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『新装版 鬼平犯科帳〈5〉』 池波正太郎

2025年08月17日 21時33分47秒 | ■読書
池波正太郎の連作時代小説『新装版 鬼平犯科帳〈5〉』を読みました。
池波正太郎の作品は先日読んだ『新装版 鬼平犯科帳〈4〉』以来ですね。

-----story-------------
横なぐりに脇差をたたきつけてきた。
かわしきれなかった。
浅手ながら左肩を切り裂かれた平蔵。
「鬼平。お前もこれまでだな」闇の底から、網切の甚五郎の声が聞こえた……鬼平の危機せまるスリルを描く「兇賊」をはじめ、「深川・千鳥橋」「乞食坊主」「女賊(おんなぞく)」「おしゃべり源八」「山吹屋お勝」「鈍牛(のろうし)」の七篇を収録。
間取りの万三、猿塚のお千代、霧(なご)の七郎、芋酒やのおやじこと鷺原の九平などの名キャラクターも次々登場!
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文藝春秋が発行する月刊娯楽小説誌『オール讀物』に1969年(昭和44年)12月号及び1970年(昭和45年)7月号から1970年(昭和45年)12月号に連載された作品7篇を収録して1978年(昭和53年)に刊行された作品……実在の人物である火付盗賊改方長官・長谷川平蔵を主人公とする捕物帳、鬼平犯科帳シリーズの第5作です。

 ■深川・千鳥橋
 ■乞食坊主
 ■女賊
 ■おしゃべり源八
 ■兇賊
 ■山吹屋お勝
 ■鈍牛

「本所の鬼銕」と呼ばれた若き日の平蔵の敵が思いもかけぬ形であらわれる「兇賊」は、人生の因果の劇的なさまに唸らされます、、、

第5巻収録作品は、「深川・千鳥橋」「乞食坊主」「女賊」「おしゃべり源八」「兇賊」「山吹屋お勝」「鈍牛」の全7篇……この中の「山吹屋お勝」は、後年、「著者が選んだ鬼平ベスト5」に入っている作品です。

テレビドラマでもお馴染みの鬼平犯科帳シリーズ……原作となる小説も面白いです! 本作品の収録作では、

平蔵の危機を救ったのは、ひとりばたらきの老盗賊・鷺原の九平だった!? 倶利伽羅峠で網切の甚五郎を斬り捨てるラストシーンが忘れらない『兇賊』、

平蔵本人を狙うのは難しいと判断した霧の七郎は、女盗賊を使って伯父にハニートラップを仕掛ける……男って、何歳になっても男だよねー と、改めて感じた『山吹屋お勝』、

鬼平の人間性に感服し、愚鈍な亀吉とのやり取りに感動……いつの時代でも冤罪は怖いなぁ と感じた『鈍牛』、

が印象的だったかな……連作短篇のカタチを取っており、1篇ずつでも愉しめるのですが、それぞれの短篇が繋がって大長篇としても読める構成なので、順番に読み進めると大河ドラマ的な愉しみがありますね。

第6作以降も順次、読んでいこうと思います。
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『仮面幻双曲』 大山誠一郎

2025年08月16日 18時28分39秒 | ■読書
大山誠一郎の長篇ミステリ作品『仮面幻双曲』を読みました。
大山誠一郎の作品は2月に読んだ『密室蒐集家』以来ですね。

-----story-------------
この町の誰が”顔を変えた殺人者”なのか?

時は、戦後間もない昭和22年。
東京で亡き父の事務所を継いだ私立探偵の川宮兄妹は、依頼を受けて滋賀県の双竜町に赴く。
依頼主は、地元随一の製糸会社を営む占部家の先代社長夫人。
専務の武彦が双子の兄である現社長の文彦に恨みを抱き、殺害を目論んでいるのだという。
武彦は女子工員の小夜子に恋をしていたが、彼女は町中に中傷の手紙がばらまかれたことを苦に自殺。
兄の仕業だと思い込んだ武彦は姿をくらまし、整形手術を受けて顔を変え、別人になりすまして双竜町に戻っている。

「なぜ顔を変えたかわかるか? お前の近くにいる」

川宮兄妹の使命は、武彦を探し出し、文彦の命を守ること。
しかし、琵琶湖のほとりに建つ巨大な洋館に招かれ、寝ずの番にあたった矢先、文彦は惨殺されてしまう――

果たして誰が”武彦”なのか。
本格ミステリの名手による傑作が、待望の文庫化!
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2006年(平成18年)に『書き下ろしミステリー第2弾! 双竜町事件-仮面幻双曲』というタイトルで刊行された作品……大幅に加筆改稿した文庫版で読みました。

