまで、徹底的に語り尽くした完全保存版インタビュー集。

渋谷陽一による宮崎駿へのロングインタビューを収録した作品……当時の宮崎駿作品は、アニメだけでなく『風の谷のナウシカ』の原作マンガを含め、ほとんど観ている(読んでいる)ので、それらの作品を思い浮かべながら読みました、、、

渋谷陽一が宮崎駿の素顔を巧く引き出している印象……その発想の源泉や背景について深く探求しているので、宮崎駿作品に対する理解が深まり、宮崎駿の思想や哲学に触れることができましたね。

宮崎駿の思考プロセスや作品に対する洞察を知りたい方にとって興味深い一冊だったし、宮崎駿ファンやアニメーション映画の愛好者にとって貴重な一冊となっていると感じました……特に印象に残ったのは、宮崎駿の

「チャップリンの映画が好きなのは、間口が広いんだけど、入っていくうちにいつの間にか階段を昇っちゃうんですよね。なんかこう妙に清められた気持ちになったりね 笑」
「ディズニーの作品で一番嫌いなのは、僕は入口と出口が同じだと思うんですよね」

「世界っていうのは光と陰で成り立っている」

という言葉だなー とても共感できました。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『狂乱廿四孝/双蝶闇草子』 ... | トップ |   
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

■読書」カテゴリの最新記事