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マンションの地震保険

2006年12月17日 | マンション


■加入割合は全国平均で5世帯に1世帯

 首都直下でマグニチュード7級の地震が発生した場合、最悪で約1万3000人が死亡、建物の全壊や焼失は80万棟を超え、帰宅困難者は1都3県で650万人に達するおそれがある……政府の中央防災会議がまとめた首都直下地震による被害想定の内容だ。95年1月に発生した阪神・淡路大震災が死者約6500人、建物の全壊が10万棟だったのと比べると、その被害の大きさは尋常でないことが分かる。さらに、静岡県の駿河湾海底を震源域とするマグニチュード8級の大規模地震、いわゆる「東海地震」も決して遠くないとみられており、地震対策の必要性は「待ったなし」の局面を迎えている。

 こうした背景もあってか、地震保険の加入件数・世帯加入率とも右肩上がりで上昇している。損害保険料率算出機構の調べでは、全国平均で20.1%(2005年度末)、5世帯に1世帯が加入するまでになった。阪神・淡路大震災の翌年度(1995年度)に11.6%だったのと比較すると、10年間で2倍近くになった計算だ。危機意識の表れといえるだろう。

<地震保険の契約件数・世帯加入率の推移>
(出所)損害保険料率算出機構


■公共性が高い分、1人当たりの補償額は限定的

 ここから本題に入るが、まずは地震保険についておさらいしておきたい。地震保険とは居住用建物および家財を対象とし、地震・噴火、または、これらによる津波によって発生した火災・損壊・埋没・流失による損害を補償する地震災害専用の保険である。そして「地震保険に関する法律」という法律に基づき、損害保険会社と政府が共同で保険金支払いに備えているのが特徴だ。ひとたび大地震が発生したら、損保会社1社の資金力だけでは対応できなくなることを想定し、「再保険」という形で責任の一部を政府が引き受けている官民一体による保険である。しかし、公共性が高い分、制約(デメリット)も多い。

一度の地震における地震保険金の総支払額が5兆円までと決められているため、被害の程度によっては予定した保険金が受け取れない(削減される)可能性がある
マンションの規模が50世帯であろうと500世帯であろうと、1世帯当たりが受け取れる保険金は、管理組合が共用部分に付保する火災保険金額の共有持ち分割合の30%~50%の範囲内かつ最高5000万円までとなる
しかも上記の最高5000万円とは、管理組合を契約者とする共用部分を対象とした地震保険金と、区分所有者を契約者とする専有部分を対象とした地震保険金の合計額である
地震保険では損害の程度を「全損」「半損」「一部損」と3つに区分しており、全損と判定されれば契約金額の100%が支払われるが、半損では同50%、一部損では同5%しか支払われない

 主な点を挙げてみたが、築年数のかなり経過した物件を除き、マンションのような鉄筋コンクリート住宅が全損(主要構造部の損害額が時価の50%以上または焼失床面積が70%以上の損害)することは考えにくい。ということは、もし仮に判定が一部損だと契約金額の5%、つまり、最高でも建物に対しては250万円(5000万円×5%)しか支払われないことになる。これでは、物足りなさは否めないだろう。

■「危機意識」の程度が判断基準 損得勘定で割り切るな!

 地震保険は、自動車保険や医療保険のように「特定の被害者(契約者)」を想定した商品設計にはなっておらず、「被災者全員に広く浅く」という生活支援のための一時金的な色合いが強い。そのため、保険金の支払いに支障をきたさない範囲内での引き受けとするよう、保険金を火災保険契約の最高50%までに制限し、また、火災保険に付帯しないと契約できなくしている。同保険が国策的な危機管理の延長としての意味合いを含んでいる以上、仕方ないといえば仕方ない。

 しかし、火災保険に比べ掛け金は倍以上割高なのに、受け取り金額は半分以下とされる地震保険。いつ来るか分からない「万が一」のために貴重な管理費を充てるかどうかは、管理組合にとっては悩ましい問題だ。そこで個人的な意見ではあるが、打算的な発想は捨て、組合員の大多数が地震リスクを強く意識するようであれば加入するといいだろう。火災保険では、地震を原因とする火災による損害や、地震により延焼・拡大した損害は補償されない。「もしも…」がお金(保険料)で解決できるのであれば、それはそれで十分な価値があるだろう。「安心」はお金に代えられないからだ。

 そこで、加入の是非に悩む管理組合は「自己責任」「自助努力」の原則に立ち返り、最後は損得勘定ではなく“危機意識”の程度によって総合判断するのが無理のない方法といえそうだ。

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