 ■プロローグ 昭和21年・冬
 ■一の奏 隠された顔
 ■二の奏 湖岸の館
 ■三の奏 当主の死
 ■四の奏 通夜の夜
 ■五の奏 捜索の朝
 ■六の奏 湖中の男
 ■七の奏 復興の街
 ■八の奏 暴かれた顔
 ■エピローグ 昭和22年・冬
 ■解説 香気溢れる、意想外のパズラー ~白い仮面はいかに改訂されたか~ 阿津川辰海

昭和22年、私立探偵の川宮兄妹は依頼を受けて琵琶湖畔の町・双竜町へ赴く……この町にある製糸会社の社長・占部文彦に双子の弟の武彦から殺害を仄めかす脅迫状が届いたのだ、、、

武彦は恋人の死で兄に恨みを抱き1年前に出奔していたが、東京で整形手術を受けて顔を変え町に戻ってきたらしい……別人に成りすましている武彦を探し出し、文彦を守ること、それが川宮兄妹への依頼だった。

しかし警護の甲斐もなく、文彦は湖岸の館で殺害される……この町の誰が武彦なのか? 大胆なトリックで読者に挑戦する傑作本格ミステリが、全面改稿された文庫版で登場。

昭和22年という時代背景、琵琶湖岸の大きな館という舞台、町の名家に伝わる双子伝説、整形手術で顔を変えて別人になりすまして町に戻ったと思われる犯人、近親憎悪から引き起こされる怪事件……横溝正史作品っぽい雰囲気を持った作品でしたね、、、

双子を使ったトリックは、古今東西、多くのバリエーションがあると思うのですが、このパターンは初めて読みました……整形した双子の設定を巧みに利用した、複雑かつ巧妙な犯行計画が愉しめました。

大山誠一郎作品って、短篇でキレの良いイメージでしたが……長篇も良いですね! もっと長篇を描いてほしいですね。
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『新装版 鬼平犯科帳〈4〉』 池波正太郎

2025年08月15日 12時39分47秒 | ■読書
池波正太郎の連作時代小説『新装版 鬼平犯科帳〈4〉』を読みました。
池波正太郎の作品は先日読んだ『決定版 鬼平犯科帳〈3〉』以来ですね。

-----story-------------
はっと、平蔵が舟の中へ身を伏せた。
荒屋敷の潜門がしずかに開き浪人風の男があらわれ、あたりに眼をくばっている。(これほどのやつがいたのか……)平蔵の全身をするどい緊張がつらぬいた。
──密偵・おまさの窮地を救うため、ひとり敵地にのりこんだ平蔵の凄絶な剣技を描く「血闘」、のちの展開に大きな役目を果たすことになる、盗賊・大滝の五郎蔵が初登場の「敵」ほか、「霧の七郎」「五年目の客」「密通」「あばたの新助」「おみね徳次郎」「夜鷹殺し」の全八篇。
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文藝春秋が発行する月刊娯楽小説誌『オール讀物』に1969年(昭和44年)10月号から1970年(昭和45年)6月号に連載された作品8篇を収録して1976年(昭和51年)に刊行された作品……実在の人物である火付盗賊改方長官・長谷川平蔵を主人公とする捕物帳、鬼平犯科帳シリーズの第4作です。

 ■霧の七郎
 ■五年目の客
 ■密通
 ■血闘
 ■あばたの新助
 ■おみね徳次郎
 ■敵
 ■夜鷹殺し
 ■解説 佐藤隆介

「おなつかしゅうござります」20余年ぶりに平蔵の前に現われ、「密偵になりたい」と申し出たおまさには、平蔵への淡い恋心と語りたがらぬ過去があった(「血闘」)……鬼平の凄絶な剣技に息を呑む本作ほか、「霧の七郎」「五年目の客」「密通」「あばたの新助」「おみね徳次郎」「敵」「夜鷹殺し」の全8篇を収録。

テレビドラマでもお馴染みの鬼平犯科帳シリーズ……原作となる小説も面白いです! 本作品は

過去に男女関係となっていたふたり……そのことに気付かれたと思い不本意ながら音吉に抱かれるお吉と、そのことに気付かず愉しみながらお吉を抱く音吉、その認識のズレがふたりの関係に微妙な影を落とす『五年目の客』、

