気の向くままに junne

不本意な時代の流れに迎合せず、
都合に合わせて阿らない生き方を善しとし
その様な人生を追及しています

(‘77) 6月27日 (月) #1 お客さんを迎えに…

2023年07月15日 | 日記・エッセイ・コラム
朝食後、今日は久し振りの部屋増築工事の仕事《スラブ打ちをした後、コンクリートが乾く迄仕事が出来なかった為》の日だ…と元気一杯、用意をしていたところにオヤジさんの一言。
「ジュン、アンタ桟橋へ行って、お客さんが二人着くから連れて来てくれんか…」
言われた時、すぐに返事の出来なかった私であった。と言うのも名前を知らされただけで一面識も無い人物を迎えに行く事に、何故か抵抗を感じたからである。その抵抗が起きたと言うのは、下船してくる客数が最近では一便毎に増えていて、一体どうやって探し出せば良いものか考えてしまった事に有った。しかしまあ、他ならぬオヤジさんの頼みとあっては断るわけにはいかないので承諾した。それにそう云う事も一応仕事なのであった。
私が桟橋へ着いたのは、丁度ほぼ全員が下船した頃であった。
『良かった、間に合った』
と思ったのも束の間、どうやって見つけ出そうか困惑してしまった。何しろ判っているのは女性二名、代表者名は小浜、それだけなのである。一瞬、観光地など駅前で旗竿を持ち半纏を着て迎えに出ている旅館の人達を思い出した。私は女の娘方をキョロキョロと見ながら、
「小浜さん、小浜さんはいますか…?」
と大声を出した。最初は少々気恥ずかしかったのだけれども、二度三度声に出した時には何も気にしてはいなかった。全くの偶然ではあるが、気にしなくなった途端にその二人が直ぐに見つかった。私の方を見ている女の娘達がいたので、もしやと思って声を掛けてみた。
「あなた、小浜さん?」
「はい、そうです」
「ああ、良かった。見つかった。泉屋の者です」
この小浜さんと一緒のもう一人の方がショーコ(佐々木章子)であった。
やれやれ、これで済んだ…と思った時、そのすぐ後ろでモタついている三人の女の娘達が目に止まった。少々大柄な娘に普通でやや低めの娘、そして低めで細い娘。何となく面白い組み合わせだな…と思い、小浜さんに尋いてみた。
「あの娘達、一緒なの?」
「いいえ、船の中で一緒に…」
それで私はお節介にも尋いてみた。
「ねェ、何処に泊まるの?」
「何処って、別に決めてェへんけど…」
「ああ、そうなの。だったらどう、彼女達と一緒にうちの民宿に来ない?きっと気に入るから」
と言って連れて帰った三人組は二宮徳子、清美、そして女子プロ(レスリング)と呼んでいた少々大柄な森さんの一行であった。

泉屋に連れて戻って暫くの後、着いたお客さんには冷たい麦茶か冷珈琲をオバチャンが出してくれるのがパターンになっていて、私も一緒に冷珈琲を飲んで一服した。するとそこにオヤジさんがやって来て、
「サァ、皆さん、これから船を出して竹富の海を見に連れて行ってあげるから、早く仕度して水着に着替えなさい」
と言った。ここに来る迄の疲れがきっと何処かに飛んで行った事だろう。私は密かに、『着いた早々船に乗れるなんてツイてるなァ、この子達…』と思った。すると、そう思うのとほぼ同時に、
「ジュン、アンタ一緒に付いて来て、彼女等はみんな素人ばかりだから監督しなさい」
とオヤジさんに言われ、一緒に行く事になった。私はすぐに水着に着替え、庭に置いてある水中メガネと足ひれを持って、彼女達が来るのを待っていた。人の顔とは興しろいもので、一つの水中メガネがピッタリと合う顔(形)と、合わずに空気漏れする顔(形)とが有る。何も知らずに持って出て、水中で用を足さなくなる限りでは笑い話しで済むが、一歩間違えば一大事である。私は彼女達が出て来るとなるべく合う物を、選び方を教えながら選んであげた。
(つづく)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