気の向くままに junne

不本意な時代の流れに迎合せず、
都合に合わせて阿らない生き方を善しとし
その様な人生を追及しています

(‘77) 6月27日 (月) #2 清美は特異体質(?)

2023年07月16日 | 日記・エッセイ・コラム
そして洋上。船の上からオヤジさんと共に彼女達を監視したり、海に入ったりを繰り返した。ショーコ達二人はまずまずであったけれど、どうにもいただけないのが大阪三人娘。その中でも取り分け言葉にならないのが清美であった。本人は潜る気が十分有るのであろうが、どうした理由か少しも潜らないのである。よく世間では躰が浮かずに緊張した躰で潜ったまま、または呼吸するタイミングのバランスが崩れ溺れる者はいるけれど、先ずその点で清美は絶対に大丈夫であろう。
オヤジさんの船が西の桟橋に戻ってから、その付近とコンドイ浜とで無理矢理特訓を始めた。先ず深さが胸ぐらいの処で、水面にうつ伏せになった身体の背中を腕で押し下げ、適当なカウントをとって手を離す。普通なら少しの間でも私の膝の辺りにいるものであるが、清美の場合、まるでピンポン玉の様に直ぐに浮いてきてしまうのである。正直なところ、私はそれを面白がって何度も繰り返した。もう最後の方では、腕で彼女を水中に押し込み、なんと、足で背中を踏みつける様に彼女を海の底迄押し下げていた。それでも結果は変らなかった。
結局、清美の特異体質(?)は水難事故防止の為のものであると云う仮説を設け、潜りの特訓は一時中断。砂浜で体力の回復を待ちながらの日光浴。この時彼女達の素性やら何やらを聞いたりした。三人共大阪の生まれ育ちで、共に天下の◎◯信販に勤めているという。この休憩時間に、三人が入れ代わり立ち代わり勝手に海の中に入って遊んでいた。気が付いてみると、
「もう水の中にいるのはいやや…」と言っていた徳子が、いつ迄もずっと一人で水と戯れていた。
「アレ〜、あの娘もようやるわ。あんなに嫌がっていたのに」
「ホンマやなぁ、いつの間にか一人で元気してやるなァ」
なんと仲間からも呆れられていた。最後にみんなで(結局は)水遊び(になってしまった)をして戻って来た。
みなさん、どーもお疲れ様でした。

さて、泉屋で私はショーコとオセロゲームを楽しんでいた。どうしてオセロをやり始めたのか覚えてはいない。この泉屋には他にゲームとしてトランプと将棋、そして囲碁が有るくらいだ。だから私がショーコとオセロをやっていたのも、多分その辺りの安易な発想からだろう。
「ここの夕陽って見た事あったっけ?」
「ううん、まだよ。どうして?」
「とても奇麗で、熱情的というか、物語り性を感じるから…、あっ、でも、その日に拠って違う表情をするから、何とも言えないんだけどね」
「ふ〜ん、見てみたいなァ。今日あたりはどうかなぁ?」
「それは判んないョォ」
「ねえ、行ってみない?」
私達は夕食の後、夕陽を見に行こうと決めた。その為他の誰より早々と夕食を済ませ、西の桟橋へと急いだ。今日の夕陽は珍しいくらいの素晴らしい光景であった。小さな小浜島とそのすぐ後ろの西表島をそっくり飲み込んで、水平線一杯に燃え上がる海の大火事の様な、壮大なる夕焼けであった。あれは私などがいくら言葉を並べても、決して表現し尽くせるものではない。私とショーコはその点で正に幸運であった。陽が完全に西表島の裏側へと隠れ辺りが次第に暗くなり、懐中電灯が欲しくなり始めた頃、私達はコンドイ浜へと渚沿いに歩いた。コンドイ浜で見上げた夜空は徐々に増え始めた星で満たされようとしていた。
(西表島と小浜島はこの写真の左側)





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