密偵となるおまさが初登場……おまさと平蔵のかつての恋心が交錯し、物語に深みが加わっている『血闘』、

実直で妻以外の女を知らなかった同心・佐々木新助……女に騙され、女に溺れ、墜ちていく男の悲哀を描いた『あばたの新助』、

夫婦ともに別な盗賊の下で活動している悪党なんだけど、徳次郎の方は妻・おみねの正体を知らないという夫婦関係がユーモア交じりに描かれ、おまさの活躍が見事な『おみね徳次郎』、

盗賊・大滝の五郎蔵が初登場……密偵になるまでを描く『敵』、

が印象的だったかな……連作短篇のカタチを取っており、1篇ずつでも愉しめるのですが、それぞれの短篇が繋がって大長篇としても読める構成なので、順番に読み進めると大河ドラマ的な愉しみがありますね。

第5作以降も順次、読んでいこうと思います。
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『木野塚佐平の挑戦だ』 樋口有介

2025年08月14日 12時42分57秒 | ■読書
樋口有介の長篇ミステリ作品『木野塚佐平の挑戦だ(英題:The Challenge of MR.Kinozuka)』を読みました。
樋口有介の作品を読むのは初めてですね。

-----story-------------
現職の総理大臣が急逝し、世間は大慌て。
しかし、ケニヤに桃世が旅立ってから、傷心(?)の木野塚氏は、テレビの中の美人ニュースキャスターとの不倫を夢見る日々。
それが、一本の電話で覆される。
オタク男からの奇妙な依頼から、いつの間にやら木野塚探偵事務所設立以来の大事件へと巻き込まれることに。
ケニヤ帰りの桃世とともに難事件に挑む、木野塚氏の活躍? 
乾坤一擲、欣喜雀躍、元警視庁経理課の愛すべき老人探偵の大活躍を描いたシリーズ第2弾、だ。
著者あとがき=樋口有介/解説=香山二三郎
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2002年(平成14年)に刊行された『木野塚佐平の挑戦』を大幅に改稿、改題して2008年に刊行された作品……木野塚佐平シリーズの第2作です。

桃世はケニアに行ったきり……現職の総理大臣が急逝し、世間は大混乱だというのに、あこがれの美人ニュースキャスター香川優子の姿に煩悶する木野塚佐平氏、、、

ダブル不倫、ホモの失踪事件、おなじみ高村女史からの無理難題を解決しては、糊口をしのぐ毎日……そんなある日、電波系オタク男からの依頼、中年女からの盗聴の相談と、事務所に続々寄せられる妙な仕事。

さらには、あの香川優子をじかに訪ねる機会まで……抱腹絶倒、呵々大笑、ケニアから帰国した桃世とともに、木野塚氏は今日も行く! ユーモア・ハードボイルド長篇、シリーズ第2弾!

元警視庁経理課という異色の経歴を持つ探偵・木野塚佐平の活躍を描くシリーズ第2作……ユーモアあふれるハードボイルド作品でしたね、、、

『週刊金魚新聞』の高村女史の色香に惑わされて金魚にまつわる無理難題を押し付けられ右往左往しますが、その後一転……自称・犯罪分析研究家や中年の未亡人からの相談、ホームレスとなった元刑事から紹介された全日本ホームレス協会連合会の会長の死、恋焦がれる美人ニュースキャスター・香川優子からの依頼等を通じて、現職の村本啓太郎首相の暗殺疑惑に近付くことになり、さらには3億円事件まで絡んできて と身近な小さな事件が、世間を揺るがす大きな事件に繋がっていく……。

ハードボイルドに憧れつつも、なかなか格好がつかない愛すべき老人探偵・木野塚佐平と、クールで有能な秘書・梅谷桃世のコンビが活躍して事件を解決する展開が愉しめました……第1作の『木野塚探偵事務所だ』も機会があれば読んでみたいですね。
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『二度のお別れ』 黒川博行

2025年08月13日 13時53分11秒 | ■読書
黒川博行の長篇ミステリ作品『二度のお別れ(英題:The Second Goodbye)』を読みました。
黒川博行の作品は、4年前に読んだ『文福茶釜』以来ですね。

-----story-------------
《黒川博行警察小説コレクション》
4月1日午前11時34分、三協銀行新大阪支店に強盗が侵入。
400万円を奪い、客の一人をピストルで撃ったのち、彼を人質にして逃走した。
大阪府警捜査一課は即刻追跡を開始したが、強奪金額を不服として犯人は人質の身代金1億円を要求、かくして犯人と捜査陣の知恵比べが始まる。
名手の記念すべきデビュー作となった、シリーズ第1弾!
解説=池崎和記
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1983年(昭和58年)に刊行された黒川博行のデビュー作……大阪府警捜査一課の黒田、亀田両刑事、通称クロマメ・コンビが活躍する大阪府警シリーズの第1作です。

大阪府警捜査一課”黒マメ”コンビvs稀代の知能犯、圧巻の警察ミステリ! 三協銀行新大阪支店で強盗事件が発生……犯人は現金約400万円を奪い、客のひとりを拳銃で撃って人質として連れ去った、、、

大阪府警捜査一課が緊急捜査を開始するや否や、身代金1億円を要求する脅迫状が届く……「オレワイマオコツテマス――」 脅迫状には切断された指が同封されていた。

刑事の黒田は、相棒の“マメちゃん”こと亀田刑事とともに、知能犯との駆け引きに挑む……『破門』の直木賞作家のデビュー作にして圧巻の警察ミステリ。

事件は銀行強盗から誘拐・身代金要求へ変化し、巧妙かつ悪意に満ちた犯人の指示に翻弄されながらの犯人との息詰まる知恵比べ、そんな緊張感の中でコテコテの関西弁が炸裂するコミカルな会話、黒田、亀田両刑事を中心とした人間味あふれるキャラクターが特徴的で、ここでは明かせませんが精緻なトリックと意外な結末が印象的な作品で、とても愉しめました……犯人たちは、犯罪には成功したけど人生の選択は誤っちゃったんですよねー 哀しい結末が忘れられないですね、、、

重厚なミステリでありながら、軽快なテンポで読み進められる、本格警察小説でした……デビュー作とは思えないほどのクオリティでしたね。

『二度のお別れ』というタイトルも読み終わって納得……本シリーズの作品、機会があれば読んでみたいですね。
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『決定版 鬼平犯科帳〈3〉』 池波正太郎

2025年08月12日 10時17分34秒 | ■読書
池波正太郎の連作時代小説『決定版 鬼平犯科帳〈3〉』を読みました。
池波正太郎の作品は先日読んだ『新装版 鬼平犯科帳〈2〉』以来ですね。

-----story-------------
2024年、「鬼平犯科帳」続々映像化! 不朽のロングセラー、新時代はじまる――

池波正太郎生誕100年企画として、歌舞伎界の大看板・松本幸四郎を「鬼平」こと長谷川平蔵役に迎え、映像化、ドラマ化。
「鬼、新時代。」が始まります!

第三巻収録作品は、「麻布ねずみ坂」「盗法秘伝」「艶婦の毒」「兇剣」「駿州・宇津谷峠」「むかしの男」。
巻末の「あとがきに代えて」は、池波正太郎自身による解説・長谷川平蔵。
必読の佳品です。
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文藝春秋が発行する月刊娯楽小説誌『オール讀物』に1969年(昭和44年)4月号から1969年(昭和44年)9月号に連載された作品6篇を収録して1975年(昭和50年)に刊行された作品……実在の人物である火付盗賊改方長官・長谷川平蔵を主人公とする捕物帳、鬼平犯科帳シリーズの第3作です。

 ■麻布ねずみ坂
 ■盗法秘伝
 ■艶婦の毒
 ■兇剣
 ■駿州・宇津谷峠
 ■むかしの男
 ■あとがきに代えて―池波正太郎

“鬼平”と江戸の悪人たちから恐れられる幕府火付盗賊改方の長官・長谷川平蔵が、ときにはユーモアをまじえ、ときには鋭い勘を働かせて、兇悪な盗賊を相手に大奮闘をつづける……その颯爽たる立ち回りが大評判の人気シリーズ第3巻は、珍しくも平蔵が、うさ忠こと木村忠吾を供に京都・奈良へ長旅をしたり、平蔵の妻・久栄が活躍する、動きのある傑作揃い、、、

「麻布ねずみ坂」「盗法秘伝」「艶婦の毒」「兇剣」「駿州・宇津谷峠」「むかしの男」の6篇を収録している。

テレビドラマでもお馴染みの鬼平犯科帳シリーズ……原作となる小説も面白いです! 本作品は、火付盗賊改方長官の役職を外れた平蔵が木村忠吾を伴って、若い頃を過ごした京へ旅に出る道中や京での出来事が描かれていることが特徴的ですね、、、

平蔵が京への道中で出会った盗賊・伊砂(いすが)の善八に気に入られ、盗みの極意や盗賊たちの掟、組織の内部事情が詳細に記された『盗法秘伝』を伝授され、盗賊と一時的に手を組むというユニークな展開が、物語の面白さを引き立てている『盗法秘伝』、

若い頃、平蔵は女盗賊・お豊と関係を持ったことがあったが、歳月を経て、忠吾が夢中になっている女としてお豊(おたか)と再会……平蔵が過去の因縁と職務の間で揺れ動きながら苦悩するところや、忠吾のコミカルな活躍が物語にアクセントを加えている『艶婦の毒』、

平蔵の妻・久栄のもとに、若い頃に想いを寄せていた男・近藤勘四郎が盗賊となって現れる……平蔵の活躍ではなく、久栄の強さと賢さ、いざという時に見せる芯の強さが描かれる異色作『むかしの男』、

が印象的だったかな……連作短篇のカタチを取っており、1篇ずつでも愉しめるのですが、それぞれの短篇が繋がって大長篇としても読める構成なので、順番に読み進めると大河ドラマ的な愉しみがありますね。

第4作以降も順次、読んでいこうと思います。
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『黒百合』 多島斗志之

2025年08月11日 17時01分55秒 | ■読書
多島斗志之の長篇ミステリ作品『黒百合(英題:a Black Lily)』を読みました。
多島斗志之の作品を読むのは初めてですね。

-----story-------------
「六甲山に小さな別荘があるんだ。きみと同い年のひとり息子がいるので、きっといい遊び相手になる。一彦という名前だ」
父の古い友人である浅木さんに招かれた私は、別荘に到着した翌日、一彦とともに向かったヒョウタン池でひとりの少女に出会う。
夏休みの宿題、ハイキング、次第に育まれる淡い恋、そして死。
1952年夏、六甲の避暑地でかけがえのない時間を過ごす少年たちを瑞々しい筆致で描き、文芸とミステリの融合を果たした傑作長編。才人が到達した瞠目の地平!

*第1位『『ミステリが読みたい!2010年版』国内篇サプライズ部門
*第2位『ミステリが読みたい!2010年版』国内篇ナラティヴ部門
*第4位『ミステリが読みたい!2010年版』国内篇総合部門
*第7位『このミステリーがすごい!2009年版』/国内編
*第7位 CSミステリチャンネル「闘うベストテン2008」/国内部門
*第8位『週刊文春』「2008ミステリーベスト10」/国内部門
*第8位『ミステリが読みたい!2011年版』ゼロ年代ミステリベスト・ランキング国内篇
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2008年(平成20)に刊行された作品です。

 ■Ⅰ 六甲山 1952年夏①
 ■Ⅱ 相田真千子 昭和10年
 ■Ⅲ 六甲山 1952年夏②
 ■Ⅳ 倉沢日登美 昭和15~20年
 ■Ⅴ 六甲山 1952年夏③
 ■Ⅵ  ………… 昭和27年
 ■Ⅶ 六甲山 1952年夏④
 ■解説 作者渾身の一作 戸川安宣

六甲の山中にある、父の旧友の別荘に招かれた14歳の私は、その家の息子で同い年の一彦とともに向かった池のほとりで、不思議な少女・香と出会った……夏休みの宿題のスケッチ、ハイキング、育まれる淡い恋、身近な人物の謎めいた死──1952年夏、六甲の避暑地でかけがえのない時間を過ごす少年ふたりと少女の姿を瑞々しい筆致で描き、文芸とミステリの融合を果たした傑作長編。

物語の最後にすべてのピースがはまったときの衝撃……心地よく騙されましたねー 読後におーっ、そういうことか! という感じで、Ⅱ章、Ⅳ章、Ⅵ章を読み返してしまいました、、、

叙述と伏線が巧妙な好みのタイプの叙述トリックだったし、14歳の少年少女の成長を描いた好みのタイプの青春小説でもあったので、愉しく読めました……機会があれば、多島斗志之の他の作品も読んでみたいですね。
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『ホテル・ピーベリー<新装版>』 近藤史恵

2025年08月10日 11時55分33秒 | ■読書
近藤史恵の長篇ミステリ作品『ホテル・ピーベリー<新装版>』を読みました。
近藤史恵の作品は、昨年11月に読んだアンソロジー作品『みんなの怪盗ルパン』に収録されていた『青い猫目石』以来ですね。

-----story-------------
木崎淳平は仕事を辞めて、ハワイ島のヒロを訪れた。
友人から勧められた日本人が経営するホテルは「リピーターを受け入れない」ことが特徴だという。
しかし、同宿者がプールで溺れ死ぬ事件が起きてしまう。
直後にはバイク事故でもう一人が……。
このホテルには「なにか」がある。
最後のページまで気が抜けない、不穏な空気に充ちた傑作ミステリーの新装版!
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2011年(平成23年)に刊行された作品です。

木崎淳平は、仕事を辞めて心を休めるためにハワイ島を訪れ、友人の杉下に勧められたホテル・ピーベリーに滞在する……ピーベリーは、日本人夫婦が経営する小さなホテルで木崎の他にも何人かの日本人が滞在しており、それぞれが何か事情を抱えている様子だった、、、

そんな中、宿泊客のひとり蒲生祐司がホテルのプールで溺死する事件が発生……さらに、その直後には宿泊客の青柳がバイク事故で亡くなる。

相次ぐ不審な死に、木崎はただの事故ではないと疑念を抱き始める……ホテルに滞在する人々は、皆どこか嘘をついているように見え、不穏な空気が漂い始める、、、

一体このホテルで何が起きているのか……木崎は、それぞれの人物が抱える秘密や嘘に翻弄されながら、真相に迫っていく……。

ハワイという非日常的な舞台で、登場人物たちの内面にある孤独や秘密を中心に描いたミステリ……南国リゾートの一見穏やかな風景と、ホテルに漂う緊張感、不穏さのギャップが、独特の雰囲気を生み出していましたね、、、

交通の便が悪いハワイ島のヒロという場所、そして「リピーターを受け入れない」というホテルの設定が、登場人物たちを一時的なコミュニティに閉じ込める役割を果たしており、緩やかなクローズド・サークルの中で、それぞれの人間関係や葛藤が描かれています……物語の雰囲気は好みの作品、本格的なトリックや犯人当てという謎解き要素は少ないので物足りなく感じる読者もあるかと思いますが、登場人物の心の機微や葛藤、不穏な空気を愉しむことができ、ホテル経営者や宿泊客たちの嘘や秘密嘘が少しずつ明らかになっていく過程が愉しめたことが印象的でしたね。
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『新装版 鬼平犯科帳〈2〉』 池波正太郎

2025年08月09日 20時27分02秒 | ■読書
池波正太郎の連作時代小説『新装版 鬼平犯科帳〈2〉』を読みました。
池波正太郎の作品は先月に読んだ『新装版 鬼平犯科帳〈1〉』以来ですね。

-----story-------------
四季おりおりの風物を背景に、喜びや悲しみを秘めた人間が生きている。
強殺、強姦をいとわない盗賊一味あり、仇討ちと男のプライドにかけて盗みを働くものあり。
清廉を装う論理だけでは裁けない江戸の街、警備にあたるのは火盗改メ。こころよい人情と溶けあう独自の境地を拓いた鬼平シリーズの第二巻は、「蛇の眼」「谷中・いろは茶屋」「女掏摸お富」「妖盗葵小僧」「密偵」「お雪の乳房」「埋蔵金千両」の七篇を収めている。
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文藝春秋が発行する月刊娯楽小説誌『オール讀物』に1968年(昭和43年)8月号から1969年(昭和44年)3月号に連載された作品8篇を収録して1975年(昭和50年)に刊行された作品……実在の人物である火付盗賊改方長官・長谷川平蔵を主人公とする捕物帳、鬼平犯科帳シリーズの第2作です。

 ■蛇の眼
 ■谷中・いろは茶屋
 ■女掏摸お富
 ■妖盗葵小僧
 ■密偵
 ■お雪の乳房
 ■埋蔵金千両

うまいと評判の蕎麦屋“さなだや”で、貝柱のかき揚げをやりはじめた平蔵だが、店を出た先客がどうも「気に入らぬ」と……独自の境地を拓き、瞠目のシリーズ第2巻は、平蔵ならずとも同心・木村忠吾から目が離せない……。

テレビドラマでもお馴染みの鬼平犯科帳シリーズ……原作となる小説も面白いです! 本作品の収録作では、

ちょっとドジで惚れっぽく、色恋沙汰が事件と絡んで、結果的にファインプレーに繋がるという同心・木村忠吾がエピソードの中心となる『谷中・いろは茶屋』と『お雪の乳房』が印象的かな……木村忠吾って憎めないキャラですよね、

その他では、

元女掏摸のお富のしたたかさや哀愁が巧みに描かれている『女掏摸お富』、

悪事で貯め込んだ千両という大金が絡んで、人々の欲望、裏切り、そして意外な結びつきが描かる『埋蔵金千両』、

が印象的だったかな……連作短篇のカタチを取っており、1篇ずつでも愉しめるのですが、それぞれの短篇が繋がって大長篇としても読める構成なので、順番に読み進めると大河ドラマ的な愉しみがありますね。

第3作以降も順次、読んでいこうと思います。
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『ちぐはぐな部品』 星新一

2025年08月08日 22時12分53秒 | ■読書
星新一のショートショート作品集『ちぐはぐな部品』を読みました。
星新一の作品は、6月に読んだ『きまぐれ星のメモ』以来ですね。

-----story-------------
事故により、脳を残して、全て人工の身体となり、ひっそりと一人で暮らしていたムント氏。
訪ねてくるのは週一回の合成血液の配達人だけ。
ある日、外の世界に繋がるテレビと電話が通じない。
しかたなく外に出ることにしたムント氏。
そこは動くものがなにひとつない世界だった。
「凍った時間」ほか、29篇。
SFからミステリ、時代物まで、星作品中とりわけバラエティ豊かなショートショート集。
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1972年(昭和47年)に刊行された作品で、以下の30篇が収録されています。

 ■いじわるな星
 ■万能スパイ用品
 ■陰謀
 ■歓迎ぜめ
 ■接着剤
 ■なぞの贈り物
 ■飲みますか
 ■廃屋
 ■宝島
 ■名判決
 ■魔神
 ■凍った時間
 ■みやげの品
 ■シャーロック・ホームズの内幕
 ■夜の音
 ■変な侵入者
 ■恋がいっぱい
 ■足あとのなぞ
 ■抑制心
 ■みごとな効果
 ■神
 ■最高の悪事
 ■ネチラタ事件
 ■ヘビとロケット
 ■鬼
 ■取立て
 ■救世主
 ■出入りする客
 ■災害
 ■壁の穴
 ■あとがき
 ■解説 尾崎秀樹
 ■解説 大森望

宇宙パトロール隊が偶然発見したジフ惑星はすばらしい星に見えた……人口過剰の地球にとって、この上ない植民地であり別荘地である、、、

かくして、基地の建設が始められたが、次々とその目的は、不思議な幻の出現によって攪乱される……限りなき人間の欲望を抉る『いじわるな星』の他、SFからミステリ、時代物、昔話や落語のパロディまで、バラエティ豊かな29篇を収める傑作ショートショート集。

バラエティに豊んだ作品が収録されており、タイトル自体が様々なジャンルやテーマの「ちぐはぐな部品」が集められた作品集であることを示しているようですね……収録されている29篇は、それぞれ独立した短い物語ですが、星新一作品に共通するテーマや持ち味が随所に光っていて愉しめました、、、

人口過剰の地球にとって理想的な植民地に見えた惑星が、実は人類を撹乱する存在だった……限りない人間の欲望と、それに潜む危険性を描いた『いじわるな星』、

名探偵シャーロック・ホームズと助手ワトスン博士の活躍を、別の視点から描き、私たちが慣れ親しんでいるホームズ像を逆手に取った、ユーモラスで風刺的な内容が印象的な『シャーロック・ホームズの内幕』、

近所の質屋に入った客……でも、出てくるのは同じ服を着た別な人物 という導入部が印象的で、そこから一気に物語に没入してしまった『出入りする客』、

謎のナイフで壁に穴をあけると様々な光景が広がっていた……決して穴の向こう側には行けのだが、次第にその穴の向こう側を覗くことに夢中になり という発想が面白い『壁の穴』、

等々、星新一作品の真骨頂とも言える、予想を裏切る意外な結末が愉しめました……短い話が多く、平易な文章で書かれているため、すらすらと読めるところも魅力ですね。
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